生命保険の死亡保障はいくら必要?決め方のポイントを解説
更新日:23.01.10

「万が一の場合、家族にお金の面で負担をかけたくない」
「自分に万が一のことがあったら、その後の家族の生活が心配…」
このような不安がある方は、「生命保険」で万が一に備えるのも有効な選択肢といえます。被保険者(保険の対象になる人)が亡くなった際に「死亡保険金」が支払われる生命保険なら、残された家族の生活費や子どもの養育費・教育費などを確保することができます。
加入する目的に合わせて生命保険のタイプを使い分ければ、月々の保険料額を抑えながら必要な保障を得ることも可能です。
この記事では、生命保険への加入を検討されている方向けに「どんな場合に加入しておいた方が良いのか」「死亡保険金や保険料の目安」を紹介します。
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目次
生命保険はどんな場合に必要?
生命保険(死亡保険)とは、保障の対象となる被保険人が亡くなった際に、あらかじめ指定しておいた保険金受取人に対して死亡保険金(死亡保障)が支払われる保険のことです。
死亡保険(生命保険)とは、被保険者が死亡したときに保険金が支払われる保険のことをいいます。
お給料のように毎月年金を受取れる保険や、持病のある方も入りやすい保険も取り揃えています。
引用:オリックス生命保険|死亡保険(生命保険)
例えば
一家の収入の柱となっている夫または妻を被保険人、その配偶者を保険金受取人にして生命保険に加入した場合を例に考えてみましょう。
一家の収入の柱を担う夫または妻に万が一のことがあった際でも死亡保険金が支払われ、家族の生活費や子どもの養育費・教育費、葬儀費用などを生前から準備できるのです。
万が一の際に備えられる生命保険には、大きく分けて「定期保険」と「終身保険」の2種類があります。続いてはそれぞれの特徴や違いをみてみましょう。
定期保険:死亡保障が一定の期間確保できる
定期保険とは、一定の保険期間(保障期間)のみ死亡保障を確保できる生命保険のことです。保険期間は10年・20年といった年数か、または被保険者の年齢によって定められます。
保険料は契約時の年齢によって変わり、定期保険に加入する年齢が若いほど安く、高齢になるほど高くなる傾向にあります。同額の死亡保障の終身保険と比較して、保険料の負担が小さくなるケースが多いです。
ただし、一般的に定期保険の保険料は「掛け捨て」となります。保険期間の終了時の満期保険金や、解約時に受け取れる解約返戻金はないか、あってもごく少額です。
そのため、定期保険は以下のようなニーズをお持ちの方に向いていると言えるでしょう。
- 保険には加入したいけれどできるだけ出費を抑えたい
- 子どもが独立するまでの間だけ保障を手厚くしたい
定期保険契約時の注意点
定期保険に契約するうえで注意しておきたい点は「保険期間終了後にも死亡保障を継続できる」です。保険商品によっては、定められている上限の年齢に達すると、保険契約が更新できなくなることがあるため、不安な方は事前に確認しておきましょう。
また、定期保険が満期を迎えて保険契約が更新される際に、保険料は高くなるのが一般的のため、更新のタイミングで保険料は上がりやすい点もデメリットと言えるかもしれません。
終身保険:死亡保障が一生涯続く
終身保険とは、一生涯死亡保障が続く生命保険のことです。終身保険の加入者が何歳で亡くなったとしても、死亡保険金が支払われます。
終身保険の保険料の払い込み方法には、保険契約が続く限り払い続ける「終身払い」と、期間を決めてそれまでにすべての保険料を払う「有期払い」などがあります。
保険料は、終身保険の加入時から一定の額となります。定期保険と比較して保険料は割高ですが、終身保険は貯蓄性があり、解約時には「解約返戻金」を受け取ることが可能です。そのため、高額な死亡保障が必要なくなった時点で解約し、解約返戻金を老後資金として活用する想定で使うこともできるでしょう。
保険料の支払いを抑えながら一生涯の死亡保障を得たい場合には、「低解約返戻金型終身保険」を選択する方法もあります。低解約返戻金終身保険は、読んで字のごとく「解約返戻金の払い戻す金額が低い」終身保険です。貯蓄性は低くなりますが、その分保険料を抑えられます。
終身保険は以下の方に向いていると言えるでしょう。
- 生命保険を利用しながら、老後資金の貯蓄もしたい
- 一定の保険料で一生涯の万が一に備えたい
生命保険の死亡保障はいくら必要?世帯別の平均必要保障額と保険の加入率
生命保険協会による「2020年版 生命保険の動向」の「2019年度末個人保険の都道府県別保有契約状況」を見ると、1世帯あたりの平均保険金額は1446.3万円となっています。
目安となる保険金額は貯蓄やどのような生活を送るか、によって変わってきます。例えば、以下のような支出項目と収入項目から、老後どのような生活を送るのか、いくら必要かになるか、を逆算して必要な保障額を考えることが一般的です。
<遺族の支出例>
- 生活費
- 子どもの教育費
- 住宅費
- 車などのローン
- 葬儀費用
<遺族の収入例>
- 貯蓄
- 配偶者の収入
- 公的年金(遺族年金など)
- 会社からの保障(死亡退職金など)
生命保険の加入率はどのくらい?
