職業訓練受講給付金がもらえる資格・条件は?審査は厳しいのか調査
更新日:2023.04.13

職業訓練受講給付金とは、雇用保険(失業保険)の失業手当を受給できない人が職業訓練を受けている間にもらえるお金です。
国(厚生労働省)が実施している求職者支援制度の一環であり、職業訓練受講給付金を受給するには一定の資格・条件を満たすことが必要です。
職業訓練受講給付金の対象となる職業訓練のコースは、事務の仕事から医療・介護までと多岐に渡っています。
この記事では、職業訓練受講給付金を受けるための資格や条件、審査の難易度、申請方法や注意点などについて詳しく解説していきます。
職業訓練受講給付金の利用を検討する際に知っておきたいこと
- 職業訓練受講給付金とは、雇用保険を受給できない人が職業訓練を受けている間にもらえるお金
- 国(厚生労働省)が実施している「求職者支援制度」の一環であり、職業訓練受講給付金の支給を受けるためには一定の資格・条件を満たす必要がある
- 求職者支援制度の特例措置により、令和5(2023)年3月末まで職業訓練受講給付金が受給しやすくなっている
- 月10万円の訓練給付手当をもらいながら、無料の職業訓練を受けられ、スキルを身につけることができる
- 職業訓練受講給付金の審査は厳しく、職業訓練の全体出席日数の8割以上出席しなければ支給が打ち切られる可能性がある
目次
職業訓練受講給付金とは?もらえるお金は3種類

職業訓練受講給付金とは、再就職、転職、スキルアップを目指している雇用保険(失業保険)の基本給付(失業給付)を受給できない人が、職業訓練を受けている間にもらえるお金です。
国(厚生労働省)が実施している「求職者支援制度」の一環であり、職業訓練受講給付金を受給するためには一定の資格・条件を満たす必要があります。
求職者支援制度とは、雇用保険を受給できない人が職業訓練によるスキルアップを通じて早期就職を実現するために国が支援する制度です。

職業訓練はハローワークの支援指示によって行われますが、令和2(2020)年度は全国で2万人以上が受講しています。
これから職業訓練受講給付金の種類・内訳などについて詳しく解説していきます。
職業訓練受講給付金で実際にもらえる金額は合計月10万円以上が目安
職業訓練受講給付金の種類・内訳は以下のとおりです。
- 職業訓練受講手当:月額10万円
- 通所手当:訓練施設へ通所する場合の定期乗車券などの額(月上限42,500円)
- 寄宿手当:月額10,700円
「職業訓練受講手当」は支給単位期間(原則1ヶ月)ごとに支給されます。ただし、支給単位期間における職業訓練受講給付金の対象となる日数が28日未満の場合は、支給額が別途算定されます。
「通所手当」とは、受給者が自由に決められるものではなく、最も経済的かつ合理的と認められる通常の通所経路・方法による運賃または料金の額です。
「寄宿手当」とは、訓練を受けるため同居の配偶者などと別居して寄宿する場合に支給される手当で、ハローワークに必要性を認められた人のみが支給の対象となります。
なお支給単位期間ごとに、ハローワークが指定した日にハローワークに来所して、職業訓練受講給付金の支給申請と職業相談を行う必要があります。
職業訓練受講給付金の対象となる主な職業訓練のコースは以下のとおりです。
主な職業訓練のコース(求職者支援訓練)
基礎 | ビジネスパソコン科、オフィスワーク科など |
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IT | WEBアプリ開発科、Android/JAVAプログラマ育成科など |
営業・販売・事務 | OA経理事務科、営業販売科など |
医療事務 | 医療・介護事務科、調剤事務科など |
介護福祉 | 介護職員実務者研修科、保育スタッフ養成科など |
デザイン | 広告・DTPクリエーター科、WEBデザイナー科など |
その他 | 3次元CAD活用科、ネイリスト養成科など |
職業訓練受講給付金は2023年3月末まで受給しやすくなっている
求職者支援制度の特例措置により、2023(令和5)年3月末まで職業訓練受講給付金が受給しやすくなっています。
従来の制度と特例措置との違いは以下のとおりです。
職業訓練受講給付金の受給条件
本人収入:月8万円以下 | → | 本人収入:シフト制で働く人、自営業・フリーランス、副業・兼業を行う人などの場合は、本人収入の要件は月12万円以下 |
世帯収入:月25万円以下 | → | 世帯収入:月40万円以下 |
