生命保険は受取人の決め方も重要!保険金にかかる税金を解説

生命保険を契約する際は、契約者が被保険者と保険金受取人を決めなければなりません。この第三者を「誰にするか」によって、保険金を受け取る際に適用される税金が変わる場合があります。

適用される税率によって、手元に残る保険金の金額が大きく変わってしまうので、保険金受取人を設定する前に適用される税金を確認しておくことは大切です。

保険金受取人には誰を指定できるの?
どんな人を受取人にすると税金が発生する?
受取人は契約途中で変更できる?
など、これから生命保険を契約する方が押さえておきたい情報をご紹介します。

現在、保険金受取人として指定されている方も、ぜひ参考にしてください。

生命保険の受取人とは?

まずは生命保険における契約者・被保険者・保険金受取人について、それぞれの言葉の意味を確認しましょう。

契約者(保険会社と契約を交わす人)

契約者とは、保険会社と契約を交わす人のことです。契約者は保険契約上の各種権利や告知義務、通知義務を有する人を指します。また保険料の支払い義務も契約者にあります。

保険の契約者と実際に保険料を支払う人が異なる場合は、実際に保険料を支払っている人が税制上の保険料負担者であるとみなされます。

被保険者(保険の対象となる人)

被保険者とは、保険(保障)の対象となる人のことです。生命保険においては、その人が病気やけが、死亡した際などに保険金が支払われます。

なお、契約者と被保険者は同一である必要はなく、別に設定できるケースもあります。

ワンポイントアドバイス

たとえば、今は会社員としてフルタイムで働いている妻が、今後出産・育児等で収入が少なくなる前提で、夫が妻の保険料を負担する場合、夫が「契約者」、妻が「被保険者」となるため、別の設定になります。

また、学資保険のように、「被保険者」は子どもと決まっており、「契約者」は通常両親のいずれかとなることが多く、そもそも別の設定になる保険もあります。

保険金受取人(被保険者の万一のときに保険金が受け取れる人)

保険金受取人とは、被保険者が死亡するなど万一のことがあった際に、保険金を受け取れる人のことです。受取人は、被保険者の死亡、病気やけがなど保険金の支払いが発生した際に、生命保険会社に対して保険金の請求を行うことができます。

一般的には、入院や手術に関して支払われる給付金は被保険者本人が、死亡時に支払われる死亡保険金や満期保険金については契約者から指定された者が受取人となります。

生命保険金の受取人は誰を指定できる?

生命保険金(死亡保険金)の受取人は誰でもなれるわけではなく、基本的には「法律上の配偶者または2親等以内の血縁者」と指定できる範囲を定めている保険会社が多いです。

ただし、配偶者や2親等以内の血縁者もいない場合は、3親等以内の血縁者を保険金受取人に指定できる保険会社もあります。

生命保険は、万が一のときに被保険者とその家族を守るためのもの。保険金詐欺などを防止するためにも、保険金受取人に指定できる対象は限られています。

生命保険の受取人として指定できる人

  • 配偶者
  • 1親等(親・子)
  • 2親等(祖父母・兄弟・姉妹・孫)
  • 3親等(叔父・叔母・甥・姪)

保険会社によります

ワンポイントアドバイス

婚約者・内縁・事実婚・同性のパートナーも、一定の条件を満たせば受取人に指定できる保険会社もあります。ただし、保険金額に上限が設けられたり、生命保険料控除が適用されなかったりと注意点もあります。この点については、後ほど詳しく解説します。

保険金受取人を指定する際に知っておきたいこと

ここでは保険金を設定する際に、知っておきたいこととして以下を紹介します。

  • 受取人は複数指定できる
  • 契約途中で変更も可能
  • 未成年の子どもも受取人に設定できる

保険金の受取人は複数指定できる

保険金受取人は、複数人を指定することも可能です。たとえば子どもが2人以上いる場合、子ども全員を親の死亡保険金の受取人に指定できます。受取人を複数指定する際は、それぞれが受け取る割合(持ち分)を指定する必要があります。

契約途中で保険金の受取人は変更可能

保険金の支払いが発生する前であれば、契約途中であっても保険金受取人を変更できます。変更手続きができるのは契約者で、変更には被保険者の同意が必要ですが、受取人からの同意は必要ありません。

