生命保険の満期とは?満期保険金の受取や税金についても解説
更新日:23.01.10
この記事では
・そもそも「満期」および「満期保険金」とは何か
・満期保険金を受け取れる生命保険はどんな保険か
・満期保険金を受け取る際にかかる税金
について解説をしていきます。
掛け捨ての保険にとっての満期は、保険の更新や乗り換えを検討するタイミングでもあります。また、満期保険金を話すにあたっては税金の知識も必要になってくるので、もしすぐに自分の状況が知りたいという方は一度は専門家に相談してみることがオススメです。

保険の「満期」とは?
生命保険に加入するときには、必ず「満期」を確認しましょう。
満期がわかれば「保障がいつまで続くのか」「保険料の支払いはいつまでか」がわかるからです。
生命保険の満期について深堀りして解説しましょう。
満期とは「保険期間が終わるタイミング」
保険契約には満期が設定されています。満期とは「保険期間が終わるタイミング」のことです。
保険期間とは保険が始まってから終わるまでの期間のことをいうため、保障が終わるタイミングとも表現できます。
基本的に満期を迎えることで加入している保険の契約は終了し、保険の効力はなくなります。
さらに「満期保険金」とは、満期を迎えたときに受け取れる保険金をいいます。
満期保険金が受け取れる代表的な生命保険に、「養老保険」が挙げられます。すべての生命保険で満期保険金を受け取れるわけではない点に注意しておきましょう。
また、生命保険の中には満期がないタイプもあります。例えば、死亡保障が一生涯続く「終身保険」の場合、満期を迎えることはありません。
生命保険が「定期型」か「貯蓄型」かで満期の意味合いが異なる
保険料が掛け捨ての「定期型」の生命保険や、「貯蓄型(積立型)」の生命保険には、基本的にどちらにも満期が設定されています。
ただし両者は、満期の意味合いがやや異なる点には注意しましょう。
契約時に定められている保険期間が終了するときが満期という点は同じですが、下記の点は異なります。
<満期の意味合いの違い>
- 定期型:継続のために保険契約を更新するとき
- 貯蓄型(積立型):保険料の払い込みが満了したとき
定期型の生命保険は、保険期間が10年・20年というように期間で区切られているのが特徴です。
保険を継続するなら満期のタイミングで更新する必要があります。
満期保険金がもらえる貯蓄型の生命保険として代表的な養老保険では、「保険期間が終了するタイミング=満期が来たタイミング」で保険料の払い込みも終了し、満期保険金を受け取ることができるのです。
解約返戻金との違いは?基本知識をチェック!
生命保険の中には、満期を迎えると受け取れる満期保険金に対して、保険を解約したタイミングで受け取れる「解約返戻金」というお金もあります。
ただし生命保険の種類によっては、払い込んだ保険料の総額より少ない解約返戻金額しか受け取れない可能性もあります。貯蓄型の生命保険の場合、解約返戻金が多くもらえる傾向があります。
加入している生命保険の解約返戻金が下記のどの種類に該当するか、解約返戻金額が多いのか少ないのかを確認してみましょう。
解約返戻金の種類
- 従来型:保険料を多く払い込むほど解約返戻金も増える
- 低解約返戻金型:保険料の払込期間満了まで解約返戻金が抑えられている、払込期間満了後に解約返戻金が増える
- 無解約返戻金型:解約返戻金がない掛け捨てタイプ
契約者(保険料負担者)が受け取った解約返戻金は、一時所得として所得税・住民税が課税されます。
一時所得は以下の計算式で求めます。
一時所得
=(解約返戻金-払込保険料総額-特別控除50万円*)×1/2
ただし、解約返戻金の金額よりも払込保険料の総額が多いときは税金がかからない場合があります。
また、5年満期の一時払い養老保険などの「金融類似商品」の場合、解約返戻金を受け取ったときの差益に対して、20.315%の所得税・住民税が源泉徴収課税されます。
なお、契約者と保険料負担者が異なる場合、解約返戻金は保険料負担者から契約者(解約返戻金受取人)へ贈与があったとみなされ、解約返戻金相当額が贈与税の対象となります。
解約返戻金がいくらもらえるかは保険会社に問い合わせて
受け取れる解約返戻金額は、保険の種類や加入期間などによって異なるため、一概にはいえません。
正確な金額を知るには、契約している保険会社へ問い合わせましょう。
解約返戻金額の概算でも確認したいなら、「保険設計書」を見てみましょう。解約返戻金の目安額が記載されている場合があります。
なお、生命保険の加入直後の解約では、解約返戻金がほとんど出ないケースが多いです。
長年加入し続け満期直前になっていれば、払い込んだ保険料の総額より多い解約返戻金がもらえる可能性もあります。
解約のタイミングによって解約返戻金は異なるため、解約してもよいタイミングかどうかは、そのときどきで確認が必要です。
満期保険金をもらえる主な生命保険は?
満期保険金を受け取れる主な生命保険として、「養老保険」「学資保険」「生存給付金付定期保険」などが挙げられます。
<満期保険金を受け取れる生命保険の特徴>
生命保険 | 特徴 | 向いている人 |
---|---|---|
養老保険 | 定期保険の保障+貯蓄性 | ・掛け捨てに抵抗がある ・貯蓄も兼ねた保険に加入したい |
学資保険 | 設定した満期に満期保険金を受け取れる | ・教育資金を貯めたい ・子どもの万が一に備えたい |
生存給付金付定期保険 | 定期保険の保障+生存給付金 | ・ごほうびのようにお金を受け取りたい |
3種類の生命保険について、それぞれの特徴を見ていきましょう。
満期か死亡時かで保険金がもらえる「養老保険」
養老保険とは、被保険者が死亡・高度障害状態になったときに死亡・高度障害保険金が、満期を迎えた時に支払われる満期保険金が受け取れる生命保険です。
死亡・高度障害保険金と満期保険金が同額なのが特徴です。
「保険料を掛け捨てにしたくない」「満期を迎えたときにまとまった金額を受け取りたい」と考えている人に向いています。