・すべての職業訓練実施日に出席すること (やむを得ない理由がある場合でも、支給単位期間ごとに8割以上の出席率があること) ・やむを得ない理由により訓練を遅刻・欠課・早退した場合で、1実施日における訓練の2分の1以上相当する部分を受講したものについては「1/2出席」として取り扱う ・やむを得ない理由の欠席は職業訓練受講給付金は減額されないが、証明書が必要 ・やむを得ない理由以外の欠席は認められず、その月の職業訓練受講給付金はもらえない |
→ | ・8割以上の職業訓練実施日に出席すること (やむを得ない理由以外の欠席日も、やむを得ない欠席日と合わせて職業訓練実施日の2割まで認められる) ・仕事で訓練を欠席せざるを得ない日についても病気などと同じ「やむを得ない欠席」とする ・病気や仕事などのやむを得ない理由の欠席は職業訓練受講給付金を減額せずに支給し、それ以外の欠席は給付金を日割りで減額して支給する |
職業訓練受講給付金を受給するための資格・条件

職業訓練受講給付金の支給を受けるために必要な資格や条件があります。
なお、雇用保険(失業保険)の基本手当(失業手当)を受けている間は、職業訓練受講給付金はもらえません。
また、世帯収入や世帯全体の金融資産の金額においても、職業訓練受講給付金の支給条件に制限があります。
ここからは職業訓練受講給付金の支給に必要な資格や条件について、詳しく解説していきます。
職業訓練受講給付金の受給するための「4つの資格」
求職者支援制度(および職業訓練受講給付金)の対象者は、下記の4つの資格をすべて満たす「特定求職者」である必要があります。
- ハローワークに求職の申し込みをしていること
- 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
- 労働の意思と能力があること
- 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めたこと
職業訓練を受講しながら職業訓練受講給付金を受給できる「特定求職者」とは以下のような人です。
【離職者の人】
・雇用保険の適用がなかった人
・雇用保険の加入期間が足りずに基本手当(失業給付)が受けられなかった人
・雇用保険の基本手当を受給中に再就職できないまま支給が終了した人
・フリーランス・自営業を廃業した人
・就職が決まらないまま学校を卒業した人
など
【在職者の人】
・一定額以下の収入のパートタイムで働きながら、正社員への転職や社内での正社員転換を目指す人
など
ただし、週20時間以上働いていたり、そもそも短時間就労や短期就労のみを希望する人は、原則として特定求職者に該当されません。
職業訓練受講給付金を受給するための「7つの条件」
職業訓練受講給付金を受給するためには、上記の特定求職者に該当した上で、主に以下の7つの条件をすべて満たすことが必要になります。
- 本人収入が月8万円以下、シフト制で働く人、自営業・フリーランス、副業・兼業などで固定給が8万円以下の人は本人の収入が月12万円以下
(令和5(2023)年3月末までの特別措置)
新型コロナウイルス対策などの業務にあたり、地方公共団体などで臨時的に雇用されている人の要件も、本人収入が月12万円以下です。 - 世帯全体の収入が月40万円以下
(令和5(2023)年3月末までの特別措置)
世帯とは、本人のほか、同居または生計を一つにする別居の配偶者、子、父母が該当します。また、内縁の関係にある人も配偶者とみなされます。 - 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 職業訓練の8割以上に出席する
(令和5(2023)年3月末までの特別措置)
病気などで欠席する日に加え、仕事で訓練を欠席せざるを得ない日も「やむを得ない欠席」とみなされます。やむを得ない欠席と、やむを得ない理由以外の欠席を合わせた欠席日が、職業訓練実施日の2割まで認められます。 - 世帯の中に同時にこの給付金を受給して職業訓練を受けている人がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない
参照:厚生労働省公式サイト「就職支援・給付金などについて知る」
職業訓練受講給付金をもらえない具体的なケース
これまで職業訓練受講給付金の支給を受けるための資格や条件を見てきました。
では具体的にどんなケースだと職業訓練受講給付金をもらえないのか、下記にいくつか例を挙げてみました。
- 自分の月収が12万円を超えて、シフト制のアルバイトで働いている
- 自分の月収は8万円以下だが、一緒に暮らしている世帯の収入を合わせると月収40万円を超えてしまう
- 自分に貯蓄はないけれど、一緒に暮らしている世帯の貯蓄が300万円を超えている
- 職業訓練を2割以上休んでしまい、出席日数が全体の8割を下回ってしまった
