学資保険
学資保険を教育資金にするのはおすすめしないという意見があるのはなぜ?
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学資保険をおすすめしない4つの理由とは?代わりとなる商品も解説

学資保険とは、長期の積み立てによって子どもの教育資金を準備するための保険商品のことです。

親(契約者)に万が一のことがあった場合の備えとしても役立つため、妊娠・出産を機に加入する方が多い保険商品の1つです。

一方で、学資保険には様々なデメリットも存在することから、中には「学資保険はおすすめしない」という意見もあります

そこでこの記事では、学資保険のメリット・デメリットを解説するとともに、学資保険をおすすめする人・しない人の違いをまとめていきます。

学資保険を契約しない場合の代用商品も紹介しているので、「学資保険はおすすめしないって本当?」「学資保険を契約しない場合はどの保険を選ぶべき?」とお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

学資保険はおすすめしない?4つのデメリットを解説

「学資保険はおすすめしない」と言われる主な理由として、以下の4つのデメリットが挙げられます。

返戻率(利回り)が低い

「学資保険はおすすめしない」と言われる最大の理由が、“返戻率の低さ”にあります。

返戻率とは、保険料の支払額に対する受取額(学資金・満期保険金)の割合のことで、この返戻率が高いほど返ってくるお金が多いお得な学資保険となります。

かつては返戻率が120%程度の保険商品も少なくありませんでしたが、近年は低金利の影響によって水準が下がっており、一般的な返戻率の相場は102%~105%程度です。

例えば返戻率が105%の学資保険を契約して200万円を積み立てた場合、十数年かけても210万円にしかならないということです。

預貯金と比較すれば資産が増えるものの、数パーセントの違いなら学資保険は契約しないで他の資産運用方法を検討したいと考える方も多く、これが「学資保険はおすすめしない」と言われる理由に繋がっています。

途中解約による元本割れのリスク

「学資保険はおすすめしない」と言われる理由として、途中解約した場合に元本割れする可能性が高いという点も挙げられます。

学資保険は積み立てタイプの保険商品であるため、基本的に満期まで解約しないことが前提となっており、途中解約の場合は返戻率が100%を下回ってしまうケースがほとんどです。

そのため、途中で支払いが難しくなり解約しないといけないといった状況にならないよう、長期での支払いを踏まえたプラン選びを行うことが大切です。

また学資保険は途中で引き出すことができないため、急な出費に備えて別途預貯金を確保しておく必要もあると言えるでしょう。

インフレに弱い

学資保険は将来受け取れる金額が確定しているというメリットがある一方、インフレ(物価の上昇)のリスクに対応できないというデメリットも存在します。

学資保険の利率は景気の動向に関係なく一定であるため、インフレが起きた場合は相対的に保険金の価値が目減りしてしまうからです。

日本は長らくデフレの状況が続いていましたが、2022年以降はインフレの傾向となっており、2023年9月の総合インフレ率は3.0%に達しています。

もし、20年の間に物価が2倍まで上昇した場合、保険金の価値は実質的に半分となるため、満期保険金を受け取ったとしても必要な出費を賄えない可能性が出てくるのです。

こうした点も、「学資保険はおすすめしない」と言われる理由の1つとなっています。

参考
消費者物価指数(CPI) 総合指数(前年同月比) https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html

満期保険金に対する課税

学資保険を契約する際は、支払った保険料よりも受取額が大きくなる場合に課税の対象となる可能性があるという点にも注意が必要です。満期保険金の受取人が契約者と同一の場合は所得税異なる場合は贈与税として課税を受けます。

満期保険金が課税対象となるケースは以下の通りです。

  • 一時所得として所得税が課税されるケース
    契約者と満期保険金の受取人が同じであり、かつ「満期保険金額-払込保険料-50万円(特別控除)」の金額がプラスになる場合
  • 雑所得として所得税が課税されるケース
    契約者と満期保険金の受取人が同じであり、かつ「年間の年金額-その金額に対応する払込保険料」の金額がプラスになる場合
  • 贈与税として課税されるケース
    契約者と満期保険金の受取人が異なり、かつ「満期保険金額-110万円(基礎控除)」の金額がプラスになる場合