未成年の子どもも受取人に設定できる

成年の子どもでも、保険金受取人に指定可能です。保険金請求の時点でも子どもが未成年(既婚者を除く)である場合は、本人に代わって親権者または後見人が手続きを行うことになります。

生命保険金の受取人が誰になるかで税金の種類が異なる

死亡保険金や満期保険金などは、契約者・被保険者・保険金受取人をそれぞれ誰に設定するかによって、適用される税金の種類が異なります。この三者の関係としては、主に下記の4パターンが考えられます。

契約者・被保険者・受取人の関係で考えられる4つのパターン

契約者・被保険者・
  1. 契約者・被保険者・受取人がすべて同じ人
  2. 契約者と被保険者は同じ人で、受取人が異なる
  3. 契約者と受取人は同じ人で、被保険者が異なる
  4. 契約者・被保険者・受取人がすべて異なる

たとえば夫・妻・子がそれぞれ契約者・被保険者・受取人として、保険金の受け取りにかかる税金と該当する生命保険の種類をまとめると、以下の表のようになります。

保険金の種類 契約者(保険料負担者) 被保険者 受取人 税金の種類 該当する主な生命保険の種類
死亡保険金 妻/子 相続税 *1 終身保険、定期保険、収入保障保険など
妻/子 一時金:所得税(一時所得)
年金:所得税(雑所得)
贈与税 *1
満期保険金 夫/子/妻 一時金:所得税(一時所得) 年金:所得税(雑所得) 養老保険、学資保険など
夫/子/妻 妻/子 贈与税 *1
解約返戻金 夫/妻/子 一時金:所得税(一時所得) 終身保険、養老保険、学資保険など
個人年金 *2 一時金:所得税(一時所得) 年金:所得税(雑所得) 個人年金保険など
夫/妻 贈与税 *1

*1 年金形式で受け取る場合、2年目以降は所得税(雑所得)の課税もある

*2 被契約者が生存している場合

続いては、適用される税金の違いについて詳しくみてみましょう。

死亡保険金を受け取る場合の税金は?

被保険者が死亡した際に支払われる死亡保険金からみていきましょう。

契約者、被保険者、受取人の関係によって、相続税・所得税・贈与税のいずれかが適用されます。

死亡保険金が発生する主な生命保険の種類

終身保険、定期保険、収入保障保険など

パターン 契約者 被保険者 受取人 税金の種類
A 妻/子 相続税
B 妻/子 一時金:所得税(一時所得)
年金:所得税(雑所得)
C 贈与税

契約者=被保険者、受取人のみ異なる場合の税金はどうなる?

保険料を支払う契約者と被保険者が同一の場合、死亡保険金には相続税が適用されます。受取人が被保険者の相続人であれば相続により取得したもの、相続人以外であれば遺贈により取得したものとみなされます。

<例1>

◎前提
保険契約者:夫
被保険者:夫
保険受取人:妻

・夫の法定相続人は妻との2人
・相続税法上の生命保険金の非課税枠は500万円×法定相続人の人数(2人)=1000万円
・受け取った死亡保険金:800万円

◎課税所得
税金がかかる金額(相続税の課税価格):0円
死亡保険金800万円-非課税金額1000万円=0円

このケースは受け取った死亡保険金が生命保険金の非課税枠より少なかったため、受け取った800万円の死亡保険金に対して、税金はかかりません。

<例2>

◎前提
保険契約者:夫
被保険者:夫
保険受取人:妻

・夫の法定相続人は妻と子の2人
・相続税法上の生命保険金の非課税枠は500万円×法定相続人の人数(2人)=1000万円
・受け取った死亡保険金:1500万円

◎課税所得
税金がかかる金額(相続税の課税価格):500万円
死亡保険金1500万円-非課税金額1000万円=500万円

このケースは受け取った死亡保険金が生命保険金の非課税枠より多かったため、受け取った1500万円のうち、500万円については相続税の課税対象となります。

ただし、年金として受け取る場合、2年目以降は所得税(雑所得)も課税されます。

1年目に相続税で課税された評価額を上回る受取年金累計額から、保険料の一部を必要経費として差し引き、所定の掛け率で按分した額が、税金がかかる金額(雑所得)となります。

つまり課税のタイミングが被保険者が亡くなった時と年金受け取り時の2段階となります。

契約者=受取人、被保険者のみ異なる場合の税金はどうなる?