- 一人暮らしで月収12万円以下のシフト制のアルバイトをしているが、住民票を実家がある場所から移していなかったため、実家の収入と合わせて月収40万円を超えてしまう
なお、職業訓練受講給付金を受給したいために、実態は同居または生計を一つにする別居なのに、住民票を移して世帯を分離するのは絶対にやめましょう。
虚偽の申請を行うと、今後、他の給付金を受給することが困難になったり、ペナルティを受ける可能性もあります。
職業訓練受講給付金の支給を受ける3つのメリット

職業訓練受講給付金の支給を受けることによって以下のようなメリットがあります。
- 月10万円以上の職業訓練受講手当をもらいながら、無料で職業訓練を受けてスキルを身につけられる
- 職業訓練の受講開始から終了後も、ハローワークから就職サポートを受けられる
- 現在職業訓練受講給付金の支給条件が緩和されている
これから一つずつ解説していきます。
1.月10万円の職業訓練受講手当をもらいながら、無料で職業訓練を受けられスキルを身につけられる
職業訓練受給手当として毎月10万円をもらいながら、無料で職業訓練を受けられ、スキルが身につけられるのは大きなメリットです。
テキスト代などは自己負担となりますが、お金を受け取りながら、受講料が無料で職業スキルを学べるのはまたとないチャンスといえます。
2.訓練受講の開始から終了後も、ハローワークから就職サポートを受けられる
職業訓練の開始前から、訓練期間中、訓練終了後まで、ハローワークから就職サポートを受けられることもメリットの一つです。
職業訓練受講給付金の受給者ごとに就職支援計画を作成し、職業訓練の情報提供をするだけでなく、職業訓練実施機関と連携を図りながら、職業訓練終了後の就職までの支援をきめ細やかに行ってくれます。
厚生労働省の資料によると、令和元(2019)年度の求職者支援訓練受講者の就職率は、基礎コースで56.5%、実践コースでは62.4%となっています。
参照:厚生労働省公式サイト「求職者支援制度について」3.職業訓練受講給付金の支給条件が緩和されている
現在、職業訓練受講給付金の支給条件が緩和されているというメリットもあります。
新型コロナウイルスの影響を受けて業務シフトが減少した人や、休業を余儀なくされている人などが、働きながら訓練を受講しやすくするために、求職者支援制度の特例措置(令和5(2023)年3月末まで)が実施されているのです。
本人の収入が月8万円以下という支給条件になっていますが、特例措置ではシフト制で働く人などは月12万円以下となっています。
また、本来の制度では世帯収入は月25万円以下という支給条件になっていますが、特例措置では世帯収入は月40万円以下になっています。
さらに、本来の制度ではすべての職業訓練実施日に出席する必要がありますが、特例措置によって8割以上出席すれば、職業訓練受講給付金が受給できるようになっています。
職業訓練期間についても本来の制度では2ヶ月~6ヶ月までとされていますが、特例措置ではシフト制の在職者などを対象とするコースは2週間~6ヶ月までに緩和されています。
参照:厚生労働省公式サイト「求職者支援制度の特例措置について」「職業訓練コース設定の柔軟化(特例措置)」職業訓練受講給付金の支給を受ける際の3つの注意点・デメリット

職業訓練受講給付金の支給を受ける際の注意点・デメリットは以下のとおりです。
これから一つずつ解説していきます。
1.職業訓練に8割以下の出席日数だと、職業訓練受講給付金の支給が打ち切られる可能性がある
職業訓練に8割以下の出席日数しかないと、職業訓練受講給付金の支給が打ち切られる可能性があります。
求職者支援制度は、熱心に職業訓練を受け、より安定した就職を目指して求職活動を行う人のための制度なので、少なくとも職業訓練の8割は出席しないと、職業訓練受講給付金が不支給となる可能性があるのです。
やむを得ない欠席については職業訓練受講給付金は減額されませんが、病気や仕事以外などの理由で訓練を欠席した場合、職業訓練受講給付金が日割りで支給されるケースがあるので注意しましょう。
2.職業訓練自体が大変なため、就業する意思が必要になる
職業訓練の受講を続けないと、就労できるチャンスを失う可能性も出てしまいます。「絶対に就職するんだ」という強い意思を持って受講することが大切です。
職業訓練実施機関は、就職するためにスキルをできるだけ早く身につける場所であるため、選ぶ科目やレベルにもよりますが、比較的、講義のスピードが速いところが多いようです。
そのため、講義の内容でわからなかったことをそのまま理解できないままにすると、いずれは講義についていけなくなってしまう可能性もあるので注意しましょう。
3.職業訓練受講給付金の審査に時間がかかる