参考
満期保険金にかかる税金(所得税) https://www.hoholine.com/guide/choice/tax-maturityincome
生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1755.htm
満期保険金にかかる3パターンの税金と確定申告の必要性 https://www.kurashino-okane.com/life-insurance/mankihokenkin-pattern/

加入メリットはある?おすすめする人・しない人の違い

続いて、学資保険の加入メリットと、学資保険をおすすめする人・しない人の違いについて詳しく見ていきましょう。

学資保険のメリット

学資保険に加入する主なメリットとして、以下の4点が挙げられます。

  • 確実に教育資金を貯められる
  • 普通預金と比較して利回りが良い
  • 生命保険控除による節税効果が期待できる
  • 親(契約者)の万が一に備えられる

学資保険は毎月決まった保険料を払い続けるシステムのため、確実に教育資金を貯められる点がメリットです。

またあまり高い返戻率を望めないものの、普通預金の利息と比較すれば返戻金が大きいと言えるでしょう。

更に、学資保険は生命保険料控除の対象となっている点もポイントです。年末調整や確定申告の際に「生命保険料控除証明書」を提出すれば、所得税や住民税を軽減でき、節税対策に役立てることができます。

その他、親(契約者)が死亡・高度障害になった際は、以降の保険料の支払が免除される仕組みとなっているため、万が一の保障として備えられるといったメリットもあります。

学資保険をおすすめする人・しない人

学資保険のメリット・デメリットを踏まえたうえで、学資保険をおすすめするケースとしないケースの違いを詳しく見ていきましょう。

教育資金用の預金があるかどうか

学資保険は子どもの教育資金を準備することが目的の保険商品であるため、すでに教育資金を十分に用意できているという場合は加入しないままで問題ないと言えます。

十分な教育資金とは、幼稚園から高校卒業までにかかる平均的な教育資金(全て公立:550万円程度、全て私立:1,800万円程度)と、急な出費に対応できる予備資金(生活費3ヶ月~半年分程度)の合計と考えましょう。

一方、十分な資金を確保できていない場合や貯蓄が得意でないという場合は、学資保険によって半強制的に貯蓄を行うというのもおすすめです。

参考
文部科学省 平成30年度子供の学習費調査 https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf

途中解約する可能性があるかどうか

冒頭で解説したように、学資保険は途中でお金を引き出すことができないうえ、満期前に解約すると元本割れしてしまうというデメリットがあります。

そのため、支払いが10年以上の長期にわたること、また原則として途中解約しないことを念頭に置いて保険料を検討する必要があると言えるでしょう。

保険料を最後まで払えるか分からない、またお金を引き出すために途中解約する可能性があるといった場合は、学資保険は契約しないでおく方が安心です。

学資保険の返戻率を高めるための3つのポイント

メリット・デメリットを踏まえ、やはり学資保険を契約したいという場合は、以下の3つのポイントを押さえることで返戻率を高められる可能性があります。

加入タイミングは早い方がおすすめ

学資保険は他の保険商品と異なり、満期となるタイミングが決まっているため、なるべく早めに加入して月々の保険料を安く抑えるのがおすすめです。

また子どもの年齢が低いほど学資保険の返戻率は高くなる傾向にあり、中には出産前(出産予定日の140日前)から契約できる学資保険も存在します。

加入可能年齢の上限が決まっているものも多いため、可能な限り出産前の契約を検討するのがおすすめです。

保険金は満期時に一括で受け取る

学資保険の保険金を受け取る方法として、以下のようなパターンが挙げられます。

  • 保険期間の満了時にまとめて保険金を受け取る方法
  • 小学校、中学校、高校、大学とそれぞれの進学時に分割で受け取る方法
  • 大学進学時から4年間にわたり、毎年一定額の保険金を受け取る方法

学資保険の返戻率をなるべく高くしたい場合は、保険金の受け取り回数が少なくなるプランを選ぶのがおすすめです。最も返戻率が高くなるのは、保険期間の満了時に一括で保険金を受け取れる保険となります。

不要な特約・保障を付帯しない

学資保険には、医療保障や育英年金といった特約を付けられる商品が多く存在します。

“親(契約者)の万が一”に備えるうえでこれらの保障は魅力的と言えますが、特約をつけた場合は保険料の一部が保障に回されるため、保険金の返戻率が下がってしまうという点に注意が必要です。