保険料を支払う契約者と受取人が同一の場合、死亡保険金には所得税が適用されます。一時金として受け取った場合は一時所得として、年金として受け取った場合は公的年金等以外の雑所得として課税されます。

<例>

◎前提
保険契約者:夫
被保険者:妻
保険受取人:夫

・受け取った死亡保険金(一時金受け取り):1000万円
・支払った保険料:200万円

◎課税所得
税金がかかる金額(所得税の一時所得):375万円
(死亡保険金1000万円-支払済保険料200万円-特別控除50万円*)×1/2=375万円

*同年に他に一時所得がないことを前提とします。

契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合の税金はどうなる?

保険料を支払う契約者・被保険者・受取人がすべて異なる場合、死亡保険金には贈与税が適用されます。このパターンにおける保険金は、亡くなった被保険者のお金ではなく保険料を支払った契約者のお金が、受取人に生前贈与されたとみなされます。

<例>

◎前提
保険契約者:夫
被保険者:妻
保険受取人:子

・受け取った死亡保険金(一時金受け取り):1000万円
・支払った保険料:200万円

◎課税所得
税金がかかる金額(贈与税の課税価格):890万円
(死亡保険金1000万円-贈与税の基礎控除110万円*)=890万円

*同年に他に贈与がないことを前提とします。

ただし、年金として受け取る場合、2年目以降は所得税(雑所得)も課税されます。

1年目に贈与税で課税された評価額を上回る受取年金累計額から、保険料の一部を必要経費として差し引き、所定の掛け率で按分した額が、税金がかかる金額(雑所得)となります。

課税のタイミングが贈与時と年金受け取り時の2段階となります。

満期保険金を受け取る場合の税金は?

生命保険契約が満期を迎えた際に支払われる満期保険金には、所得税・贈与税のいずれかが適用されます。満期保険金では、契約者と受取人が同一か別人かで税金の種類を判断します。

なお、養老保険で保険料を一時払いをして保険期間が5年以下のものには源泉分離課税が適用されるため、所得税・贈与税は課税されません。

満期保険金が発生する主な生命保険の種類

養老保険、学資保険など

パターン 契約者 被保険者 受取人 税金の種類
A 夫/妻/子 一時金:所得税(一時所得)
年金:所得税(雑所得)
B 夫/妻/子 妻/子 贈与税

契約者と受取人が同一の場合の税金はどうなる?

保険料を支払う契約者と受取人が同一の場合、満期保険金には所得税が適用されます。一時金として受け取った場合は一時所得として、年金として受け取った場合は公的年金等以外の雑所得として課税されます。

<例>

(1)一時金として受け取る場合

◎前提
保険契約者:夫
被保険者:妻
保険受取人:夫

・受け取った満期保険金(一時金受け取り):300万円
・支払った保険料合計額:280万円

◎課税所得
税金がかかる金額(所得税の一時所得):0万円
(満期保険金300万円-支払済保険料280万円-特別控除50万円*)×1/2=0万円

*同年に他に一時所得がないことを前提とします。

<例>

(2)年金として受け取る場合

◎前提
保険契約者:夫
被保険者:妻
保険受取人:夫

・受け取った満期保険金(10年間年金受け取り):30万円/年
・年間受取年金額に対応する支払保険料:28万円

◎課税所得
税金がかかる金額(所得税の雑所得):2万円
(満期保険金30万円/年-支払済保険料28万円)=2万円

契約者と受取人が異なる場合の税金はどうなる?

保険料を支払う契約者と受取人が異なる場合、満期保険金には贈与税が適用されます。ただし、年金として受け取る場合、2年目以降は所得税(雑所得)も課税されます。

一時金として受け取る場合

一時金として受け取る場合

◎前提
保険契約者:夫
被保険者:妻
保険受取人:子

・受け取った満期保険金(一時金受け取り):300万円
・支払った保険料合計額:280万円

◎課税所得
税金がかかる金額(贈与税の課税価格):190万円
(満期保険金300万円-贈与税の基礎控除110万円*)=190万円

*同年に他に贈与がないことを前提とします。

(2)年金として受け取る場合

◎前提
年金形式で受け取る場合の合計満期保険金額:330万円

◎課税所得
1年目の税金がかかる金額(贈与税の課税価格)=190万円
2年目以降税金がかかる金額(所得税の雑所得)=30万円-必要経費*
(総収入330万円-収入300万円)=30万円

*年金受取期間中の雑所得となる金額の合計金額。毎年の雑所得金額は必要経費を控除し、所定の掛け率で按分計算されます。

個人年金を受け取る場合の税金は?