養老保険に加入するときには「満期保険金額」と「払込保険料総額」をよく比較しましょう。
養老保険の中には、払込保険料総額の方が満期保険金額よりも高くなる、いわゆる「元本割れ」の商品もあります。
満期保険金額が払込保険料総額を上回っていることが養老保険の商品選びにおける重要なポイントになります。
子どもの教育資金を積み立てられる「学資保険」
主に子どもの教育資金を貯める目的で加入するのが「学資保険」です。
満期を迎えたときに満期保険金を受け取れるほか、契約内容によっては中学・高校などへ入学時に「祝金」も受け取れます。
学資保険には、貯蓄を目的とした「貯蓄型」と、親の死亡時や子どものけが・入院・死亡などに備えられる「保障型」があります。
「子どもの教育資金作りをしたい」「子どもの万が一に備えるため保障をつけたい」と考えている人に向いているでしょう。
<学資保険の仕組み>

養老保険と同様に、学資保険においても、「受取金額」より「払込保険料総額」の方が上回る「元本割れ」をする商品もあります。
満期保険金と祝金を合わせた受取総額と払込保険料総額を比較して、受取総額が払込保険料総額を上回る商品を選ぶようにしましょう。
生存することで給付金がもらえる「生存給付金付定期保険」
保険期間中の死亡や高度障害に備えられる定期保険の一種が「生存給付金付定期保険」です。
万が一の保障に備えられるだけでなく、定期的に「生存給付金」を受け取れます。生存していれば満期時にも生存給付金を受け取れる保険です。
「死亡保障だけでなく、定期的にごほうび的なまとまった金額を受け取りたい」「定期保険に加入したいけれど、掛け捨てには抵抗がある」という人にも向いている内容です。
<生存給付金付定期保険の仕組み>