特に注意したいのが、すでに生命保険や医療保険に加入しているケースです。生命保険や医療保険でリスク対策を行っているにもかかわらず、学資保険に保障を付けて加入してしまうと保障が重複することになります。

特約は保険料の負担増にも繋がるため、返戻率を重視するのであれば特約・保障は極力付帯しないことをおすすめします。

教育資金の準備に役立つ保険商品とは

教育資金の準備に利用できる保険は学資保険だけではありません。ここからは、学資保険を契約しない場合の代用として役立つおすすめの保険商品を2つ紹介していきます。

おすすめ①低解約返戻金型終身保険

低解約返戻金型終身保険の特徴

  • 保険料の払込み期間中は一般の終身保険よりも解約時の返戻率が低い
  • 保険料の払込み期間終了後に解約すれば、これまでに支払った保険料を上回る解約返戻金を受け取ることができる

学資保険の代わりとして加入する場合は、妊娠・出産時に「払込期間を18年~20年」として契約し、子どもの学校卒業・大学入学のタイミングで解約する方法がおすすめです。保険期間中は親(契約者)の保障も厚くなるため、万が一の際にも備えられます。

ただし、すでに終身保険に加入している場合は保障が重複してしまう点、また解約後には保障がなくなってしまう点に注意が必要です。

おすすめ②個人年金保険

大学進学時から4年間にわたり、毎年一定額の保険金を受け取るタイプの学資保険は、個人年金保険の仕組みに似ていると言えます。つまり、親の個人年金保険の年金受取期間を子どもの大学進学と合わせれば、学資保険を契約しない場合でも年金で同様の運用が可能になるということです。

また個人年金保険の場合、契約者が死亡した際はそれまで積み立てた保険料を死亡保険金として受け取れる仕組みになっています。個人年金保険は生命保険料控除の対象で、かつ一般生命保険とは別枠での控除となるため、個人年金保険に未加入の場合は税金対策の観点からも検討してみるのがおすすめです。

個人年金保険は以下のようなケースで役立ちます。

  • 子どもが学資保険に加入できる年齢を超えてしまっている
  • 親の万が一に備えた保障が十分にあり、死亡保障等を必要としない

保険選びで迷ったら……

学資保険の代わりとなる保険商品を紹介しましたが、最終的にどの保険を契約するべきか、自分自身では選びきれないという方も多いかもしれません。

調べてみたけど、違いがわからない」という場合は、保険代理店に相談して商品を選ぶという方法もおすすめです。

無料相談のみの利用も可能なため、実際に保険を契約する・しないは別として、ひとまず自分におすすめの保険を知りたいといった方も相談してみると良いでしょう。

保険代理店では、商品提案だけでなく家計の現状分析やお金に関する不安のクリアリング等も行っているので、教育資金の準備に向けて不安・悩みをお持ちの方はぜひ相談してみましょう。

記事まとめ

  • 学資保険は返戻率が低く、途中解約できないといったデメリットがあることから、契約をおすすめしないという意見も多い
  • 一方で、学資保険は税金対策や保障の面でメリットもあるため、自力で教育資金を貯蓄することが難しいといった方は契約を検討するのもおすすめ
  • 教育資金を準備するうえでは、低解約返戻金型終身保険や個人年金保険等の商品もおすすめ

返戻率の低さや元本割れのリスク等から、学資保険はおすすめしないという意見も少なからずありますが、一方で半強制的に資金を準備できるといった学資保険ならではのメリットも存在します。

学資保険に限らず、保険商品を検討する際はこうしたメリット・デメリットの両面を理解し、自分に合う商品・プランを選ぶことが大切です。

ABOUT ME
菱村真比古
菱村真比古
ファイナンシャルプランナー
10種の金融資格と中高の教員免許を持つ異色のファイナンシャルプランナー。NISA、住宅ローン、社会保障制度などが複雑に絡み合うライフプランを明快シンプルに紐解きます。中でも《菱村式老後資金計算法》は将来に不安を抱える子育て世代に好評。生命保険と金融サービス業界の最高水準として世界中で認知されている独立組織MDRTの正会員。『お金のエキスパート』として講演や営業マンの育成など幅広い領域で活動している。
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