職業訓練と同時に、職業訓練受講給付金の「事前審査」を申し込みますが、職業訓練実施機関による選考(面接・筆記等)に合格し、職業訓練が受けられるとわかった場合のみ「事前審査」の結果が伝えられます。
事前審査に合格し、職業訓練を受講し始めてから約1ヶ月後に、毎月1回の職業相談が始まります。
職業相談の初回に、問題なく職業訓練を受講中であると判断されてようやく職業訓練受講給付金を正式に申し込め、申込日からおよそ1週間〜10日後に指定した口座に入金されます。
このように、職業訓練受講給付金は審査に時間がかかるだけでなく、審査の手続きも厳格である点も理解しておきましょう。
参照:厚生労働省公式サイト「求職者支援制度があります!」職業訓練受講給付金の審査はかなり厳しい

職業訓練受講給付金の審査はかなり厳しいとされています。
前述したように、職業訓練受講給付金の支給を受けるための条件を満たす必要があり、また支給が始まった後も、毎月「支給申請」をしなければなりません。
ここでは、職業訓練受講給付金の支給を受けるために必要な条件と申請について詳しく見ていきましょう。
職業訓練受講給付金の支給を受けるための7つの条件を満たす必要がある
前述しましたが、職業訓練受講給付金の支給を受けるためには、以下の7つの条件をすべて満たすことが必要になります。
- 本人収入が月8万円以下、シフト制で働く人などは月12万円以下
- 世帯全体の収入が月40万円以下
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在住んでいるところ以外に土地・建物を所有していない
- 訓練の8割以上に出席する
- 世帯の中に同時にこの給付金を受給して訓練を受けている人がいない
- 過去3年以内に、偽りその他不正の行為により、特定の給付金の支給を受けたことがない
上記の条件をすべて満たさない限り、職業訓練受講給付金の審査に落ちてしまいます。
また、職業訓練を受けて、スキルを習得し、必ず就職したい意思があるかどうかについて、言葉だけではなく、就職活動や情報収集を積極的に行っているかどうかという行動面からも判断されます。
さらに、「希望職種と受けたいコースの科目が合致しているか」「既に習得済みのスキルではないか」「講義についていけているか」といった点についても確かめられます。
「事前審査」を受け、月ごとに「支給申請」する必要がある
職業訓練受講給付金の手続きでは、原則1回のみ行う「事前審査」と、月ごとに行う「支給申請」があります。
事前審査も支給申請もどちらが欠けても職業訓練受講給付金は支給されません。
また、職業訓練を欠席(遅刻・欠課・早退を含む)したり、ハローワークの就職支援を拒否すると、職業訓練受講給付金は支給されません。
それだけでなく、ハローワークから支援指示が取り消され職業訓練の受講の継続ができなかったり、訓練期間の初日にさかのぼって職業訓練受講給付金の返還を求められる場合があるので注意が必要です。
職業訓練受講給付金の審査に落ちた場合は?他にもらえる可能性がある公的給付金を紹介
何らかの条件が合わず、職業訓練受講給付金の審査に落ちてしまった場合でも、申請すればもらえる可能性がある公的な給付金がいくつかあります。
■住宅確保給付金
離職等により経済的に困窮し、住居を失ってしまった人や、そのおそれのある人に対し、求職活動等を条件に、家賃費用を期間限定で給付されるものです。
参照:厚生労働省公式サイト「住宅確保給付金」
■高等職業訓練促進給付金
ひとり親の人たちが安定して働けるための資格の取得などを促進するために、資格を取るための訓練受講期間中の生活費として給付されるものです。
参照:厚生労働省公式サイト「高等職業訓練促進給付金のご案内」
上記で紹介したもの以外にも、条件次第でもらえる公的な給付金がある可能性もあります。
人によってそれぞれ状況も違うため必ず公的な給付金がもらえるとは限りませんが、まずは自分の状況に合った給付金がないか、住まいの自治体の窓口などに問い合わせてみましょう。
職業訓練受講給付金の支給までの流れと必要書類

職業訓練の受講申し込みや、職業訓練受講給付金などの手続きは、住まいの地域を管轄するハローワークで行います。
詳細については最寄りのハローワークに問い合わせましょう。
ここでは、職業訓練の受講とともに、職業訓練受講給付金の手続きの基本的な流れと必要書類について解説していきます。
職業訓練受講給付金の手続きは6つのステップ
職業訓練受講給付金を申し込むには、職業訓練の受講の手続きと同時に行う必要があります。
職業訓練受講給付金の手続きは以下のとおりです。
- ハローワークで求職の申し込み、職業相談を受ける
・職業相談時に「職業訓練受講給付金」の受給の希望を申し出ます。
