働けなくなったときの備え|所得補償保険の特徴・必要性
更新日:23.01.10
もしも、病気やケガの長期入院で働けず、収入がダウンしてしまったらどうなるでしょうか。
医療保険に入っていれば入院費はまかなえますが、家のローンや子どもの教育費、日々の生活費までカバーし切れるものではありません。
所得補償保険はそんな事態に備え、生活を支える保険です。その仕組み、医療保険との違い、病気やケガの際の社会保障制度なども併せて説明していきましょう。
目次
「働けなくなった」をサポートする所得補償保険
令和3年発表の総務省統計局「家計調査」によれば、2021年4月の勤労者世帯(2人以上の世帯)の1カ月の生活費は平均338,638円。さらに住宅ローンの返済なども考慮すると40万円を超える支出が毎月発生する世帯も多いでしょう。
つまり、生活費とローンで40万円を超えるお金が月々必要とも言えます。一家の大黒柱が病気やケガの長期治療で働けなくなったとしたら、大きな負担となるのは明らかです。
そうした万一に備えられるのが、「所得補償保険」です。「就業不能保険」という名の場合もあります。
ちなみに、名前がよく似た「収入保障保険」という保険がありますが、これは所得補償保険とはまったくの別物。所得補償保険は生きているうちにもらえますが、死亡すると給付金の支払いがストップします。
収入保障保険は亡くなった後に遺族の生活資金を保障するもので生命保険の一種です。亡くなるともらえますが、働けない状態には特約を付加しない限り対応しません。どちらも収入減のリスクに備える保険ですが、まったく目的が違うので間違えないようにしましょう。
所得補償保険は、病気やケガなどで長期間の入院や通院、在宅療養が必要となって働けなくなったときに、あらかじめ決めた保障額が一定期間支給され続ける保険です。
しかも、業務中のケガや病気だけでなく、日常生活におけるアクシデントも対象。保険の契約時に医師の診断書は必要なく、健康状態に関する簡単な質問に答えればよいだけなので手軽です。
さらに、この保険は一家の働き手だけでなく、専業主婦(夫)も補償の対象になっています。一般的に専業主婦(夫)は収入を得ていないのだから補償の対象にはならないと思われがちです。しかし、ケガや病気で倒れると家事や育児を代行してくれるヘルパーやベビーシッターを雇わなければならない場合が生じてくるため、その負担に対して補償をしようというわけです。
所得補償保険の主な特徴
所得補償保険の主な特徴は次のとおりです。
給付金が設定できる
保険会社によって違いがありますが、月額を設定できるものや「現在の収入の何%」と設定できるものがあります。毎月の保障額はだいたい10~50万円の間で受け取ることができ、年収の60%程度が補償されます。
一定のてん補期間がある
「65歳まで・最低支払保険期間2年」といったように、一定の保険期間があります。この間、就業不能状態となったら、保険期間が満了するまで月々給付金が支払われます。通常、年齢は60歳や65歳まで、最低支払保険期間は1~5年という設定のことが多いようです。
免責期間がある
60日や180日などの「免責期間」が設けられていて、働けない期間がこの日数を超えて長引かないと支払われません。
給付条件は規定がある
「働けない状態」の条件については規定があり、保険会社ごとに内容はまちまちです。
保険料は掛け捨て
基本的に掛け捨ての定期保険で、長期間加入するためには更新し続ける必要があり、更新のたびに保険料が上がります。途中解約での返戻金はありません。
様々なシーンに対応
保障されるのは仕事中のケガや病気だけではありません。日常生活や旅行中によるものでも保険の対象となります。
医療保険が保障するのは入院時だけ
「病気やケガになったときの保険なら医療保険が適しているのでは?」と思うかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
医療保険は、原則として「入院した場合」に保険金が支払われる仕組みになっています。つまり、入院しなければ給付金はゼロです(入院以外の治療を保障する特約を付加した場合を除きます)。
一方、所得補償保険は、「病気やケガで働けない状態」が続けば給付金が出ます。入院する・しないは関係ありません。また、医療保険の入院保険金は支払期間に比較的短期の限度日数が設定されていますが、所得補償保険は長期間支払われます。
長期の治療・入院となれば、収入減は必至でしょう。医療保険は入院時の補償には強いのですが、長引く通院治療や在宅療養には対応し切れません。ましてや病気による収入減は補償しません。医療保険でまかなえない生活費などのカバーに役立つのが、所得補償保険というわけです。
ただ、「働けない状態」ならどんな場合も補償が受けられるというわけではありません。多くの所得補償保険では次のような規定があります。
- 病気やケガの治療を目的として、日本国内の病院または診療所において入院している状態
- 病気やケガにより、医師の指示を受けて、自宅等で、軽い家事および必要最小限の外出を除き、治療に専念している状態
「医師の指示のもと」と書かれているように、在宅療養でも医師の診断が必要です。軽度の障害や、うつ病、統合失調症、社会不安障害などの精神障害、むちうちや腰痛など画像診断などで裏付けができないものは補償対象外になっていることが多いのです。
