学資保険で教育資金をしっかり確保|保険料の賢い払い方と税金対策のポイント
更新日:23.01.10
子どもの誕生は大きな喜びですが、同時に将来肩にかかってくる教育資金の心配も生まれます。
「学資保険がいいよ」と周りから勧められたものの、「仕組みがよくわからない」「いろいろ種類があり迷って決められない」といった声も少なくありません。
学資保険の基礎知識を知り、大切な子どものためにしっかり教育資金を用意してあげましょう。
目次
なぜ学資保険が必要なの?子どもの教育にかかる費用とは
「自分の親は学資保険で大学の授業料を出してくれた」という経験を持っている人は、教育資金の積み立てにはやはり真っ先に学資保険が頭に浮かぶようです。
でも、なぜ学資保険なのでしょうか。銀行や郵便局の預貯金ではだめなのでしょうか。
手段を考える前に、そもそも子どもの教育にはいくらかかり、どのくらい準備が必要なのか確認しておきましょう。
学校の授業料や塾代なども含めた 1 年間のおおよその学習費総額は以下となっています。
- 公立中学校:48 万円
- 私立中学校: 140 万円
- 公立高校: 48 万円
- 私立高校: 96 万円
(出典: 文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」)
また大学や専門学校への進学率は 58.6%(出典:文部科学省「令和2年度学校基本調査」)。学校によっても異なりますが、私立大学では 4 年間におよそ 500 万円を大学に払うことになります。
このように子どもひとりで年間 100 万円単位のお金が出ていく年があり、備えがなければ奨学金や教育ローンといった借金に頼らざるを得ません。2 人 3 人と兄弟姉妹がいる場合は、さらに周到な準備が必要です。
そのための備えとして預貯金で積み立てをしているとしましょう。けれども預貯金の場合、万が一、親が亡くなってしまったら、必要額には足りないかもしれません。その点、保険であれば保険金を受け取り、それを教育資金に充てることが可能です。
学資保険のメリットは、教育資金のための貯蓄と保障、両方の機能を備えているということ。そのため学資保険は多くの家庭で利用されています。
学資保険の仕組み・目的を理解して上手に活用しよう

学資保険は、教育資金の確保を目的とする保険商品です。15 歳や 18 歳、22 歳など必要となる時期に満期を設定し、満期金を教育費に充てることができます。
また、被保険者である子どもが亡くなったときは保険金が支払われます。商品によっては、小・中学校や高校の入学年齢で祝金が支払われたり、子どもの入院や手術に備えて医療保険を特約で付加することができたりします。
学資保険は積立として利用されることが多いのですが、早期に解約すると、払った掛け金の総額より受け取る解約返戻金(かいやくへんれいきん)の方が少ない場合があります。
そのため、満期まで無理なく継続できる掛け金で契約することが大切です。また、塾の夏期講習や海外研修など、まとまった支出に備えて、教育資金は預貯金と 2 本立てで準備しておくと安心です。
親が万が一のときも安心、契約を決める前に目的を再確認
学資保険には契約者が亡くなったとき、掛け金の払い込みが免除になったり、育英年金が支払われたりするタイプもあります。子どもが生まれたときは親の保険の見直しも必要です。
もし親の保障が不足していれば、保険金額の増額を検討するのが一般的です。その際、育英年金が支払われる学資保険などを選ぶのも選択肢のひとつです。
学資保険が貯蓄としてメリットがあるかどうかは、掛け金の支払い総額と、受け取る満期金・祝金の総額を比べて、どの程度払った掛け金が戻ってくるかで決まります。
育英年金や医療特約などを付加すると、満期金より掛け金の支払い総額が高くなり、保障が厚くなる代わりに貯蓄性は下がります。
貯蓄性のより高い学資保険を求めるのか、保障機能を期待するのか、契約の前に目的を確認してから学資保険を契約しましょう。
少しでも増やすなら意識しておきたいこと
ここまでは学資保険の基礎知識をお伝えしてきましたが、ここからは「少しでもお得にするならどうするか」というノウハウや税制について解説していきましょう。
学資保険はコツコツと毎月積み立てていくイメージがあるかもしれませんが、少しでも有利に増やしたい場合は、次のような方法があります。
- 育英年金や医療特約などは付加しない
- 掛け金の支払いを、月払いより年払いにする
- 満期より短い期間で掛け金を払い込む
- 口座引き落としではなく、クレジットカード払いでポイントを貯めながら払い込む
また学資保険ではなく、教育資金の準備に終身保険を利用する方法があります。
終身保険も貯蓄性のある保険で、親が被保険者となって契約すれば、万が一のときの保険金は子どもの教育資金に使えます。
また中途で解約すると一定の解約返戻金が受け取れるので、それを教育資金に充てることができます。払い込み掛け金総額に対する解約返戻金の戻り率を高めるには、次の方法があります。
- 掛け金を一時払いにしたり、払込期間を短くしたりする
- 一定期間、解約返戻金を低く設定した低解約返戻金型も検討する
ただし、どのぐらいの戻り率になるかは、商品や契約者の年齢、性別によって異なります。
学資保険の一括払いってどういうこと?