生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査」によれば、生命保険の加入率は全体で見ると82.1%です。生命保険の加入率を性別・年代別に見ると、男女ともに20歳代が最も低く、40歳代が最も高くなっていることがわかります。
出典:「令和元年度 生活保障に関する調査」(生命保険文化センター)をもとに作成
生命保険は、死亡時に保険金が支払われる保険です。被保険者が死亡した後、生活に困る配偶者や子どもがいない方が他の年代と比較すると多く、死亡保障へのニーズが少ないと考えられます。
30~40歳代になると結婚して子どもを持つ方が増えるため、「自分に万が一のことがあっても家族が安心して生活できるように」ということで、生命保険に加入する人が多くなるものと考えられます。
死亡保険金(=必要保障額)を設定する際のチェックポイント
死亡保険金額は、「万が一の際に必要な保障額はいくらなのか?」から逆算して決めるとよいでしょう。遺された家族に必要なお金から、自身が亡くなった後に入ってくるお金を差し引くと、必要な保障額が見えてきます。
<遺族の支出例>
- 生活費
- 子どもの教育費
- 住宅費
- 車などのローン
- 葬儀費用
<遺族の収入例>
- 貯蓄
- 配偶者の収入
- 公的年金(遺族年金など)
- 会社からの保障(死亡退職金など)
遺族の支出の目安
まずは遺された家族の支出の目安について見ていきましょう。
葬儀費用の目安
鎌倉新書「第4回 お葬式に関する全国調査」によると、葬儀にかかる費用は平均で約184万円とのことでした。また、お墓の購入費用は全国平均で157万円(全国優良石材店の会「2020年版 全優石お墓購入者アンケート調査結果」)です。
葬儀やお墓にかかる費用として、350万~400万円を目安として備えておくとよいでしょう。
配偶者・子どもの生活費
配偶者が専業主婦(主夫)だった場合、仕事を見つけて生活を立て直すまでにある程度の期間を要します。それまで生活費に困ることがないよう、「自分の年収×3~5年分」を目安として保障額を考えるとよいでしょう。たとえば年収が500万円だった場合、1500万円の死亡保障をつけておくと安心です。
子どもの教育費
幼稚園から大学卒業までにかかる教育費は、すべて国公立でも約1000万円、すべて私立に通わせると約2000万円以上にも上るといわれています。通学のための交通費や子どもの一人暮らしの費用などを合わせると、さらに大きな金額がかかります。
養育費・教育費に多額の資金を要するため、子どもが独立するまでは手厚い死亡保障をつけておくのが一般的です。
葬儀費用のように年齢や期間に関係なく常に必要となるものは、一生涯死亡保障が続く終身保険で、当面の生活費や教育費など、大きな死亡保障が必要な場合は定期保険で備えておくのもひとつの方法です。
では上記を踏まえて、これからケース別で保障額の具体例を紹介します(なお、以下の例では被保険者を「35歳・男性(夫)」としています)。
死亡保険金額と保険料の目安はいくら?
