生活保護がもらえる実際の金額は?計算方法と6つの受給条件や申請方法を解説
更新日:2023.06.26

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経済的な理由などで生活を続けることが困難な場合、生活保護を受けるという選択肢があります。
生活保護を受けるためには、以下の6つの条件を満たす必要があります。
- 収入が厚生労働省の基準を下回っている
- 家族に働ける人がいない
- 持ち家や車など活用できる資産を所有していない
- 働いて収入を得ることができない
- 国の制度を利用しても生活が難しい
- 親族などからの支援が受けられない
この記事では、生活保護に関する知識・情報についてわかりやすくまとめています。
生活保護の対象となる条件・受給額の目安・受ける際の注意点などを紹介しますので、申請の前にしっかり把握しておきましょう。
生活保護で知っておきたいチェックポイント
- 生活保護においては「8つの扶助」が支給される
- 住んでいる地域や家族の人数・世帯構成に応じて、生活保護の受給額が加算される
- 生活保護受給中は新たにローン・クレジットカードを利用できない
- 生活保護受給中はケースワーカーが自宅に訪問し、生活状況をチェックされる
目次
無料で相談できること
- 固定費の見直し(住宅ローン、家計管理など)
- 教育資金の準備(学資保険など)
- 老後資金の準備
- 保険商品の比較・見直し
- 資産運用の方法や金融商品の選択ポイント
- 相続・税制など
生活保護とは?受給対象となる条件を解説

生活保護とは、すべての国民が健康で文化的な生活が送れるようにと、最低限の生活保障と自立を助けることを目的に制定された制度のことをいいます。
日本国憲法(第25条)を根拠に生活保護法でも定められているのですが、基本的に対象となるのは「日本国民」です。
しかしながら永住者などで在留資格を持ち、日本に滞在し納税している外国人の場合は、人道上の理由などから生活保護法が準用されます。
生活保護はすべての国民が持っている権利のひとつなのです。
生活保護の対象と受給金額が決定する仕組み
上のイラストのとおり、生活保護は最低限度の生活を送るために必要な最低生活費と収入の差額を支給し、生活をサポートする制度です。
そのため、生活保護を受ける場合の保障・保護費はすべての人が一律ではなく、困窮の程度に応じて必要な保護が行われます。(なお、地域や家族構成などによっても生活保護費に違いがあります)。
「自分は生活保護とは無縁」と思う人が多いと思いますが、生活保護を必要とする可能性は誰にでもあるものです。
生活を送るのが困難なときには、現在住んでいる地域を管轄する福祉事務所、あるいは自治体の窓口で相談するとよいでしょう。
生活保護は、申請すれば誰でも受給できるわけではありません。厳密な審査があり、審査を通過した場合のみ受給が可能となります。
それでは生活保護の受給条件について詳しく見ていきましょう。
受給条件その1「収入が厚生労働省の基準を下回っている」
生活保護は、あくまでも最低限の生活を送るのが難しい人が利用できる権利です。そのため収入の要件が定められています。
基本的に、厚生労働大臣が定めた生活扶養基準より収入が下回っているかがポイントになります。
計算方法は地域や家族構成によっても違いがありますが、下記の項目を合算して算出します。
【A】生活扶助基準額(地域ごとに基準を設定)
【B】加算額(障がい者、母子家庭、児童を養育する場合)
【C】住宅扶助基準(実際に支払っている家賃・地代)
【D】教育扶助基準、高等学校等就学費(小学生~高校生の教育費)
【E】介護扶助基準(居宅介護等にかかった介護費の平均月額)
【F】医療扶助基準(診療等にかかった医療費の平均月額)
↓
【A】+【B】+【C】+【D】+【E】+【F】=最低生活費

※【A】~【F】の詳細に関しては参照をご覧ください。
参照:「最低生活費の算出方法(令和4(2022)年4月)」
のちほど詳しく解説しますが、これらの項目を合算して最低生活費を算出し、実際に得られている収入を比較します。
その結果、収入が最低生活費に満たないときには、最低生活費から収入を差し引いた差額が生活保護費として支給される仕組みです。