学資保険には半年払いや年払い、そして資金に余裕がある場合は一括で支払うことも可能です。一括払いには、以下の2つの方法があります。
- 一時払い 契約時に保険料を全額支払う方法
- 全期前納 年払いを選択したときに支払う金額を全額保険会社に支払う方法。その年度の保険料だけを徴収して、残りを預かり金とするのが特徴
一時払いと全期前納の大きな違いは、契約者である父母が途中で亡くなったり高度の障害を抱えたりしたときに顕著になります。

通常契約者が途中で死亡した場合などは、それ以降は払込免除となります。しかし、一時払いではすでに全額を支払っているため、払込免除特則が適用されません。
全期前納では年ごとに1年分の保険料を徴収し残りは預かり金としているため、例えば10年契約で7年目に契約者が亡くなった場合、残り3年分の預かり金が手元に戻ってきます。
学資保険を一括払いする魅力は?
一括払いは月払いに比べて「最終的に支払う合計金額が低くなる」のが最大の魅力といえるでしょう。
一括払いでも月払いでも、最終的に満期になったときに手に入れられる金額には大きな違いはありません。そのため、返戻率は一括払いの方が月払いや年払いなどよりも良く、最終的にはお得になります。
また、学資保険の一括払いをすると銀行に預けるのとは違い貯金を使ってしまう恐れがないのもメリットです。
一括払いの中でも一時払いの方が返戻率は高いので、保険会社が単に「一括払い」という言葉を使っている場合は、一時払いか全期前納かをはっきり確認することが重要です。
一括払いをする前に把握すべきリスク
学資保険の一括払いでは気をつけるべきリスクもあります。そのひとつが物価上昇、いわゆるインフレのリスクです。
学資保険は銀行の金利よりも良い状態が続いていますが、5年後10年後はどうなっているかはわかりません。社会がインフレ傾向に傾けば、学資保険の利回りは不利に感じる可能性もあるのです。
インフレになれば学資保険を一度解約して入り直せば良いと考える人もいることでしょう。しかし、学資保険の途中解約はよく考える必要があり、とりわけ加入して間もない段階での途中解約は元本割れを起こすリスクもあります。
学資保険の種類や契約条件にもよりますが、支払った金額の6割程度しか戻ってこないケースもあります。そのため、インフレになったとしてもおいそれとは解約できないことを覚えておきましょう。
どうしても途中で解約しなければならない場合、一括払いで支払ったときの金額と解約返戻金の関係性は、5年程度で解約返戻金の方が上回るケースもあります。
月払いでは、支払った金額に対して解約返戻金が上回るためにはもっと長い年数が必要となるため、その点においては一括払いの方にメリットがあるともいえます。
しかし一括払いでは、年末調整や確定申告の控除を「保険に加入したとき」の1度しか受けられないデメリットが発生します。1度に大金が出て行くことも一括払いのリスクなので、一括払いの決断をする前には熟考する必要があるでしょう。
一括払いでお得になる金額
学資保険でどのくらいお得になるかは、返戻率を見てみるとわかりやすいでしょう。返戻率の計算は、「保険金の受取総額÷保険料の支払総額×100」で割り出せます。
計算結果が100(%)以下であれば元本割れとなり損をします。例えば、「0歳の子どもが18歳になったときに200万円を受け取れる学資保険」に加入した場合でみてみましょう。
※以下の数字はあくまでも考え方を示すための例示であり、具体的な商品に関する説明ではないことを予めご了承下さい。
- 月払い 月額9,000円(18年間の支払総額194万4,000円) =返戻率102.88%
- 一括払い 一括での支払総額186万円 =返戻率107.52%
この例示に従えば、一括払いでは月払いよりも8万4,000円ほどお得になる計算です。これはあくまで一例なので、保険会社や保険商品によっては返戻率が上下していきます。
学資保険の一括払いは掛け金がお得である一方で、リスクやデメリットも少なからずあります。将来を見越した計画をきちんと立てて、学資保険の支払い方法を決めていきましょう。
学資保険は控除の対象
学資保険を考えるのであれば、税制についての知識も押さえておきましょう。
