火災保険で受け取った保険金に税金はかかる?控除の対象について解説
更新日:23.01.10
火災保険は、火災だけではなく水災やひょう災、風災などの被害に備えられる心強い味方です。
住居や家財を災害の被害から守るために必要な火災保険ですが、その保険料が年末調整で控除の対象になるのか否かについて知らない方もいるのではないでしょうか。また保険金を受け取ったときは、何らかの税金を支払う必要はあるのでしょうか。
日本では申告課税制度が採られており、納税者の責任においてきちんと納税することが求められます。その一方で、税制度は複雑な専門知識を要するため、悩んでしまうことも多いでしょう。
この記事では、火災保険や地震保険の保険料の税控除についてと、保険金の受け取りの際の税金について解説していきます。
火災保険の保険料は控除になる?
そもそも税控除とは
そもそも税制度における「控除」とは、簡単にいうと納税額を減らせる制度です。
所得税を算出するには収入金額から配偶者控除などの所得控除額を差し引いて所得税率をかけ、税額控除額を差し引きます。所得税を払い過ぎていた場合には年末に現金が手元に戻ってきますが、本来、控除は支払うべき税金を抑える制度です。
所得控除にはさまざまなものがあり、たとえば生命保険に加入していると、加入額に応じて最大12万円を控除してもらうことができます。
差し引いてもらえる所得控除の額が高ければ高いほど、支払う税金の額は安くなります。
火災保険の保険料は控除されない
現在、火災保険は年末調整の際に控除の対象にはなりません。賃貸マンション、分譲マンション、持ち家いずれのタイプであっても、火災保険料は控除されません。
以前は「損害保険料控除」という制度があり、1月1日から12月31日までに火災保険や傷害保険、医療保険などを支払った場合にその保険料に応じて控除を受けられました。
火災保険料を申告することによって税金対策の効果があるとされていましたが、平成19年の税制改正により廃止されました。ただし、平成18年12月31日までに締結した契約で「旧長期損害保険」に含まれる方は例外です。
旧長期損害保険とは?平成18年税制改正の経過処置
火災保険が控除から外れたのは平成18年度の税制改革によるものでした。しかし、火災保険料が控除の対象から外れてしまうと保険会社と個人との間に締結された契約の内容が変わってしまうことになります。
そこで、平成18年度の税制改革の経過処置として施行されたのが「旧長期損害保険」です。旧長期損害保険制度とは一定の条件を満たす保険契約者に限り、年末調整での控除に保険料を組み込むことができる制度です。
これにより火災保険は一般的に控除の対象外になりますが「旧長期損害保険」である場合は例外になります。また、損害保険料控除が廃止される以前に長期損害保険に加入した方に適用されるため、平成18年12月31日までに締結した契約に限ります。
また、契約の内容が満期返戻金などのあるもので、保険期間が10年以上の契約になるものが対象になります。平成19年1月1日以降に、損害金保険契約内容を変更した場合は、旧長期損害保険の対象から外れることになります。
地震保険は控除になる!