受給条件その2「家族に働ける人がいるなら、生活保護は認められない」
長期にわたり、うつ病などの精神疾患または身体障害を患っていたり、病気治療に専念していたり、働こうにも働けない高齢者・若者の場合は、生活保護の受給要件に該当します。
ただし、世帯の中で働ける人(15歳~64歳で健康・身体状態に問題なく働ける人)がいる場合は、能力に応じて働くことが求められるので、生活保護の受給要件にあてはまりません。
なお、現に働いている人は、能力に見合った収入を得る努力をいそしむ必要があります。
受給条件その3「持ち家や車など活用できる資産を所有していない」
生活保護の処分の対象となる資産は、主に以下のような金銭的に価値のある貴重品や贅沢品などが挙げられます。
原則、生活保護を受けるにあたって持ってはいけない資産であって、売却や活用が可能な資産がある場合は、その資産を生活に充てていただく必要があるのです。
- 不動産
現に住んでいない不動産やローン付きの不動産、一定額以上の処分の価値のある居住用不動産を除いて、保有が認められていない。 - 生命保険(終身保険、養老保険、個人年金保険など)、学資保険
貯蓄性の高い保険は解約します。また、解約返戻金が一定額を超えるものは原則解約します。 - 貴金属(指輪・時計・ネックレス・ダイヤモンド等)・有価証券等債権
保有は不可。全額売却します。 - 自動車・バイク
原則として売却または処分します - 預貯金(種類・残高問わず)
生活保護申請時は、手持ちの現金(手持ち)と合わせて、最低生活費の2分の1まで収入認定を行いません。
ただし、生命保険や学資保険、自動車、バイク等については、その資産の利用状況や個別の事情により保有が認められる場合があります。
例えば自動車の場合、身体障害のある方の送迎に必要だったり、へき地での自動車移動が不可欠だったりしたときは、自動車の保有が認められる可能性があります。
「資産がどうしても必要」という場合は一度、ケースワーカーの方に相談してみましょう。
受給条件その4「働いて収入を得ることができない」
日本国憲法に定められている日本国民の三大義務は以下の3つです。
- 「教育の義務」(26条2項)
- 「勤労の義務」(27条1項)
- 「納税の義務」(30条)
その中でも深く生活保護と関連しているのが「勤労の義務」です。
病気やケガで働くことが難しい場合には、何が何でも働かなくてはならないというわけではありませんが、生活保護の要件では働くことが可能な人は「能力に応じて働くこと」を求めています。
では、能力に応じて働くということは、どのようなことなのでしょうか?
生活保護の要件の中での能力とは、ビジネススキル等ではありません。
たとえば子どもが小さいときには、働く時間が限られてしまいます。そのような人は、自分が働ける時間の範囲で働いてほしいということなのです。
なかには、働きたいけど雇用先が見つからないという人もいるかもしれませんし、働いてはいるものの、生活保護で定められている基準以下の収入しか得られないという人もいるでしょう。
生活保護は、収入があるから受けられないというものではありません。
働いても収入が基準に足りないときには、生活保護の対象となる可能性があります。
例えば、うつ病などの精神疾患または身体障害を患っていたり、病気治療に専念していたり、働こうにも働けない高齢者・若者の方の場合は、生活保護の受給要件の対象となり得ます。
受給条件その5「国の制度を利用しても生活が難しい」

日本には生活保護のほかに、年金や各種手当などの給付を受けたり、公的融資制度を利用してお金を借りる方法もあります。
生活保護を検討する前に、まずはそれらの公的保障制度を活用することが必要です。
代表的なものとしては以下が挙げられます。
- 国民年金(障害基礎年金)
- 各種手当
- 医療費助成等
- 失業給付
- 雇用調整助成金
- 緊急小口資金・総合支援資金 など
それまでの働き方や家族構成によって、利用できる公的制度は異なります。
受給の対象であるならば積極的に活用したいところですが、各種手当のお知らせは待っていても届きません。