学資保険に入ると毎月保険料を支払うことになりますが、この支払保険料は所得控除の対象です。所得控除とは税制上で決められた項目について、ある一定額を所得から差し引き、所得税の軽減を図ることができる制度です。
医療費に対する医療費控除や健康保険料・年金保険料などに対する社会保険料控除などがあります。学資保険の支払保険料は所得控除の中の生命保険料控除に該当します。
税金対策の効果はどれくらいあるのか
それでは学資保険の支払保険料について、所得控除を申請した場合にどのくらいの税金対策になるのか見ていくことにします。
生命保険料控除は保険の種類によって、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つに分類されます。さらに平成23年12月31日以前に契約した保険を旧契約とし、平成24年1月1日以降に契約した保険を新契約とに分けています。
控除の対象となる保険料は1月1日から12月31日の間に支払った保険料です。
旧契約の保険では支払保険料が2万5,000円以下の場合、全額が控除対象に認められます。
支払保険料が2万5,000円を超えると、支払保険料の額によって異なる計算式が適用され、支払保険料が高くなればなるほど控除額も大きくなります。
年間の支払保険料が10万円を超えると一律5万円の所得控除です。
一方、新契約では、支払保険料が2万円以下では全額控除され、8万円を超えた場合に控除額上限の4万円が控除されます。
学資保険は一般生命保険料控除に分類されるため、例えば新契約の学資保険に加入し、年間の支払保険料が12万円だったとすると、支払保険料が年間8万円を超えているので所得控除額は4万円となります。
適用される所得税率を10%とした場合、4万円の10%、つまり4,000円が所得税を対策可能です。
学資保険の控除を申告する手段
学資保険の生命保険料控除は、その旨を申請しなければ控除されません。申請の手段は、年末調整による方法と確定申告による方法の2種類です。
サラリーマンなどの場合、毎月給与収入から所得税が源泉徴収の形で差し引かれています。会社では年末になると、源泉徴収額と実際の所得税を清算する年末調整を行います。その作業の過程で生命保険料控除の届出を一緒に行うことが可能です。
一方、自営業の方などは2月16日から3月15日までの間に、1年間の所得について確定申告を行う必要があります。確定申告の際に他の控除と一緒に生命保険料控除を申請します。
年末調整でも確定申告でも、生命保険料控除の申請には、保険会社から年末頃に自宅に届く生命保険料控除証明書が必要です。年末調整で学資保険の保険料控除をし忘れた場合であっても、税務署等で申請することができるので慌てる必要はありません。
控除申請の前に注意すべきこと
学資保険の生命保険料控除を申請する前に、いくつか確認したり注意したりするべき点があります。1つ目は保険会社から届く生命保険料控除証明書の紛失に注意することです。
控除証明書の中には、控除の対象となる支払保険料の金額などが記載されています。記載されている金額をもとに生命保険料控除を申告するので失くさないようにしましょう。
2つ目は控除証明書に記載されている保険が旧契約か新契約かを確かめることです。どちらの契約になっているかで所得控除額の計算方法が異なりますし、上限額も違います。正確な所得控除を受けるために確認しておきましょう。
3つ目は年末調整で申告した場合でも、源泉徴収票を確認し、正確に生命保険料控除が行われているかチェックしましょう。支払保険料をもとに自分で控除額を計算してみれば確認することができます。
間違っていた場合などは税務署に相談し対処方法を聞きましょう。最後に、確定申告で申請する場合、確定申告期間に申請が間に合うよう準備をしておくことです。
申告をする前に手元に控除証明書があるか、申告書に正確な所得控除額や支払保険料額が記載されているかなど、確認することをおすすめします。
受取人次第では贈与税がかかる
税制関連で注意したいポイントとしては、「保険金の受取人の指定」も挙げられます。通常、学資保険の保険料を支払うのは親ですが、満期になったときに保険金を誰が受け取るかで税金が変わってくるからです。
保険金の受取人が保険料を支払った親自身であれば、保険金は税制上「一時所得」という扱いになります。「一時所得」には50万円の特別控除があるので、受け取った保険金額から必要経費を差し引いた残額が50万円以下なら税金は発生しません。