・職業相談の中で、職業訓練の受講の必要性が高いと判断された場合、適切な訓練コースを選びます。 - 職業訓練の受講を申し込む(受講と同時に職業訓練受講給付金の事前審査を申請する)
・ハローワークの窓口で職業訓練の受講の申し込みの手続きをします(受付印を押印された受講申込書を職業訓練実施機関に後日自分で提出します)。
・職業訓練受講給付金の事前審査を申請します(その際、後述の必要書類を添付します)。
※再就職のために職業訓練が必要でないとハローワークに判断された場合は、希望した職業訓練の受講の申し込みができない場合もあります。 - 面接・筆記試験等を受験する
・職業訓練実施機関による選考(面接・筆記等)を受験します。 - 合格したら受講のあっせんを受ける
・合格通知が職業訓練実施機関から届いたら、職業訓練開始日の前日までにハローワークに行き「就職支援計画書」の交付を受けます(支援指示)。
・職業訓練の選考に合格すると、ハローワークから職業訓練受講給付金の事前審査の結果(該当または非該当)が通知されます。
・ハローワークで職業訓練受講中の職業訓練受講給付金の支給申請に関する説明を受け、支給申請の必要書類を受け取ります。
※「支援指示」がなければ、訓練の受講も、職業訓練受講給付金の受給もできません。 - 毎月1回ハローワークで職業相談を受け、職業訓練受講給付金の申請を行う
・職業訓練の受講中から修了後の3ヶ月間は、原則として毎月1回ハローワークに行き、定期的な職業相談を受けます。
・指定来所日に職業相談を受けた後、職業訓練受講給付金の支給申請を行います。
・支給申請書の「訓練実施機関が訓練の受講状況を証明する欄」が確認され、支給・不支給の決定がなされます。 - 給付金申請書を提出後、約1週間後に職業訓練受講給付金が支給される
・職業訓練受講後の指定来所日に給付金申請書を提出後、約1週間後に職業訓練受講給付金が口座に振り込まれます。
・初回の振込は、職業訓練の開始からおよそ1ヶ月半~2ヶ月後となります。
参照:厚生労働省公式サイト「求職者支援制度のご案内」
職業訓練受講給付金の事前審査に必要な書類
職業訓練受講給付金の事前審査において必要となる書類は以下のとおりです。
(1)番号確認書類(原本) | 以下のうちのいずれか1点 ・マイナンバーカード ・通知カード ・マイナンバーの記載のある住民票(住民票記載事項証明書) |
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(2)身元(実在)確認書類 | 【a 以下のうちのいずれか1点】 ・マイナンバーカード ・運転免許証 ・身体障害者手帳 ・精神障害者手帳 ・運転経歴証明書 ・旅券 ・療育手帳 ・在留カード など 【b aがない場合は以下のうちいずれか2点以上】 ・公的医療保険の被保険者証 ・年金手帳 ・児童扶養手当証書 ・特別児童扶養手当証書 など |
(3)ハローワークから交付された各種様式(窓口で渡されるもの) | ・受講申込書 ・受講申込・事前審査書(安定書提出用) ・職業訓練受講給付金要件申告書 ・職業訓練受講給付金通所届 |
(4)所定の添付書類(同居配偶者等の預金通帳を除き原本。詳細は所轄のハローワークに問い合わせ) | ・直近3ヶ月以内に交付された住民票謄本の写しまたは住民票記載事項証明書(世帯の構成および続柄が記載されたもの) ・事前審査申請日の前月に得た申請者本人およびすべての同居配偶者等の収入を証明する書類(賃金明細書など。もしくは、源泉徴収票、市区町村が交付する所得証明書[額面が記載されたもの]など) ・申請者本人または同居配偶者等が保有する事前審査申請日の残高が50万円以上であるすべての預貯金通帳または残高証明(直近1ヶ月以内に交付されたもの) ・給付金の振込先となる通帳 ・その他、ハローワークが求める書類 |
参考:厚生労働省公式サイト「求職者支援制度があります!『職業訓練受講給付金の事前審査に必要な書類』」
雇用保険(失業保険)の受給資格者が職業訓練中に受け取れる各種手当

雇用保険(失業保険)の受給資格者が職業訓練中に受け取れる主な手当は、「基本手当(失業給付)」「受講手当」「通所手当」です。
職業訓練には「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」があります。
基本的に、雇用保険の失業給付等を受けられる人は「公共職業訓練」を、雇用保険の失業給付等を受けられない人は「求職者支援訓練」を受けることになっています。
ただし、雇用保険の失業給付等を受けられる人は「求職者支援訓練」を受けることもできます。
ここでは、雇用保険の受給資格者が職業訓練を受ける場合に受け取れる手当について解説していきます。
【コラム】雇用保険の手当をもらい職業訓練を無料で受講した人に編集部が独自取材してみた!