損害保険料控除制度は保険への加入率を高めるために設けられていましたが、保険が普及したため廃止されました。これに伴い、新設されたのが地震保険料控除制度です。
地震の多発する国内の状況を鑑みて、地震発生時の国民負担を軽減するために創設されました。 火災保険の加入率が約80%であるのに対して、地震保険の加入率が約30%にとどまっていたことも背景にあります。
地震保険料控除制度の対象となるのは、納税者および納税者の配偶者、その親族が所有している居住用家屋・生活用動産を対象とするもので、かつ、地震などによる損害を補てんするための契約です。
地震保険の控除金額
地震保険の保険料は控除になりますが、支払った分の保険料がそのまま控除額として反映されるわけではありません。地震保険料の控除金額は、支払っている保険料の金額に応じて決定されますが、算出方法は決まっています。
地震保険料の支払い金額が年間で5万円以下の場合、控除の金額は支払った分の金額と同額になります。5万円以上の金額を支払っている場合、控除金額は5万円になります。

旧長期損害保険の控除金額
旧長期損害保険料の場合はどうでしょうか。
保険料の支払金額が年間1万円以下の場合、控除の金額は支払った金額と同額になります。支払った金額が1万円以上、2万円以下の場合は「支払金額÷2+5千円」で控除金額が決定されます。例えば年間の保険料が2万円だった場合、控除金額は1万5千円になります。
火災保険とのセット加入の場合
火災保険と地震保険をまとめて支払っている場合は地震保険料部分だけ控除の対象となります。
地震保険とセットで申し込むことの多い火災保険ですから、地震保険だけ控除の対象となっていることに気づかずにいる人もいるかもしれません。火災保険と地震保険がセットになっている保険に加入している場合、控除の金額はどのように申請するとよいのでしょうか。
年末調整の際に、地震保険料として支払った額を提示すれば、既定の算出方法に基づき控除額が計算されます。1年間に支払う保険料が5万円以下である場合には支払金額の分だけ、5万円を超える場合には5万円控除してもらうことができます。
年末調整に必要な控除証明書は、9月~10月頃に送付されることが多いです。紛失すると困るものなので年末調整用の書類としてまとめて保管しておくと安心です。
平成18年12月31日までに契約した方で、地震保険料と旧長期損害保険料の両方を一つの契約で支払っている場合には、納税者の判断により、どちらか一方のみ控除してもらうことができます。
火災保険の保険金は非課税
万一、火災や地震が起きてしまったら、保険金を受け取ることができます。保険金は実際の損害を埋め合わせるためのものなので、通常、被害額を超えてお金を受け取ることはできません。
もし受け取った保険金から税金を支払わなければならないとすると、保険加入者は確実に損をすることになります。このため、火災保険によって支払われたお金は非課税であり、税金を納める必要はありません(所得税法9条1項17号)。
保険加入者の所有する家が火災や地震にあった場合だけでなく、保険加入者と生計を一にする親族の所有する家でも、通常、税金を支払う必要はありません。
また、居住用の建物だけでなく、事業用の建物でも同様です。ただし、火災や地震によって保険加入者が亡くなり、本来保険加入者が受け取るべきだった保険金を法定代理人が相続した場合には、別途相続税がかかるので、注意が必要です。
実際の損害額以上に火災保険金として支払われる金額が少なく、損害のすべてを補いきれなかった場合には、雑損控除を行うことで税金を還付してもらえます。この場合にはきちんと確定申告を行った方がお得です。
・当サイトは、各保険の概要についてご紹介したものです。取扱商品、各保険の名称や補償(保障)内容等は引受保険会社によって異なりますので、ご契約にあたっては、必ず各引受保険会社の「重要事項説明書」をよくご確認ください。ご不明な点等がある場合には、代理店までお問い合わせください。
・このご案内には保険商品内容のすべてが記載されているわけではありませんので、あくまで参考情報としてご利用ください。また、必ず各引受保険会社の「契約概要」やパンフレット等で保険商品全般についてご確認ください。
・お引受内容により保険料が異なる場合がありますので、実際に適用される保険料については代理店または引受保険会社にお問い合わせください。
この記事のまとめ
かつては所得税控除の対象となっていた火災保険は、平成19年以降、控除の対象から外されてしまいました。このため、火災保険の保険料を支払っても税金対策効果はありません。
これに対して、地震保険は、加入率を高めるために創設された地震保険料控除制度によって、平成19年以降も控除の対象となっています。支払額に応じて最大5万円の控除を受けることができ、税金対策効果も見込めます。火災保険、地震保険はいずれも万一の時に大いに役立ちます。これらの保険金は非課税となっており、火災や地震が発生したときには保険金を満額受け取ることができます。
将来の安心を買うためにも、住宅を購入した際にはこれらの保険への加入を検討してみましょう。