この場合必要経費にあたるのは「支払った保険料」であり、一般的な学資保険の加入金額であれば「受け取ったお金-支払ったお金」の差額が50万円以上になることは少ないと考えて良いでしょう。したがって「親が受取人になっていれば、一時所得による税金がかかってくることは少ないか、あってもごくわずか」と考えます。
ところが保険金の受取人が子どもになっていると話は変わってきます。子どもは自分で保険料を支払っていないので、満期で受け取るお金は「贈与」という扱いになり、贈与税の対象になります。
贈与税には年間110万円までの基礎控除があります。「受け取ったお金-110万」の残額がいくらなのかによって、贈与税の税率と控除額が違います。
例えば500万円の満期保険金を子どもが受け取った場合、500万円-基礎控除110万円=390万円が課税対象です。390万円の税率は20%で控除額が25万円なので、390万円×20%-25万円=53万円の贈与税がかかるのです。
53万円はけっして安い額とはいえませんので、学資保険の受取人は子供ではなく親にしておくのが無難といえるでしょう。
一時所得としての税金がかかる
上で解説したとおり、親を保険金の受取人にすれば通常は税金がかかりませんが、かけている保険金の額や返戻率の高さによっては所得税がかかってくることも皆無ではありません。
「支払ったお金」よりも「受け取れるお金」が50万円より多いという場合には、一時所得の控除額50万円をオーバーしてしまうため所得税が発生します。
このようなケースでは保険金の額を抑えるか、支払者を複数人にして複数の保険をかけるなどの方法をとる必要があるでしょう。
ただし保険金に関わる税金では、「契約者が誰なのか」ではなく「保険料を実際に負担したのが誰なのか」が問われます。
例えば2つの学資保険を夫婦それぞれが契約者かつ受取人となって契約する場合を考えてみましょう。
夫婦ともに収入がある場合は、それぞれが一時所得の控除を使えるので問題ありませんが、妻が専業主婦で収入がない場合、保険料は夫が支払っていることになります。妻は保険料を負担していないので、保険金を妻が受け取ると「一時所得」ではなく「贈与」として扱われる可能性があることにも注意しましょう。
税金を考えた学資保険への加入方法
近年は学資保険に年金タイプの商品が出てきて、高い関心を集めています。
学資保険の満期金の支払方法は商品によってさまざまなタイプがあります。大学進学に合わせて17歳にまとめて受け取れる商品や、子どものライフイベントに合わせて11歳、14歳、17歳といったタイミングで受け取れる商品などが一般的です。
一方年金タイプの学資保険とは、大学入学時とそれに続く数年間に毎年お金を受け取れるようにした商品です。普通の学資保険に比べてやや返戻率が高い傾向があり、人気があります。
ところが税金面で考えると、年金タイプの学資保険には注意すべきポイントがあります。それは年金タイプの学資保険の保険金が「一時所得」ではなく「雑所得」扱いになることです。
雑所得は収入から必要経費を引いて算出しますが、一時所得のような特別控除がありません。サラリーマンならば雑所得20万円以下は非課税であり、サラリーマンの妻には38万円までの配偶者控除がありますが、問題は自営業の場合です。
仮に360万円を払い込む総額400万円の学資保険に加入していて、大学入学時に100万円の保険金を受け取ったとすると、100万円-100万円×(360万円÷400万円)=10万円がそのまま課税対象所得になります。
所得税率は所得総額によって違い、一般的な10%の場合なら1万円の所得税が発生。住民税は一律10%で固定なので1万円となり、合わせて2万円の税金がかかってくることになります。
そのため自営業の場合には保険金の受け取りは年金方式ではなく、一括受取りにしたほうが良いケースがあることも考慮しておきましょう。
このように学資保険と税金の関係について理解していないと、思いがけないコストが発生してとまどうことにもなりかねません。学資保険を利用するときには、返戻率だけではなく税金のことも考慮して選びましょう。
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