生活が大変なときには、住まいのある自治体の窓口に出向いて、自分が活用できる公的な給付金や手当、融資制度はないかを相談してみましょう。
それでも生活が難しいときには、生活保護の申請を検討してみましょう。
主な公的融資制度
緊急小口資金 | 緊急かつ一時的な生計維持のための生活費としてお金を借りたい人 |
---|---|
生活福祉資金貸付制度 | 低所得世帯・高齢者世帯・障害者世帯 |
生活困窮者自立支援制度 | 最低限度の生活を維持できなくなるおそれのある人 |
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受給条件その6「親族などからの支援が受けられない」
生活保護では、制度を利用する前に親族等から援助を受けることを求めています。
「自分には援助してくれるような親族はいない」と思っている人もいるかもしれませんが、民法第877条では、扶養義務者が決められているのです。
その範囲は意外と広く、「直系血族(親・子)」および「兄弟姉妹」は、互いに扶養をする義務があるとしています。
さらに特別な事情があるときには、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることが可能です。
とはいえ親族との関係性にもよりますし、関係が良好であっても親族に援助するだけの余裕がなければ、援助を受けられないことになります。
そのような場合は、生活保護の対象となる可能性があるでしょう。
先に述べた1~6の受給要件を考慮し、世帯で得られる収入と厚生労働大臣の定める基準で計算された最低生活費の比較をします。
そのうえで収入が最低生活費に満たないときのみ、生活保護が適用されることになるのです。
【世帯別】生活保護の受給額はいくらもらえるの?

気になるのが「実際どれくらいの生活保護費を受給できるのか」という点でしょう。
生活保護の受給額はさまざまな要素によって決定されるので、一人ひとり異なります。
これから詳しく説明しますので、自分がどれくらいの受給額になるか調べてみましょう。
最低生活費から収入を引いた額が生活保護として受け取れる
生活保護としてもらえる金額は、最低生活費から収入を引いた金額が受給できるようになっています。
そのベースとなるのが、最低生活費です。
生活費は人によって違うのですが、国は最低生活費の基準を定めています。
上記の「受給要件その1」で増えていますが、最低生活費は6つの扶助を合算して算出します。
~最低生活費を定める6つの基準~
・生活扶助基準(地域ごとに基準を設定)
・加算額(障がい者、母子家庭、児童を養育する場合)
・住宅扶助基準(実際に支払っている家賃・地代)
・教育扶助基準、高等学校等就学費(小学生~高校生までの教育費)
・介護扶助基準(居宅介護等にかかった介護費の平均月額)
・医療扶助基準(診療等にかかった医療費の平均月額)
これら6つの項目をすべて合算し、収入では足りない分のみ生活保護として受給することができます。
では実際のところどうなのでしょうか?
生活扶助額の例を計算して下記に挙げてみました。
参考:厚生労働省公式サイト「生活保護制度の概要等について(令和3年4月27日)」
生活保護は「8つの扶助」で最低限の保障を揃えている
生活保護を申請すると、以下の「8つの扶助」が支給できます。
~8つの扶助の種類と内容~
生活を営む上での費用 | 支給内容 | 支給内容 |
---|---|---|
日常生活に必要な費用 (食費・被服費・光熱費等) |
生活扶助 | 基準額は、 (1)食費等の個人的費用 (2)光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出。 特定の世帯には加算がある(母子加算等) |
アパート等の家賃 | 住宅扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
義務教育を受けるために必要な学用品費 | 教育扶助 | 定められた基準額を支給 |
医療サービスの費用 | 医療扶助 | 費用は直接医療機関へ支払 (本人負担なし) |
介護サービスの費用 | 介護扶助 | 費用は直接介護事業者へ支払 (本人負担なし) |