編集部は、実際に雇用保険から各種手当を月々受け取りながら職業訓練を無料で受講した人(20代女性)に取材してみました。
これからハローワークや雇用保険の積極的な利用を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
「職業訓練」と「職業訓練受講給付金」について知ったきっかけは?
自分が思い描いている仕事とは違うと思い、前職を辞めようと決意したとき、雇用保険(失業保険)のことが気になり、ネット検索をする日々が続いていました。
そんなある日、ネットで「職業訓練」と「職業訓練受講給付金」という用語に注目するようになりました。
その後同僚からも、職業訓練と職業訓練受講給付金というものがあると聞きました。
「職業訓練を無料で受けながら、その間、毎月手当も受け取れるよ」と同僚がアドバイスしてくれたことで、退職後のハローワークの積極的な利用を検討するようになりました。
職業訓練について調べてみたら、前々から興味を持っていたITパスポートも取得できるし、プログラミングの授業も受講できるとのこと。
これはスキル獲得のチャンスでもあると思い、前職を辞めてハローワークを訪れ、職業訓練ではITパスポートのコースを選択し受講しました。
ハローワークと聞くと「お堅い」イメージがあるかもしれませんが、私を担当してくれた職員さんは職業訓練や各種手当などの説明がとても丁寧で、親身になって対応してくれたので、とてもありがたかったです。
雇用保険から受け取った各種手当はいくらもらえた?
ハローワークで確認したところ、私は雇用保険の基本手当(失業手当)の受給資格者だったので、4ヶ月でおよそ70万円以上の手当を受け取れました。
雇用保険の受給者でない人の場合は、職業訓練受講給付金の受給が可能ですが、職業訓練受講手当は月10万円しか支給されないと聞きます。
都市圏であれば月10万円ではほぼ生活できないので、貯蓄を切り崩したり、身内に借りたりする必要が出てくるでしょう。
専業主婦(主夫)世帯や子育て世帯の人は生活が大変だろうなと思いました。
現在の私は職業訓練のおかげでITパスポート試験に合格して、医療系のIT事務の仕事を頑張っています。
雇用保険(失業保険)を受給できる人は、雇用保険の手当を受給しながら職業訓練を受講できる
雇用保険を受給できる人は、雇用保険から支給される各種手当を受給しながら、職業訓練(公共職業訓練・求職者支援訓練)を受講できます。
職業訓練受講給付金は、基本的には雇用保険の失業手当等を受給できない人が申請し、受給できるものです。
雇用保険から支給される各種手当は以下のようになっています。
- 基本手当:離職前の賃金に応じて支給額が異なる
- 受講手当:日額500円(月上限20,000円)
- 通所手当:通所方法により支給額が異なる(月上限42,500円)
参照:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
雇用保険の受給資格者は求職者支援訓練が終わるまで、延長して雇用保険の諸手当が受けられる
雇用保険の受給資格者が「求職者支援訓練」を受講した場合でも、「公共職業訓練」を受講したときと同じように、職業訓練が終わるまで延長して雇用保険の諸手当を受けられます。
以前は、雇用保険の受給期間中に仕事が決まらなかった場合に、条件がそろっている場合に限り、職業訓練受講給付金を申し込めましたが、必ずしも職業訓練受講給付金を受給できるわけではありませんでした。
ところが、令和4(2022)年7月1日から、雇用保険の受給資格者に対して公共職業安定所長が受講を指示する公共職業訓練等の対象に「求職者支援訓練」が追加されたため、訓練延長給付や技能習得手当等を受給できるようになったのです。
参照:厚生労働省公式サイト「令和4年7月1日以降、雇用保険の受給資格者が「求職者支援訓練」の受講を開始する場合に、訓練延長給付や技能習得手当等を受給することができるようになります。」職業訓練受講給付金や雇用保険の各種手当をどんな人がいつもらえるかを要チェック
これまで職業訓練受講給付金や雇用保険の各種手当について解説してきましたが、どんな人がどんな手当をいつもらえるのか、整理してみたいと思います。
雇用保険を受給できる人がもらえるお金
