火災保険とは?補償の範囲と保険の仕組みについてわかりやすく解説
更新日:23.01.10
住宅を購入したり物件を借りたりする際に加入する方が多いのが「火災保険」です。
火災保険の内容や保険料などは、加入する保険の種類によっても変わるため、自分の住居や求める補償に合った火災保険を見極める必要があります。
この記事では、火災保険の概要はもちろん、住宅ローンを組む際に火災保険への加入が必要になる理由や、賃貸物件で火災保険に加入するメリット、水災の補償についても解説していきます。
火災保険とは?
火災保険とは
- 火災から一戸建てやマンションなどの「建物」と、建物内の家具などの「動産」を補償する保険
「建物」や「動産」のように補償の対象になるものを火災保険では「保険の対象」と呼びます。
火災保険は、「保険の対象」ごとに加入する仕組みになっているため、建物や動産それぞれに保険を付けることが必要です。
例えば、建物だけに火災保険をかけていた場合、被害を受けた建物内の家具などは補償を受けられません。建物内の家具などの補償を受けるためには、別途家財保険に加入する必要があります。
また、「火災保険」という名前が付いていますが、火災による損害でなくても補償が受けられることもあります。
例えば、火災が起きた際には鎮火のために放水されます。その隣の火災を鎮火するための水で自分が損害を受けるケースも考えられます。この場合も、火災保険に加入していれば補償の対象になるのです。
火災のほかに起こりうるトラブル
- 落雷や、台風などで建物に物がぶつかってしまい破損してしまった際などに適用される「風災」
- 洪水で床上浸水してしまった際の「水災」
- 空き巣に入られてしまった際の「盗難」
火災保険の中には、上記のような様々な災害保険と組み合わせて加入できるものもあります。建物や家財をトラブルから守るために、加入しておくと安心です。
住宅購入する際は火災保険に入るべき?
住宅は、人生の中でも大きな買い物の1つといえます。
火災によって建物や家財に被害が出てしまった場合、火災保険に加入していなければ住居を守るための補償を受けることはできません。
住みやすい住宅に長く、安全に暮らすためにも火災保険に加入することは必要です。
しかし、住居の購入を機に火災保険に入る方の中には、補償内容やプランを確認せずに、銀行やハウスメーカー、不動産会社などが勧める保険に加入してしまう方もいるようです。
火災保険はプランや契約の期間によって、金額が大幅に変わってきます。住宅購入費用を節約したいという方は、保険のプランについても慎重に考えることが重要といえるでしょう。
住宅ローン契約と同時に火災保険に加入するのはなぜ?
住宅ローンを組む際には、不動産会社や銀行に火災保険への加入を勧められます。火災保険への加入を勧められる理由は、銀行が「担保」を確保するためです。
火災保険は、災害によって受けた被害を補てんするために掛けるものですので、火災保険に加入することは、住居に住んでいる家族だけではなく銀行やローン会社にとっても有益といえます。
融資をする際、銀行は土地と建物を担保にします。万が一火災やその他災害の影響によって家がなくなってしまった場合は、担保までなくなってしまうことになります。
この場合、貸した分のお金を徴収することができなくなり、銀行や金融会社が損をしてしまいます。火災保険に加入していると、災害で家がなくなってしまった場合でも補償金を確保することができます。
銀行の勧める火災保険に入らなくてもよい
住宅ローンを組む際に、銀行や不動産会社に勧められた火災保険に加入する必要はありません。 所定の条件を満たす火災保険であれば、自分自身で火災保険を選んでも問題がないのです。
勧められるままだと余分な保険料を支払わなくてはいけないケースに発展する恐れもあるため、注意が必要です。
銀行や不動産が勧める保険はパッケージタイプの商品が多いです。火災保険だけではなく、地震保険や水災補償などが付いている商品もあり、補償の対象も幅広いといえます。
しかし、手厚い補償が受けられる分、保険料は高くなりやすいです。パッケージタイプの商品の中には、保険を掛ける住居に必要のない補償が組み込まれている場合もあります。
例えば、マンションの高層階に住居を購入した場合、水災による被害を受けるリスクは少ないといえます。火災保険から、必要のない補償を取り除くことによって、保険料はリーズナブルになります。
しかし、ここで注意したいのが「保険料と補償内容のバランスが取れているか」という点です。保険料を安くしたいがために、必要な補償を外し過ぎると、災害の被害に遭った際に十分な補償を受けることができなくなってしまいます。
住宅ローンが終わるまで火災保険には加入し続ける
住宅ローンとともに付けた火災保険の契約を途中で自由に解除することはできません。これには「質権設定」が影響しています。
質権とは
- 担保物権と呼ばれる権利の1つ
担保物権とは
- 「他人の物を支配することによって、自己の債権の回収を確実にするための権利」
お金を借りている人の債務が返済されるまでの間、物品や権利書にお金を貸している人が預かっておける権利があるのです。
結果、住宅ローンの借入金の担保として銀行や金融会社側が火災保険の保険金を請求できるようになります。これによって、金融機関などの住宅ローンを貸した側は、火災で家が全焼してしまった場合でも貸付金回収できるというメリットがあります。
また、ローンの返済が滞ってしまった際には、保険金がローンの返済費用として使用されることもあるようです。
質権設定によって、火災保険に関する契約に融資する側の会社が介在するため、個人の意思のみで火災保険を解除することはできなくなってしまうのです。
質権設定の契約の手順は、質権設定権利書に借り入れをする人と建物の持ち主が署名・捺印します。保険証券とともに保険会社に提出して契約は完了です。
現在の形態では火災保険に質権が設定されるケースは少なくなってきています。
賃貸でも火災保険が必要?