出産費用 | 出産扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
就労に必要な技能の修得等にかかる費用 | 生業扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
葬祭費用 | 葬祭扶助 | 定められた範囲内で実費を支給 |
出典元:厚生労働省公式サイト「生活保護制度」
8つの扶助は、大まかに日常生活に必要なこと、医療や健康に関すること、その他があります。
日常生活に必要な扶助は、「生活扶助」「住宅扶助」「教育扶助」です。
生活のベースとなる部分の補助が受けられますが、生活扶助は世帯によって加算があることもあります。
住宅扶助と教育扶助は定められた範囲内で基準額が支給されることになっています。
医療や健康に関連する扶助には、「医療扶助」「介護扶助」「出産扶助」があり、医療扶助と介護扶助では本人負担はありません。
出産扶助は、定められた範囲内で実費が支給されます。
そのほかの扶助は「生業扶助」「葬祭扶助」です。
生業扶助はこれから収入を得られるような技能を習得するための費用が支給されます。
葬祭扶助は葬儀にかかる費用であり、ともに定められた範囲内で実費が支給されます。
以上の8つの扶助の内容には、基準額が設けられているもの、範囲内での実費が支給されるもの等の違いがあります。
受給する前に確認しておくと安心ですね。
住んでいる地域や家族の人数・世帯構成に応じた加算
生活保護を算出するときには、家族構成によって違いがあるだけでなく、住んでいる場所によっても違いがあります。
住まいは地域ごとに「級地区分」が決められており、この区分によって「生活扶助基準額」が変わってきます。
級地区分は「1級地」「2級地」「3級地」に分かれており、それぞれの級地ごとに「1」と「2」の区分で分けられます。
先ほども述べましたが、この級地区分の差によって、生活保護の受給額箱となるのです。
- 「1級地-1」「1級地-2」
- 「2級地-1」「2級地-2」
- 「3級地-1」「3級地-2」
つまり、3つの級地×2つの区分=6つの「級地区分」があることになります。
~級地区分表~
級地区分 | 都道府県・市町村名 |
---|---|
1級地-1 | 埼玉県:川口市、さいたま市、東京都:23区、八王子市、立川市、武蔵野市、東村山市、国立市、他、神奈川県:横浜市、川崎市、川崎市、藤沢市、他、愛知県:名古屋市、京都府:京都市、大阪府:大阪市、八尾市、東大阪市、他、兵庫県:神戸市、尼崎市、芦屋市、他、その他の地域 |
1級地-2 | 北海道:札幌市、江別市、宮城県:仙台市、埼玉県:所沢市、蕨市、他、千葉県:千葉市、市川市、他、東京都:青梅市、武蔵村山市、神奈川県:横須賀市、茅ヶ崎市、他、滋賀県:大津市、京都府:宇治市、他、大阪府:岸和田市、泉大津市、他、兵庫県:姫路市、明石市、岡山県:岡山市、倉敷市、広島県:広島市、福山市、福岡県:北九州市、福岡市、その他の地域 |
2級地-1 | 北海道:函館市、小樽市、他、千葉県:佐倉市、他、東京都:羽村市、他、静岡県:静岡市、浜松市、他、沖縄県:那覇市、他、その他の地域 |
2級地-2 | 茨城県:日立市、土浦市、他、栃木県:足利市、石川県:小松市、愛知県:瀬戸市、他、三重県:松阪市、桑名市、山口県:宇部市、他、その他の地域 |
3級地-1 | 青森県:弘前市、八戸市、他、秋田県:能代市、男鹿市、他、福島県:会津若松市、郡山市、他、千葉県:館山市、富津市、他、山梨県:富士吉田市、都留市、他、岡山県:津山市、他、鹿児島県:霧島市、他、その他の地域 |
3級地-2 | 上記以外の地域 |
出典元:厚生労働省公式サイト「生活保護制度における地域差等について」
先ほども述べましたが、この級地区分の差によって、生活保護の受給額となるのです。
なお、冬季には地区別に冬季加算も行われます。
自分の地域はどの「級地区分」になるのか、確認しておくようにしましょう。
出典元:厚生労働省公式サイト「級地区分」
生活保護の支給日はいつ?どのように支払われる?
生活保護の支給日はいつなのでしょうか? また、どのように支払われるのでしょうか?