個人年金保険などで受け取れる個人年金には、所得税・贈与税のいずれかが適用されます。満期保険金と同様に、契約者と受取人が同一か別人かで税金の種類を判断します。

パターン 契約者 被保険者 受取人 税金の種類
A 一時金:所得税(一時所得)
年金:所得税(雑所得)
B 夫/妻 贈与税

契約者と受取人が同一の場合の税金

保険料を支払う契約者と受取人が同一の場合、個人年金には所得税が適用されます。一時金として受け取った場合は一時所得として、年金として受け取った場合は公的年金等以外の雑所得として課税されます。

<例>

◎前提
契約者=受取人、被保険者は生存しているケース
年金額:60万円(10年間で600万円)/一括受け取りの場合は570万円
支払保険料:15,000円/月、30年間(総支払保険料540万円)

一時金として受け取る場合

◎課税所得
税金がかかる金額(所得税の一時所得)=0円
(総収入金額570万円―総支払保険料540万円-特別控除50万円)=0円

利益として30万円発生していますが、特別控除が50万円あるので、税金がかかる金額は0円となり、税金は発生しません。

年金として受け取る場合

◎課税所得

税金がかかる金額(所得税の雑所得)=6万円
1.必要経費:60万円×540万円/600万円=54万円
2.雑所得:60万円-54万円=6万円

契約者と受取人が異なる場合の税金

保険料を支払う契約者と受取人が異なる場合、個人年金には贈与税が適用されます。ただし、一時金ではなく年金形式で受け取る場合、2年目以降は所得税(雑所得)も課税されます。

<例>

◎前提
年金額:60万円/年(10年間で600万円)/一括受け取りの場合は570万円
支払保険料:15,000円/月、30年間(総支払保険料540万円)

一時金として受け取る場合

◎課税所得
税金がかかる金額(贈与税の課税価格)=460万円
(収入570万円-贈与税の基礎控除110万円)=460万円

年金として受け取る場合

◎課税所得
1年目の税金がかかる金額(贈与税の課税価格)=460万円
2年目以降に税金がかかる金額(所得税の雑所得)=30万円-必要経費*
(総収入600万円-収入570万円)=30万円

*年金受取期間中の雑所得となる金額の合計金額。毎年の雑所得金額は必要経費を控除し、所定の掛け率で按分計算されます。

解約返戻金を受け取る場合の税金は?

生命保険を解約した際に受け取る解約返戻金は、原則として契約者(保険料負担者)に支払われます。契約者と受取人が同一になるため、所得税(一時所得)が適用されます。

<例>

◎前提
保険契約者:夫
被保険者:妻
保険受取人:夫

・受け取った解約返戻金(一時金受け取り):110万円
・支払った保険料合計額:95万円

◎課税所得
税金がかかる金額(所得税の一時所得):0円
考え方:(解約返戻金110万円-支払済保険料95万円-特別控除50万円*)×1/2=0円

*同年に他に一時所得がないことを前提とします。

なお、養老保険の保険料を一時払いをして5年以内に解約されたものについては源泉分離課税が適用されるため、所得税は課税されません。

契約者 被保険者 受取人 税金の種類
夫/妻 一時金:所得税(一時所得)

非課税となる保険金・給付金もある

生命保険契約に基づく保険金・給付金の中には、非課税となるものもあります。主に病気やけがなどで受け取るものが該当します。

非課税となる保険金・給付金の例

  • 入院給付金
  • 手術給付金
  • 通院給付金
  • 疾病(災害)療養給付金
  • 障害保険金(給付金)
  • 特定損傷給付金
  • がん診断給付金
  • 特定疾病(三大疾病)保険金
  • 先進医療給付金
  • 高度障害保険金(給付金)
  • リビング・ニーズ特約保険金
  • 介護保険金(一時金・年金) など