では、住宅購入ではなく、賃貸物件の場合はどうでしょうか。物件を借りる際に契約の条件として加入を提示されることもありますが、加入の必要はあるのでしょうか。
賃貸物件でも、自身の過失による破損などに備えて火災保険に入っておくと安心です。
賃貸物件で火災保険に入るメリットを見ていきましょう。
メリット1.原状回復にかかる費用の補償
賃貸物件の場合、契約期間が過ぎると部屋を持ち主に返さなくてはいけません。部屋を返す際には、借りる前と同様の状態に住居を整える必要があります。
例えば、壁に傷がついてしまったり、キッチンのタイル部分が破損してしまったりしている場合は、部屋を借りる前の状態に戻すために修繕を行う必要があるのです。
部屋を借りる前の状態に戻すことを「原状回復」と呼びます。部屋の窓がひび割れてしまっていたり壁が大きく破損してしまったりする場合などは、原状回復に多額の費用がかかってしまいます。
しかし火災保険に付帯する特約(借家人賠償責任・修理費用補償特約など)によっては、原状回復にかかる費用が補償される場合もあります。自然災害や事故によって破損した窓や壁等は、火災保険の補償対象に組み込まれていることが多いです。
ただし、火災保険の補償対象には経年劣化による破損などは含まれません。経年劣化と自然災害による破損は判別が難しく、補償の対象外にされてしまうケースも少なからずあるようです。
自然災害によって壁や窓などが破損してしまった際には、保険会社に被災状況をきちんと説明する必要があります。 自身の過失によって部屋の内装が破損してしまった場合などは、保険が適用されない場合もあるため注意しましょう。
メリット2.過失による破損などに備えられる
賃貸物件は、住んでいる人がいても部屋の所有権は大家さんにあります。
しかし、例えば水回りを使用することによって水道管が破裂してしまったり、自身の部屋から出火してしまったりした場合などは、住んでいる人の過失になります。
自身の過失によって部屋が使用できない状態になってしまったり、他の部屋に被害を与えてしまったりした場合は、賠償責任が発生します。
その際、補償対象となる商品に加入していない場合、賠償金は全て自分で支払わなくてはなりません。しかし、中には多額の賠償金を支払うことができない人もいます。
その場合、最も困ってしまうのは大家さんや被害に遭った住人です。万が一の時に、周囲の人に迷惑をかけないためにも、火災保険に加入することが必要なのです。
メリット3.自分の家財を守れる
火災保険は、建物に対してだけ付けるのではありません。建物内の家財も補償の対象に含まれます。 これは、住居が自然災害によって何らかの被害を受けた場合、部屋の中にある家財が破損してしまうケースもあるためです。
例えば、借りている部屋の隣から出火した場合、自身の部屋に火災の被害が及んでしまうこともあります。 家財に被害が及んでしまった場合にも、火災保険に加入していれば補償金を得ることができます。
しかし、全ての火災保険に家財に対する補償が含まれているわけではありません。 契約の内容によっては、建物のみに補償が付いているものもあります。火災保険に加入する際には、契約の内容について把握しておくのが重要といえるでしょう。
賃貸での火災保険補償金の相場
では、賃貸物件に入居している際に火災などのトラブルに遭った場合、補償金の額はどれくらいになるのでしょうか。
自身の過失によって火災が起こった場合の賠償金相場は約1,000万円から2,000万円程度といわれています。火災保険に加入していない場合は、この額を自腹で払う必要があるのです。
また周辺住居の火災によって、自身の家財が被害に合った場合、補償される金額は約300万円程度といわれています。
これらの補償を受けるために支払う火災保険料は、加入するプランによって差があります。 補償の幅が広かったり、補償金の額が大きくなったりする場合は、保険料も高額になります。
住む環境によって、契約すべき保険内容は異なります。余分な保険料を支払わないためにも、契約内容を把握しておくことは大切です。
一般的に、不動産会社で火災保険の契約をすると、保険料が高くなりやすい傾向にあるようです。
火災保険で水災はカバーできるか
火災保険には、火災のほかにも補償の対象となる災害があります。
例えば、水災補償を付けることによってカバーできる水災には、洪水や集中豪雨による土砂崩れ、台風による高潮などが挙げられます。
土砂崩れ被害が水災の補償対象に含まれていることを意外に思う方もいるでしょう。 火災保険の補償では、台風による強風被害は「風災」、台風で大雨が降り床上浸水したり洪水が起こったりした際などには「水災」の補償が適用されます。