生活保護を申請すると、審査を経て14日以内に受給の可否が郵送で届きます。
生活保護費は基本的に毎月、金融機関の口座へ振り込まれます。
なお、福祉事務所の窓口で手渡し、入院や入所している施設への送金という形でも受け取れます。
支給日は担当する福祉事務所によって違います。
例えば北海道富良野市のケースをもとに解説します。
富良野市のケースでは毎月1日が支給日となっていますが、どの地域でも、おおむね月初めの1~5日のいずれかに支給日されることが多いようです。
支給日が土日祝日にあたる場合(富良野市では金曜日も含む)には、支給日が土日祝日の前日にあたる金融機関の口座に振り込まれます。
出典元:富良野市公式サイト「生活保護のしおり」
生活保護の申請が認められるとさまざまな支払いが免除になる
生活保護を申請すると、「8つの扶助」を受給できますが、さまざまな支払いが免除となります。
- 国民年金保険料の免除
- 上下水道料金の基本料金の免除
- NHK受信料の免除
- ゴミ袋購入料の免除 など
自治体によっては、地方税の免除、児童関連や粗大ごみなどの利用料も免除されるところもあります。
なお、子どもがいる家庭で、保護者の同意がある場合には、保護者に代わって給食費を学校長に送付し、学校長が給食費を支払う「代理納付」も利用できる自治体もあります。
もちろん代理納付を選択しないという選択も可能ですが、この場合は保護者が支払うことになります。
ただしすべての受給者が免除されるわけではありませんし、自治体によっても違いがあります。
生活保護を申請するときには、自分の住んでいる自治体ではどのような扶助があるのか確認しておき、扶助の受け取りの漏れがないよう、メリットを享受できるようにしたいものです。
生活保護の条件を満たすと受けられる保護
生活保護の審査に通過すると、さまざまな保護が受けられるようになります。そこで受けられる保護について、一つひとつ詳しく見ていきましょう。
世帯構成などの条件にあわせて生活保護費を受給できる
生活保護を申請して受理されると、毎月月初に、生活保護費を受給できます。
生活保護費は基本的な生活を送るための資金のみですので、あらかじめ食費、住居費、教育費、公共料金などに分けておき、それらの費用を確保しておくことが大切です。
入退院などでの医療費が無料になる

生活保護を申請し受理されると、病気やケガをしたときの治療に必要な費用を扶助してもらえます。
ただし現金で給付されるのではなく、医療費は全額現物支給となっています。
自己負担額がない代わりに、原則として指定された医療機関での受診となります。
介護保険制度の場合は、要介護認定で「要介護」または「要支援」の認定を受けている人が対象です。
介護保険を利用して介護サービスを受けるときには、通常では介護サービス費の1割の自己負担額が必要になりますが、この1割の負担額も不要になります。
出産や入進学などお金がかかるライフイベントは一時支給が受けられる
生活保護費は毎月支給され、そのなかには最低生活費として必要なものが含まれています。
とはいえ、「出産や入進学でライフステージが変わった」「入退院などで新たな生活をする」といった場合には、手持ちの額では間に合わないこともあるでしょう。
そんなときには「一時支給」として一定の品物の支給を受けられます。
一時支給は幅広く対応しており、被服費として布団、被服、産着等が挙げられます。その他に入学準備金、家屋補修費等があります。
一時支給を受給するには、領収書等が必要な場合もありますし、事前申請が必要であったり、上限額が決められていることもあります。
もちろん、決められた項目であっても一時支給で受給できない場合もあります。
一時的に困っているなら、まずはお住まいの管轄する福祉事務所へ相談することが大切です。
生活保護を受けるにあたっての注意点
生活保護を受けるにあたっての注意点
- 年に数回ケースワーカーが自宅に訪れる
- 贅沢ができなくなる
- ローン・クレジットカードが組めなくなる
生活保護にはメリットがありますが、実際のところ生活保護にはデメリットや注意点があるので、ここで理解しておきたいところです。