雇用保険の受給資格者は、公共職業訓練(離職者訓練)と求職者支援訓練のどちらを選んでも、雇用保険の各種手当(基本手当、受講手当、通所手当)を受給しながら職業訓練を受けられるのは前述したとおりです。
また、雇用保険の支給残日数などの条件が合えば、公共職業訓練(離職者訓練)と求職者支援訓練のどちらでも、職業訓練実施期間中に職業訓練延長給付および技能習得手当等を受給できます。
雇用保険を受給している場合は、独身か既婚の違いでもらえる手当が違うことはありませんが、公的職業訓練を受けるために、扶養家族と別居して、アパートや下宿などで生活する必要がある人には寄宿手当が支給されます。
雇用保険を受給できない人がもらえるお金
雇用保険を受給できない人が受けられる職業訓練は求職者支援訓練で、条件が合えば職業訓練受給給付金がもらえます。
職業訓練受給給付金を申し込む場合には、独身か既婚か、あるいは同居か別居によって申請する前に注意すべき点と、もらえる手当などが変わってきます。
- 独身(一人暮らし)
【注意点】
住民票がもし実家のままになっていたら、現住所に移しましょう。住民票が実家のままだと、世帯の収入や財産の計算で、家族と合算して計算されるため、審査に通りづらくなる可能性があります。
【もらえる手当】職業訓練受講手当10万円+通所手当 - 独身(同棲中)
【注意点】
結婚はしていないけれど同棲している場合は、同一世帯とみなされる場合があります。もし、二人同時に職業訓練受講給付金を受けたい場合は、どちらか一人だけしか受けられない可能性もあります。
【もらえる手当】職業訓練受講手当10万円+通所手当 - 既婚(同居)
【注意点】
配偶者の収入も合算して月40万円以上あるかなど、収入や資産が同居の家族の影響を受けるため注意しましょう。
【もらえる手当】職業訓練受講手当10万円+通所手当 - 既婚(別居)
【注意点】
別々に住んでいても同一世帯とみなされます。そのため、収入や資産は世帯で合算されます。
また、公的職業訓練を受けるために、扶養家族と別居して、アパートや下宿などで生活する必要がある人には寄宿手当が支給されます。
【もらえる手当】職業訓練受講手当10万円+通所手当+寄宿手当
個別のケースについてわからないことがあれば、管轄のハローワークに問い合わせてみましょう。
職業訓練受講給付金についてよくあるQ&A

職業訓練受講給付金についてさらに詳しく確認しておきたいことについて、Q&A形式でまとめましたので、参考にしてください。
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雇用保険の失業給付等と職業訓練受講給付金は一緒に受け取れません。
ただし、雇用保険を受給していている人も求職者支援訓練は受けられます。
令和4(2022)年7月1日から、雇用保険の受給資格者に対して公共職業安定所長が受講を指示する公共職業訓練等の対象に「求職者支援訓練」が追加されました。
したがって、令和4(2022)年7月1日以降は、雇用保険の受給資格者が求職者支援訓練の受講を開始する場合、訓練実施期間中に訓練延長給付(訓練終了までの間、失業している日について、所定給付日数を超えて基本手当を支給するもの)および技能習得手当(受講手当(日額500円、40日を限度)および通所手当(月額上限42,500円))を受給できるようになっています。
参照:厚生労働省公式サイト「令和4年7月1日以降、雇用保険の受給資格者が「求職者支援訓練」の受講を開始する場合に、訓練延長給付や技能習得手当等を受給することができるようになります。」
参照:鳥取労働局(米子ハローワーク)公式サイト「職業訓練受講中の給付金について」 -
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父母と実家暮らしをしている場合でも、世帯全体の収入が月40万円以下であれば、職業訓練受講給付金がもらえます(令和5(2022)年3月31日までの特例措置)。
ちなみに「世帯」とは、本人のほか、同居または生計を一つにする別居の配偶者、子、父母が該当します。
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職業訓練受講給付金は支給申請からおおむね1週間程度で指定する金融機関の口座に振り込まれます。
ただし、職業訓練受講給付金の支給の申請ができるのは、職業訓練が始まって約1ヶ月後の最初の職業相談を受けた後です。