満期保険金の受け取りでかかる税金は?
満期保険金を受け取るときには、ケースごとに異なる税金がかかります。
「契約者(保険料負担者)と受取人が同一のとき」には一時所得として所得税および住民税が、「契約者(保険料負担者)と受取人が異なるとき」には贈与税がかかります。
満期保険金にかかる所得税および贈与税の税額はいくらになるのか、計算方法と具体例を解説していきましょう。
所得税がかかるケース:契約者と受取人が同一人物のとき
例えば、以下のようなケースで考えてみます。
〔例〕満期保険金:600万円、払込保険料総額:450万円、給与所得:500万円、所得控除(基礎控除等60万円)
まず、一時所得の計算をします。
(満期保険金600万円-払込保険料総額450万円)-特別控除50万円×1/2=50万円
次に、総所得金額を求めます。
一時所得50万円+給与所得500万円=550万円
課税される所得金額、つまり課税所得金額を求めます。
総所得金額550万円-所得控除60万円=490万円
最後に、下記の<所得税の速見表>にあてはめて、所得税の税額計算を行います。
課税される所得金額490万円×20%-427,500円=552,500円
<所得税の早見表>
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
なお、満期保険金の受け取りがなかった場合の所得税の税額は453,500円(=(500万円-60万円)×20%-427,000円)となるため、満期保険金を受け取ったことにより、差額の10万円を確定申告において、納税する必要があります。
贈与税がかかるケース:契約者と受取人が異なるとき
契約者と受取人が異なるケースでは、満期保険金は契約者から受取人へ「贈与」されたものとみなされます。
そのため受取人は受け取った満期保険金に対して「贈与税」を納めなければいけません。
贈与税の課税価格は以下の計算式で求めます。
贈与税の課税価格=満期保険金-基礎控除額110万円
契約者と受取人が異なるケースでは、満期保険金は契約者から受取人へ「贈与」されたものとみなされます。
そのため受取人は受け取った満期保険金に対して「贈与税」を納めなければいけません。
贈与税の課税価格は以下の計算式で求めます。
贈与税の課税価格=満期保険金-基礎控除額110万円
例えば満期保険金500万円を受け取ったなら、「500万円-110万円=390万円」が課税価格となります。 この課税価格に税率を掛けて、控除額を差し引くと贈与税を求められます。
贈与税は贈与者との関係によって税率が異なる仕組みになっています。
父母や祖父母から贈与を受けた1月1日において20歳以上の子どもや孫への贈与なら「特例贈与」、夫婦や兄弟姉妹などその他の関係性であれば「一般贈与」の税率が適用されます。
<特例贈与の場合>
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円より多い金額 | 55% | 640万円 |
先の例で贈与者が親、受取人が20歳以上の子どもの場合、贈与税額は以下の通りです。
390万円×15%-10万円=48万5000円
<一般贈与の場合>
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ー |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円より多い金額 | 55% | 400万円 |
贈与者が夫、受取人が妻であれば、贈与税額は以下の通りです。
390万円×20%-25万円=53万円
一般贈与より特例贈与の方が、同じ金額の満期保険金でも贈与税額は少なくなる傾向にあります。
満期まで生命保険に加入し続けるべき?
生命保険は満期まで加入し続けるべきなのでしょうか?
満期保険金を受け取りたいと考えていても、保険料の負担が大き過ぎるときには、解約した方がいいかもしれません。
払込保険料総額より解約返戻金が多いなら、その時点で解約するのも選択肢の一つです。
ただし、解約までの期間によっては、解約時に「解約控除」を差し引かれる保険もあるので注意が必要です。
家計の状況や生命保険の加入状況を考慮し、満期まで加入し続けるべきか判断しましょう。
保険料が家計を圧迫するなら見直しが必要
保険は必要な保障を過不足なく付けるのが適切です。もし保険料が家計を圧迫する状況なら、保険金額を減額したり、満期前の解約を検討する必要があるでしょう。
また、保険料の払い込みを中止して、その時点での解約返戻金をもとに、保険期間をそのままにした保険金額の少ない保険に変更する「払済保険」にするのも一つの選択肢です。
いくら満期時に満期保険金を受け取れるといっても、保険料負担を重くして家計を圧迫するまで生命保険に加入し続ける必要はありません。
必要以上の保障の保険に加入しているなら、適切な内容になるよう見直すのがよいでしょう。
解約返戻金額が払込保険料総額以上なら解約も考えてよい
養老保険を始めとする貯蓄型の生命保険は、満期より早い段階で、払込保険料総額より解約返戻金額が上回るケースがあります。
満期が近づいてきているなら、一度解約返戻金と払込保険料総額を比較してみましょう。
もし解約返戻金の金額がこれまでに支払った保険料の総額を上回るなら、元本割れに陥ることはありません。まとまった資金が必要なタイミングであれば、その時点で解約するのも一つの方法です。
・当サイトは、各保険の概要についてご紹介したものです。取扱商品、各保険の名称や補償(保障)内容等は引受保険会社によって異なりますので、ご契約にあたっては、必ず各引受保険会社の「重要事項説明書」をよくご確認ください。ご不明な点等がある場合には、代理店までお問い合わせください。
・このご案内には保険商品内容のすべてが記載されているわけではありませんので、あくまで参考情報としてご利用ください。また、必ず各引受保険会社の「契約概要」やパンフレット等で保険商品全般についてご確認ください。
・お引受内容により保険料が異なる場合がありますので、実際に適用される保険料については代理店または引受保険会社にお問い合わせください。
この記事のまとめ
生命保険の満期とは、保険期間の終了するタイミングをいいます。
満期まで加入することで、満期保険金を受け取れる商品もあります。
<満期保険金を受け取れる代表的な生命保険>
- 養老保険
- 学資保険
- 生存給付金付定期保険
これらの生命保険で満期保険金を受け取るときには、税金がかかる可能性がある点に注意しましょう。
契約者(保険料負担者)と受取人が同一の契約において、満期保険金の受取金額が、払込保険料総額より50万円超の場合は、「一時所得」が発生することになり、「所得税および住民税」がかかります。
また、契約者(保険料負担者)と受取人が異なる場合は、満期保険金が「贈与税」の対象となります。
生命保険への加入を検討しているのであれば、生命保険や満期、そして満期保険金についても理解した上で加入を考えましょう。
監修者

税理士、AFP認定者・2級ファイナンシャルプランニング技能士
オーキッドFP税理士事務所代表、(株)FPフローリスト所属FP。外資系税理士法人、海外の日系会計事務所等の勤務を経て、2019年に独立開業。税理士として、15年以上中小企業や大手企業の税務会計業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(FP)として、経営者の事業とプライベートのお金の流れを整理するお手伝いを数多く経験してきており、現在はFP税理士として、主に女性経営者の個人的なお金の相談や相続の相談に力を入れている。また、海外に滞在していた経験を生かし、海外在住の方のライフプラン相談業務にも積極的に携わっている。
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