ケースワーカーが自宅に訪れ、生活保護受給者の生活状況をチェックする

生活保護の注意点として挙げられるのは、年に数回(最初の1ヶ月程度は1回、あとは2~3ヶ月程度で1回の頻度で)ケースワーカーが自宅に訪れ、生活状況をチェックする訪問調査が行われる点です。
ケースワーカーとは、生活保護から自立支援に向かうための「良き相談相手」といえる役職の方です。
訪問調査といっても、家の中をくまなくチェックしてまわるというのではありません。
生活保護を申請した時点での生活状況や資産・収入の状況などの調査が行われ、生活保護を受給している今も状況に変わりはないのか、定期的にチェックするという趣旨で訪れています。
ここで注意しなければならないのが、ケースワーカーの対応です。
ケースワーカーが訪問調査をするときには、必ず応じましょう。
ケースワーカーから指定された日の対応が難しいようなら、いつなら大丈夫なのかを伝え、日程を調整してもらう必要があります。
仮に訪問調査に応じない場合には、生活保護そのものが打ち切られてしまう可能性がありますので、適切に対応できるようにしておきましょう。
生活保護の受給中は、毎月いくら収入・支出があったのか、申告する義務があります。
特にケースワーカーが訪問調査でチェックしているのは「無駄遣い」をしていないかです。
通信費や水道光熱費などが明らかに高いケースは少なくないので、その際に生活保護の受給者に対し費目の改善・見直しを図るよう、チェックします。
年金や仕送りしてもらったお金や給料はもちろんのこと、相続で財産を受け取ったときも収入となります。
もし嘘の申告をした場合は、生活保護の不正受給として、受け取った金額を返納しなければならないという事態になってしまいます。
自治体担当者からの取材こぼれ話
- 自治体の担当者に取材をしたところ、ギャンブルや浪費癖のため、受け取った生活保護をすぐに使い切ってしまう方が少なくないそうなので、その場合は1ヶ月に1回から、1週間に1回程度へと、生活保護費の受け取り間隔を短くしたりするケースもあります。
- さらに最近では、体調が悪く働けない高齢者の方が生活保護を申請・利用するケースが大幅に伸びているそうです。
贅沢ができなくなる
生活保護を受給すると、暮らしぶりは最低限度の生活を送ることになるため、贅沢ができなくなってしまうという話を聞いたことがあるかもしれませんね。
以前はエアコン(冷暖房機)は贅沢だから保有NGと言われていましたが、近年の気象状況を鑑みて、生活保護受給中であってもエアコンの設置は認められています。
贅沢品の概念は、時代にあわせて変わっているのです。
贅沢の基準は人によって違うものですが、これはあくまでも客観的に判断されます。
具体的には、マイカーやブランド品や高価な貴金属等を持つことはできません。
海外旅行をするときには、旅行へ行く前に、旅行先(宿泊先)、旅行目的、日程、費用、費用の準備方法等について、届出が必要になります。
旅行の目的が「遊び」である場合は、交通費と宿泊費に充当される金額は収入として計上されます。
ただし、親族の冠婚葬祭や危篤の場合やお墓参り、修学旅行、公的機関が主催する文化・スポーツ等の国際的な大会への参加へ選抜された、もしくは招待された場合には、おおむね2週間以内の期間で海外へ出かけるときには、旅行に要する費用の全額を収入として計上しないことができます。
ローン・クレジットカードが組めなくなる
生活保護を受給している場合、新たなローン・クレジットカードを組めません。
上記で説明したとおり、収入は毎月申告することが必要ですが、借り入れたお金も収入とみなされて、その月の収入として計上されてしまうのです。
なお、生活保護で受給したお金をローンやクレジットカードの返済に充てることは認められていません。
もし、ケースワーカーに無断でローンを組んでしまったときには、生活保護そのものが打ち切りになってしまう可能性があるのです。
生活保護を受けるための手順・方法

生活保護の申請から受給まで、どのような手順で進められていくのでしょうか?