実は公的保険にもさまざまな保障がある
所得補償保険に加入する前に確認しておきたいのが、自分が働けなくなったときにどんな保障が受けられるのかということ。意外にさまざまな公的保障が利用できます。
高額療養費制度
月単位で医療費が一定の金額を超えた場合、超過分が還付されます。
傷病手当金
健康保険に加入している会社員のための休業補償制度で、病気やケガで4日以上欠勤した場合、4日目以降、最長1年6カ月、標準報酬日額の3分の2が支給されます。
休業補償給付・休業給付
労災保険の休業補償制度です。業務上の病気やケガ、あるいは通勤中のケガで仕事を休んで給料がもらえなかった場合、休業補償給付または休業給付、併せて休業特別支給金が支払われます。
障害年金
ケガや病気が治癒せず障害が残り、回復が見込めない場合に受け取れる可能性があります。厚生年金保険からは障害厚生年金が、国民年金からは障害基礎年金が支給されます。
ただ、公的保障はありがたいものですが難点もあります。傷病手当金は就業時と同額の収入が補償されるわけではありません。障害年金は審査に該当しないと対象になりません。
また、高額療養費制度によって医療費に上限があっても、治療が長期になれば支払いはかさみます。つまり、公的保障があるから万全とは言い切れないのです。
所得補償保険に入る価値はあるのか
生活費の担保が十分に確保できる方は所得補償保険に入る必要性は低いと言えます。では実際、どんな人にとってメリットが大きいのでしょうか。
最も必要性が高いのは、自営業(個人事業主)やフリーランスの方です。会社員と違い、個人事業主の方は傷病手当金などがなく、公的保障の恩恵が乏しいからです。
個人事業主やフリーランスの方は、病気やケガで働けなくなると一気に無収入になる恐れがあります。また、働けないことで事業が不振に陥るといったリスクも想定されますので加入を検討してみてもいいでしょう。
また、会社からの補償がなく貯蓄も十分にない会社員の方も加入するメリットがあるといえるでしょう。長期の就業不能によって貯蓄を切り崩したくない方も同様です。
加入のときは、保障内容をしっかりチェック
補償内容は保険会社によってばらつきがあり、特に「免責期間」「保険期間」「給付条件」に違いがあるので、加入の際には注意が必要です。
免責期間
「免責期間なし」もあれば「180日」もあります。免責期間中は保障が受けられないので、短期のほうが望ましいですが、短期のものは給付条件が厳しいこともあります。
てん補期間
てん補期間が1~2年と短いものが多いのですが、「長期間働けない状態」のリカバリーこそが所得補償保険のメリットなのですから、できるだけ長期保障の商品を選びたいもの。
給付条件
保険会社が規定する「働けない状態」がどういったものなのか、必ず確認しましょう。注目すべきは「精神疾患」の扱い。
長期間の入院・自宅療養の原因として、うつ病などの精神疾患が近年増加中です。多くの商品が精神疾患は対象外ですが、特約であっても「精神疾患」も対象の商品が安心です。
保険期間の限度や、対象外の病気などがあるため、所得補償保険は決して万能とはいえません。ただ加入していなければ、貯蓄を切り崩しながらしのぐことになります。
長期にわたって働けなくなったときに所得補償保険の必要性は高く、検討の余地は大いにありといえるでしょう。
短期補償タイプと長期補償タイプ
所得補償保険には大きくわけて短期補償と長期補償の2種類があります。どちらを選ぶかによって補償内容もかなり異なるため、よく理解しておくことが大切です。
まず、短期補償型は保険金の支払い期間は1年~2年程度と短めです。その代わり、ケガや病気で仕事ができなくなってから補償が行われるまでの免責期間が1週間程度となっており、比較的早期に保険金が受け取れます。
それに対して、長期補償型は働けなくなってからの補償期間が長く、60歳から65歳程度まで保険金が支払われ続けます。つまり、年金が受け取れる時期まで補償が続くというわけです。ただし免責期間は60日~365日と長く、仕事ができなくなっても1年間保険金が支払われない可能性があるのです。
さらに、保険金の支払い条件も短期補償型は「医師の治療を受けていて仕事に終日は従事することができない場合」と軽めであるのに対して、長期補償型は「いかなる業務にも全く従事できない場合」とより厳格になっているケースが多いようです。
この差は想定される保険金活用法の違いから生じています。短期補償型は長くても1年か2年後には仕事に復帰することを想定していますが、長期補償型は一生寝たきりになった場合も想定した保険です。それだけ補償も厚くなるので支払い条件も厳格にしなければならないというわけです。
・当サイトは、各保険の概要についてご紹介したものです。取扱商品、各保険の名称や補償(保障)内容等は引受保険会社によって異なりますので、ご契約にあたっては、必ず各引受保険会社の「重要事項説明書」をよくご確認ください。ご不明な点等がある場合には、代理店までお問い合わせください。
・このご案内には保険商品内容のすべてが記載されているわけではありませんので、あくまで参考情報としてご利用ください。また、必ず各引受保険会社の「契約概要」やパンフレット等で保険商品全般についてご確認ください。
・お引受内容により保険料が異なる場合がありますので、実際に適用される保険料については代理店または引受保険会社にお問い合わせください。