参照:税金に関するQ&A|公益財団法人 生命保険文化センター

課税対象額の計算方法

契約形態によって税金の種類が変わることを理解しておけば、受け取った保険金に対する税の額を抑えられます。

相続税・所得税・贈与税のどれを適用させると税金対策につながるのかは、受取人の収入や相続財産額などによって異なるため、自分自身や家族の状況に合わせてよく検討しましょう。

ここでは、課税対象額を計算する方法をご紹介します。

相続税の課税対象額

相続税は、保険金から生命保険金の非課税枠もしくは基礎控除額を差し引いた金額が課税の対象となります。それぞれの額は法定相続人の数によって変わります。

保険金が生命保険金の非課税枠におさまる場合は、相続税はかかりません。この限度額を超える場合でも、保険金を含めた相続財産額が基礎控除額を下回れば、相続税は発生しません。

  • 生命保険金の非課税枠:500万円 × 法定相続人の数
  • 基礎控除額:3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

所得税の課税対象額

一時所得として計算する場合、受け取った金額から払い込んだ保険料の額と、一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額の2分の1が課税の対象となります。

(保険金 - 払込保険料 - 特別控除額50万円)× 2分の1

雑所得として計算する場合、その年中に受け取った金額から、それに対応する分の払い込んだ保険料の額を差し引いた金額が課税の対象となります。なお、年金は原則として所得税が源泉徴収されます。

その年中に受け取った保険金 - 払込保険料

贈与税の課税対象額

受け取った保険金から、基礎控除額110万円を差し引いた金額が課税の対象となります。

保険金 - 基礎控除額110万円

第三者も保険金の受取人に設定できる?

保険金受取人に指定できるのは、基本的には「法律上の配偶者か2親等以内の血縁者」です。

しかし、一部の保険会社では、婚約者・内縁関係・事実婚・同性のパートナーなどを受取人に指定できるケースもあります。

生命保険は「万が一の際に残された家族を守る」という目的を持つ商品です。ライフスタイルの多様化にともない、戸籍上は他人とみなされるパートナーでも、事実上は生活を共にしてきた「家族」であれば、保険金受取人としても認める考えが保険会社でも広まりつつあります。

保険金の受取人は複数指定できる

保険金受取人は、親族であっても、内縁者の方や事実婚の方、同性パートナーなどの親族でなくても、複数人を指定することも可能です。受取人を複数指定する際は、それぞれが受け取る割合(持ち分)を指定する必要があります。

ただし、受取人を複数指定するときには注意しましょう。

受取人を複数指定する際の注意点

  • 保険金請求の手続きには受取人全員の署名や書類が必要である
  • 保険商品によっては、受取人全員分がまとめて代表者の口座に振り込まれるものもある

保険金を請求する際、受取人全員の署名や書類が必要であるため、1人でも書類がそろわないと受け取りまでに時間がかかってしまうこともあります。

また、保険によっては受取人の代表者の口座にまとめて保険金が振り込まれるため、受け取りの代表者が各人への振り込みを拒否してトラブルに発展してしまうこともあります。

ワンポイントアドバイス

こうしたリスクやトラブルを避けたいという場合には、生命保険を複数契約するという選択肢もあります。契約の手間は大きくなりますが、複数契約してそれぞれに異なる受取人を指定しておく、といった方法もあります。

親族以外を保険金の受取人にする場合の条件

親族以外が保険金受取人になるには、保険会社の規程により一定の条件を満たさなければならないとされています。たとえば、下記のような条件です。

<親族以外を受取人にする場合の条件の例>

  • どちらにも法律上の配偶者がいない
  • 一定の期間以上同居している
  • 生計を一にしている

自治体が独自に発行する「パートナーシップ証明書」や保険会社所定のパートナーを証明する書類、戸籍謄本、住民票などの提出を求められたり、訪問や面談が実施されたりすることもあります。

親族以外を保険金の受取人とする場合の注意点

こうした関係性のパートナーを保険金受取人とする際には、下記のような点に注意しましょう。

親族以外を保険金の受取人とする場合の注意点

  • 生命保険料控除が使えない
  • 相続税の非課税枠が使えない

親族以外を受取人に設定すると、毎年の年末調整での生命保険料控除の対象から外れてしまいます。これは、生命保険料控除は「保険金の受取人がすべて、自分または自分の配偶者などの親族である場合」という原則があるからです。