順を追って解説していきましょう。
1.生活保護の事前相談
生活保護を利用したい場合は、まずは、住所地を所轄する福祉事務所の生活保護担当、もしくは自治体の担当窓口に出向き、相談しましょう。
その際、生活保護制度の説明を受けるほかに、年金や各種手当、医療費助成など、他の自立支援の方法がないかも説明してくれます。
2.生活保護の申請・調査
生活保護の申請をすると、生活保護を決定するかどうかの以下のような調査が行われます。
・訪問面接
・生活歴の聞き取り
・資産・扶養等の調査
↓
生活保護の決定(開始または却下)
その調査は、先述の「受給要件1~6」になります。
具体的には、以下の調査が行われます。
- ・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
- ・預貯金、保険、不動産等の資産調査
- ・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
- ・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
- ・就労の可能性の調査
3.生活保護の決定
生活保護の調査が終わった後、審査を経て、14日程度で生活保護の受給の可否が郵送で届きます。
生活保護の開始が決定したら、はれて生活保護費が受給されることになります。
生活保護の支給日は、担当する福祉事務所によって違いがありますが、おおむね毎月、月初めの1~5日に支給されることが多いです。
例えば東京都東村山市の場合は、(1)窓口で受け取る方法と、(2)口座振替で受け取る方法の2種類があります。
- (1)の場合は毎月3日受け取りますが、3日が土日祝日の場合はそれより前倒しした平日に受け取れます。
- (2)については毎月2日に変わらず受け取れます。
なお、世帯の人数や年齢などによって決定する最低生活費と、世帯の収入(年金・手当・給与・仕送り等)と比べて、その収入が最低生活費より少ない場合は、その不足する部分が生活保護費として支給が決定されます。
生活保護の受給にあたっては、以下の点を特に留意しておきましょう。
- 毎月の収入の状況を申告しなければならない
- ケースワーカーによる、年に複数回の訪問調査が行われる
- 働ける可能性のある人(15歳~64歳まで健康状態にある就労できる人)には、就労に向けた助言や指導が行われる
生活保護の受給や財産の処分などに関するQ&A
-
A
結論から言いますと、生活保護を申請すると家族や親族にバレてしまいます。
その理由は、民法第877条では、扶養義務者が決められており、直系血族や兄弟姉妹だけでなく、特別な事情があるときには、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができると定められているからです。
少なくとも、直径血族や兄弟姉妹には、扶養することはできないのか?と問い合わせが入ってしまい、扶養の有無にかかわらずバレてしまいます。
-
A
一般的に資産とみなされるのは、預貯金、家、土地、建物などの不動産、自動車やバイク、一定の生命保険、貴金属や高価な服飾品やブランド品のバッグ等です。
基本的に、現金に換金できるものはすべて換金し、それでも足りないときには生活保護を申請するというのが決まりです。
ただし上記のものがすべて換金しなければならないわけではありません。
不動産は自宅以外に保有しているものは売却処分を求められますが、現在住んでいる不動産は保有が認められるケースがほとんどです。
自動車やバイクも、通勤に必要だったり、仕事で使うために保有しているときには、そのまま保有が認められるケースがあります。
意外と気づきにくいのが生命保険です。解約払戻金があるタイプの保険の場合は、お金に替えられるため、金融資産として扱われる可能性があるので注意してください。
もし、わからないことや不安・心配事があるなら、事前に相談しましょう。
-
A
公的年金と生活保護の両方から支給を受けることはできます。
ただし、公的年金の分は収入としてカウントされるため、生活保護から減額される注意点があります。
-
A
多くの自治体の地域では、おおむね月初めの1~5日のいずれかに生活保護支給日とすることが多いようです。
生活保護の支給日が土日祝日にあたる場合には、支給日が土日祝日の前日に金融機関に振り込まれるケースが多いです。
この記事のまとめ
生活保護を申請することは、国民の誰にも認められている権利のひとつです。
なかには恥ずかしい気持ちから生活保護の申請をためらう人もいるかもしれませんが、どうにも身動きが取れなくなる前に相談することが大切です。
とはいえ受給要件をクリアできなければ生活保護は受けられません。どのような要件があるのか、確認しておきましょう。
生活保護は最低限の生活を送るためだけでなく、生活を立て直すための手段でもあります。
前向きな人生を送るためにも正しく、有効に活用しましょう。
監修者

ばばえりFP事務所代表
関西学院大学商学部卒業後、銀行にてカードローンやクレジットカード、投資信託などの金融商品を扱う窓口営業部門に所属。 その後、保険業界や不動産業界での勤務を経て、独立。
【保有資格】AFP、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員1種、秘書検定1級、ビジネス実務マナー検定1級、メンタル心理カウンセラー、貸金業務取扱主任者資格試験 合格