なお、火災保険のプランや契約内容などは、保険会社によってそれぞれ違いがあります。火災保険の補償を自身で選択するプランでは水災の補償を除外して契約できる商品なども用意されています。
しかし、意図的に水災補償に対する契約を外さない限り、通常の火災保険では水災に対する補償が組み込まれているケースが多いようです。
ただし、長期的に火災保険の契約をしている方は注意が必要です。住宅火災保険や普通火災保険に長期契約をしている場合は、水災の補償が組み込まれていないプランである可能性も高いといえます。
水災補償が必要か迷ったら自治体のハザードマップを確認
火災保険に水災補償を付けるか迷った際には、住んでいる自治体のハザードマップを確認するとよいでしょう。
ハザードマップ
- 「被害予測地図」とも呼ばれている、災害による被害を予測するだけではなく、避難所や避難経路なども示された地図
ハザードマップは、その地域の土地の成り立ちや特性、災害の要因となり得る地形や地盤の特徴、過去の災害履歴などを元に作成されています。 水災に関するデータが残っている場合や、水災が起こりやすい地域に住んでいる場合は、火災保険に水災補償を付けておくとよいでしょう。
近くに海や川がなくても安心はできません。水災にはゲリラ豪雨に対する補償が組み込まれている場合もあります。 都心でもゲリラ豪雨が発生する近年ですから、水災保険への加入を検討する価値があります。
また、マンションの高層階に住んでいる場合などは「水災補償を付けるか否か」迷う方もいるようです。住んでいる階数が高い場合は、床上・床下浸水などの水害について心配する必要はないといえます。 しかし、マンションの場合は共用部分も自分の持ち物に含まれます。マンションの共用部分の保険契約がどのような形になっているかも確認しておくと安心です。
水災補償をつけたのに!水災ではない水害とは?
一見すると水災による被害のように見えても、水災補償が適用されない事例もあります。
水災補償が適用される条件
- 空から降ってくる雨が被害の原因となる場合と雨が降った結果川の氾濫や増水によって建物に被害が出た場合
水災補償が適用されないケース
- 地震による津波の被害を受けたケース
- 給排水設備の不具合によって水漏れが発生し建物が被害を受けたケース
地震によって津波が発生し建物が被害を受けた場合、適用されるのは地震保険になります。また、給排水設備の不具合によって水漏れが発生し建物が被害を受けた場合も、水災補償が適用されないケースがあります。
補償が適用されるのは「事故」とみなされたものに限られます。 例えば、凍結によって水道管が破裂した場合は、給排水設備の事故とみなされ、補償を受けられる場合が多いようです。
しかし、洗濯機に常設していないホースを設置しており、部屋が水浸しになってしまった時には補償が適用されません。 これは、ホースが常設のものではなく、排水設備と判断することができないためです。
事故の判断基準は、保険会社の規定によっても異なる点があります。保険会社や契約によって補償内容も変わってくるためあらかじめ確認しておくと安心です。
水濡れ補償として火災保険に組み込まれている場合もあります。 給排水設備に関する規定や、補償範囲は保険商品によって変わってくるため、加入前に確認しておくことが重要です。
まとめ
火災保険に加入する際には、住居にどのような補償が必要なのかをよく吟味しましょう。起こった災害に対する補償が付いていなくては意味がありませんが、あらゆる災害に対応する補償を付けようとすると保険料が高額になってしまいます。
また、万が一自身の過失によって事故を起こした際のことや、住んでいる地域に水災のおそれがあるかどうかを考えて補償内容を調べることも必要です。
・当サイトは、各保険の概要についてご紹介したものです。取扱商品、各保険の名称や補償(保障)内容等は引受保険会社によって異なりますので、ご契約にあたっては、必ず各引受保険会社の「重要事項説明書」をよくご確認ください。ご不明な点等がある場合には、代理店までお問い合わせください。
・このご案内には保険商品内容のすべてが記載されているわけではありませんので、あくまで参考情報としてご利用ください。また、必ず各引受保険会社の「契約概要」やパンフレット等で保険商品全般についてご確認ください。
・お引受内容により保険料が異なる場合がありますので、実際に適用される保険料については代理店または引受保険会社にお問い合わせください。