ここでは、以下のケース別に死亡保障金額がいくらくらい必要となるか、シミュレーションをします。参考にしてみてください。
- 夫婦二人の場合(共働き)
- 夫婦二人の場合(夫のみ仕事)
- 夫婦二人と子どもの場合(共働き)
- 夫婦二人と子どもの場合(夫のみ仕事)
夫婦二人の場合(共働き)
子どもはおらず、夫婦二人共働きをしている場合、万が一の際に必要な死亡保障は主に「パートナーの葬儀費用」です。
仮に一家の収入の柱である夫に万が一のことが起きても、妻の収入で生活を成り立たせられるのであれば、大きな死亡保障が必要なケースは少ないでしょう。
<保障額を設定する際のポイント>
何に備えたいのか | 葬儀・お墓にかかる費用 |
---|---|
必要な保障額の目安 | 葬儀・お墓にかかる費用:400万円 |
適する保険の種類 | 終身保険 |
月々の保険料の目安 | 約6000円 |
共働きで生活費>収入となる場合は?
共働きでも配偶者の収入が少ない場合は、生活費を賄うのに不足する分を準備しておく必要があります。
例えば
生活費が月25万円で配偶者の収入が月20万円とすると、年間60万円(=(25万円-20万円)×12カ月)の不足が発生します。配偶者が昇給や転職などで賄えるようになるまでを仮に5年と考えると、生活費として備えておくべき金額の目安は300万円(=60万円×5年分)です。
なお、配偶者が公的年金の加入者の場合、要件を満たせば遺族年金(遺族基礎年金、遺族厚生年金など)を受け取れます。遺族年金の受け取りを前提として計算してみると、死亡保障額を下げて保険料を抑えることができます。
夫婦二人の場合(夫のみ仕事)
子どもはおらず、夫のみ働き妻は専業主婦の場合、万が一の際に必要な死亡保障は「夫の葬儀費用」と「妻の生活費」です。妻が働けるようになり生活を立て直すまでの期間を考慮して、お金の面で困らないように備えておきましょう。
<保障額を設定する際のポイント>
何に備えたいのか | 葬儀・お墓にかかる費用、妻の生活費 |
---|---|
必要な保障額の目安 | 葬儀・お墓にかかる費用:400万円 妻の生活費:1500万円 |
適する保険の種類 | 終身保険:400万円 定期保険:1500万円 |
月々の保険料の目安 | 終身保険:約6000円 定期保険:約2000円 計:約8000円 |
夫婦二人と子どもの場合(共働き)
共働きの夫婦と子どもの場合、必要な死亡保障は主に「夫の葬儀費用」と「子どもの教育費」です。
仮に夫婦二人で支えてきた家事・育児を妻一人で担うとなると、勤務時間を短くしなければならず収入が減ったり、ベビーシッターなどを利用して支出が増えたりして生活費がまかなえなくなる、といったケースも考えられます。
パートナーに万が一のことがあった後には、上記のようにどういった支出が発生するのかを考え、不足する分を備えるようにしましょう。
教育費については、子どもが一定の年齢になったときに祝い金や満期金を受け取れる「学資保険」を活用することもできます。学資保険には「貯蓄」としての機能だけでなく、親や子どもの医療・死亡保障がついたタイプのものもあります。
<保障額を設定する際のポイント>
何に備えたいのか | 葬儀・お墓にかかる費用、子どもの教育費など |
---|---|
必要な保障額の目安 | 葬儀・お墓にかかる費用:400万円 子どもの教育費など:1500万円 |
適する保険の種類 | 終身保険:400万円 定期保険:1500万円 |
月々の保険料の目安 | 終身保険:約6000円 定期保険:約2000円 計:約8000円 |
夫婦二人と子どもの場合(夫のみ仕事)
妻は専業主婦で子どもがいる場合、必要な死亡保障は「夫の葬儀費用」「妻・子どもの生活費」「子どもの教育費」です。
一家の大黒柱である夫が亡くなると、家族の生活費や子どもの教育費のすべてを妻一人で賄う必要があります。専業主婦から就職して生計を立てるまでには、時間を要することが多いものです。
遺された家族が生活に困らないよう、また子どもの進路における選択肢を狭めないよう、手厚い死亡保障を備えておくのがよいでしょう。
<保障額を設定する際のポイント>
何に備えたいのか | 葬儀・お墓にかかる費用、妻と子どもの生活費、子どもの教育費 |
---|---|
必要な保障額の目安 | 葬儀・お墓にかかる費用:400万円 妻と子どもの生活費:1500万円 教育費:1500万円 |
適する保険の種類 | 終身保険:400万円 定期保険:3000万円 |
月々の保険料の目安 | 終身保険:約6000円 定期保険:約4000円 計:約1万円 |
■いずれのケースにおいても医療保険に加入して医療保障の確保を
また、上記のいずれのケースにおいても病気やケガによる入院・手術・通院のリスクも考えられます。
定期保険や終身保険で死亡保障に備えておくだけでなく、医療保険にも加入して、医療保障を確保しておくことも検討しましょう。
医療保険には医療保障額がいくら必要?