最初にハローワークで求職の申し込みをしてから相当の時間がかかるので注意しておきましょう。
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職業訓練受講給付金をはじめ雇用保険に関する給付金や手当と生活保護の併給は基本的にできません。
仮に職業訓練受講給付金を申し込んで受給できたとすると、その分は生活保護費の収入認定を受けるため、生活保護費から差し引かれてしまう可能性が高いです。
したがって、生活保護受給者であれば職業訓練受講給付金を申し込むメリットは薄いといえるので、生活保護費をもらいながら職業訓練のみを申し込むことを検討したほうがよいでしょう。
すでに生活保護費をもらっている場合は、担当のケースワーカーにハローワークのどの制度を利用したらよいか相談してみましょう。
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「求職者支援資金融資」であれば、職業訓練受講給付金を受給しても、訓練受給中の生活費が不足する場合に融資が受けられます。
求職者支援資金融資の貸付条件
貸付額 ・同居または生計を一にする別居の配偶者、子または父母のいずれかがいる場合
月額10万円(上限)×受講予定訓練月数(最大12)
・上記以外の場合(単身者など)
月額5万円(上限)×受講予定訓練月数(最大12)対象者 以下の要件をどちらも満たしている人
1.職業訓練受講給付金の支給決定を受けた人
2.ハローワークで求職者支援資金融資要件確認書の交付を受けた人貸付利率 年2.0%(信用保証料0.5%を含む) 担保・保証人 不要(ただし、労働金庫が指定する信用保証期間の利用が条件となる) -
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教育訓練給付制度とは
働く人たちの主体的な能力開発やキャリア形成を支援し、雇用の安定と就職の促進を図ることを目的とする、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了した際に受講費用の一部(教育訓練給付金)が支給される制度です。
教育訓練給付金と職業訓練受講給付金は名称が似ているため混同しやすいですが、制度の趣旨・内容は違います。
教育訓練給付金は雇用保険の加入者が対象ですが、職業訓練受講給付金は雇用保険を受給していない人が対象です。
また、教育訓練給付金は在職中の人が対象(離職してから1年以内である場合、妊娠、出産、育児、疾病、負傷などの理由により適用対象期間の延長を行った場合は最大20年以内も含む)の制度であるのに対し、職業訓練受講給付金は離職中の人が対象となっています。
もらえる金額についても違いがあり、教育訓練給付金の場合は対象となる講座費用の20〜70%の範囲で受け取れる一方で、職業訓練受講給付金の場合は職業訓練受講手当(毎月10万円)などを受け取れます。
参照:厚生労働省公式サイト「教育訓練給付制度」この記事のまとめ
職業訓練受講給付金は、再就職、転職、スキルアップを目指している、雇用保険を受給できない人が、職業訓練を受けている間にもらえるお金です。
毎月10万円の職業訓練受講手当をもらいながら、無料で職業訓練を受けられ、職業スキルを身につけられるメリットがあります。
一方で職業訓練受講給付金は審査が厳しいだけでなく、職業訓練日数の8割以上出席しなければ、職業訓練受講給付金の支給が打ち切られる可能性もあります。
現在は、求職者支援制度の特例措置により、2023(令和5)年3月末までは、従来よりも職業訓練受講給付金が受給しやすくなっています。
自分の希望に合った職業訓練のコースが見つかったら、制度の内容を正しく理解した上で職業訓練受講給付金を活用して、早期就職の実現を目指しましょう。
監修者
ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)
大手銀行に入行し、在職中に2級FP技能士およびAFPを取得。結婚退職後、社会保険労務士試験に合格し、有資格者となる。現在はファイナンシャルプランナーの知識・知見を活かし、カードローンや債務整理などマネー関連の記事を執筆している。
【保有資格】
社会保険労務士、一般社団法人日本ほめる達人協会 認定講師、一般社団法人HAT 認定子育てハッピーアドバイザー