また、相続税の非課税枠は法定相続人に用意されているものです。法定相続人ではない者が受取人になった場合、保険金にかかる相続税の非課税枠は適用されません。

保険会社によっては、親族以外の人を受取人に指定する際は死亡保険金額に上限を設けている場合もあります。対応は保険会社ごとに異なりますので、事前に確認しておくとよいでしょう。

生命保険金の受取人は変更できる?受取人の変更方法と注意点

保険金受取人は、保険金の支払いが発生する前であれば、契約途中であっても変更が可能です。手続きは、被保険者の同意を得たうえで契約者が行います。

受取人の変更が生じるよくある事例

保険金受取人を変更するタイミングとして多いのは、家族の人数が変化した時です。結婚したときは配偶者へ、子どもが生まれたときは子どもへ、離婚したときは配偶者から親や兄弟など親族へと変更するのが一般的です。

また、被保険者よりも先に受取人が亡くなった場合は、受取人の法定相続人が受取人の地位を引き継ぐ形となります。たとえば子どものいない夫婦で、受取人の妻が被保険者の夫より先に亡くなると、新たな受取人は妻の親や兄弟となります。想定外の相手が受取人となってしまう場合、変更手続きをする必要があります。

<保険金受取人を変更するタイミングの例>

  • 結婚したとき
  • 子どもが生まれたとき
  • 離婚したとき
  • 保険金受取人が被保険者よりも先に亡くなってしまったとき

保険金の受取人を変更する際の注意点

受取人の変更には被保険者の同意が必要ですが、変更前の受取人の同意は必要ありません。そのため、たとえば「親が亡くなったので子である自分が保険金を受け取れると思ったら、知らない間に受取人から外されていた」として親族間でトラブルに発展することも考えられます。

妻の死後に夫の保険についての保険金受取人を子ども2人へ変更するようなケースでは、受け取る割合の指定に偏りがあると、兄弟間でのトラブルにつながるでしょう。保険金の受け取りに関しては、親子・兄弟の間に感情的なしこりを残してしまわないよう、よく検討した上で設定するべきだといえます。

保険金の受取人変更方法の一般的な流れ

  1. 契約者が被保険者の同意を得た上で、新たな受取人を決める
  2. 証券番号がわかるように、保険証券を手元に用意する
  3. 保険会社のコールセンターや窓口などに連絡する
  4. 受取人変更の手続きに必要な書類を取り寄せる
  5. 書類に必要事項を記入の上、変更手続きに必要な書類を添付して提出する
  6. 保険会社から変更明細書が届いたら、内容を確認して完了

詳しい方法や必要な書類は保険会社によって異なりますので、各保険会社へ問い合わせてください。中には、契約者専用Webサイトで手続きを完了できる保険会社もあります。

この記事のまとめ

生命保険金の受取人とは、被保険者に保険金の支払いが発生した際に、保険金を受け取れる人のことです。誰を受取人とするべきなのかは家庭の状況によって異なるため、よく検討する必要があります。

  • 契約者と被保険者、受取人の関係によって支払う税金の種類が変わるので契約前に要確認
  • 契約者と保険料を支払う人が異なる場合は、保険料を支払っている人が税制上の契約者となる
  • 親族以外でも受取人にはなれる保険はある。ただし保険金に上限が設けられることもある
  • 受取人の変更は契約者と被保険者の同意があれば可能

生命保険をうまく活用すれば、自分に万が一のことがあった際に家族の生活を守れるだけでなく、税負担を軽くすることもできます。契約者・被保険者・保険金受取人の関係を理解して、より良い方法で万が一のときに備えられるようにしましょう。

監修者 監修者

大矢 亜希子

税理士、AFP認定者・2級ファイナンシャルプランニング技能士

大矢 亜希子

オーキッドFP税理士事務所代表、(株)FPフローリスト所属FP。外資系税理士法人、海外の日系会計事務所等の勤務を経て、2019年に独立開業。税理士として、15年以上中小企業や大手企業の税務会計業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(FP)として、経営者の事業とプライベートのお金の流れを整理するお手伝いを数多く経験してきており、現在はFP税理士として、主に女性経営者の個人的なお金の相談や相続の相談に力を入れている。また、海外に滞在していた経験を生かし、海外在住の方のライフプラン相談業務にも積極的に携わっている。

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