死亡時だけでなく、病気やケガによるリスクにも備えたい方は、医療保険への加入を検討しましょう。
生命保険文化センターの「令和元年度 生活保障に関する調査」にて実施されたアンケートでは、「1日につきいくらくらいの入院給付金が必要と考えているか」という質問への回答を見てみると、平均で「1万1000円」という結果になりました。
<疾病入院給付金日額の必要(希望する)額>
男性 | 女性 | 全体 | |
---|---|---|---|
2019年(令和元年) | 1万2400円 | 1万円 | 1万1000円 |
2016年(平成28年) | 1万1700円 | 1万300円 | 1万900円 |
2013年(平成25年) | 1万1700円 | 1万500円 | 1万1000円 |
2010年(平成22年) | 1万2300円 | 1万600円 | 1万1400円 |
出典:「令和元年度 生活保障に関する調査」(生命保険文化センター)」をもとに作成
同調査によると、入院にかかる医療費の自己負担額の平均は、1日2万3300円であることがわかりました。
医療費の自己負担額は、治療内容などによって高額になることがあります。自身の収入や貯蓄の状況からどこまで自己負担できるかを考え、必要な医療保障額を検討するとよいでしょう。
■医療費の自己負担を軽減できる「高額療養費制度」とは?
医療費が高額になった場合、負担を軽減できる公的医療保険制度「高額療養費制度」を利用できるケースがあります。保障額を検討する際には、高額療養費制度の利用も加味するとよいでしょう。高額療養費制度の適用区分・上限額は年齢や所得によって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
高額療養費制度を利用される皆さまへ|厚生労働省
死亡保険金(=必要保障額)を見直すタイミング
ライフスタイルが変われば予想されるリスクも変化します。生命保険の契約内容は、ライフイベント・ライフステージに合わせて、次のようなタイミングで見直すとよいでしょう。
結婚
結婚して家族が増えたら、自分だけでなくパートナーも考えた保障内容に設定しましょう。パートナーとお互いに加入している保険の内容を確認し、必要があれば保険や保険内容を変更するとよいでしょう。
それと同時に、保険金の受取人や、被保険者に代わって保険金を請求できる「指定代理請求人」を変更しておくことも大切です。
住宅購入
住宅ローンを利用するときには、ほとんどの場合「団体信用生命保険(団信)」に加入します。団信は、住宅ローン利用者に万一のことがあった際、生命保険会社から住宅ローンの残高に相当する保険金が支払われる保険のことです。
住宅関連費用も含めて死亡保険金額を算出していた場合、万一の際には団信によって住宅費がかからなくなることを見越して保障を見直すと保険料を抑えられることがあります。
妊娠、出産
万が一の際の子どもの養育費・教育費に備えて、死亡保険金額を厚くすることを検討しましょう。
女性は妊娠前後に加入している医療保険を確認してください。帝王切開や切迫早産などの際、保険金が支払われる保険もあります。
子どもの独立後
子どもが独立して養育費・教育費が必要なくなったら、死亡保険の保障金額を減らしてもよいでしょう。
収入や貯蓄額、毎月支払う保険料のバランスを見ながら、老後の生活費だと個人年金保険、医療費なら医療保険で備える方法があります。
この記事のまとめ
死亡保険金の必要額は各家庭の状況によって異なります。自分の家族にはいくら必要なのかをしっかりと把握し、月々の保険料とのバランスを見ながら保障額を検討しましょう。
自分が亡くなった後でも家族の人生を支えられるように、ライフステージに合わせて必要な保険・保障額を見直し、その時々に必要な保険・保障を用意するとよいでしょう。
- 「定期保険」に加入することで、安い保険料でで大きな死亡保障を受けられる
- 生命保険を利用して「貯蓄」もしたい方や、一生涯の死亡保障を確保したい方は「終身保険」への加入も検討の余地あり
- 遺された家族の保障額は「葬儀費」「家族の生活費」「子どもの養育費教育費」を目安に算出する
- 結婚や住宅購入、子どもの独立などのタイミングで保険を見直すべき
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