国民年金と厚生年金の違いとは?公的年金の基礎知識を詳しく解説

そもそも公的年金ってどんな制度なの?
国民年金と厚生年金の違いを教えて!
公的年金は、日本で暮らす人々の老後のセカンドライフを支える大切な柱です。国民年金や厚生年金か、年金の種類の違いによって、納付する保険料や受け取れる年金受給額は変わります。

年金がいくらもらえるのか把握することで、老後の生活を具体的に考えられるようになります。公的年金の基礎知識から、老後資金は公的年金の受給額だけで十分なのか、もし不足する場合はどのように対策すればよいのか、詳しく解説していきます。

国民年金と厚生年金の違いは?公的年金の基本知識を解説

公的年金には「国民年金」と「厚生年金」があります。公的年金の基礎知識と、国民年金と厚生年金の違いについて解説しましょう。

公的年金とは国が運営する年金制度

公的年金とは、国が運営する年金制度のことで、「国民年金」と「厚生年金」の2種類があります。老後の生活を送るための資金のほか、障害を抱えて働けなくなったときや加入者に万が一のことが起きたときの生活を支えるのが、公的年金の役割です。

元気に働くことが難しくなった高齢者を国民や被用者といった大きな集団で支えるのが社会保険としての年金の役割です。また、個々人の寿命が事前には分からない中で、思いがけない長寿に備えるという面もあります。

引用:公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構 年金の役割・機能について

公的年金は2階建ての構造になっており、1階部分は「国民年金(基礎年金)」、2階にあたる上乗せ部分は「厚生年金」となっています。

2階部分
(厚生年金)
- -
1階部分
(国民年金)
分類 第1号被保険者 第2号被保険者 第3号被保険者
職業 自営業・学生など 会社員・公務員など 第2号被保険者に扶養される配偶者
納付 個別に納付 勤務先が納付(保険料は企業と加入者で折半) 保険料の納付不要(配偶者の加入する年金制度が負担)

その人の職業等によって「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」に分類され、加入する年金制度と保険料の納め方が変わります。

*なお、以前は公務員や私立学校教職員などが加入する共済年金がありましたが、2015年10月に厚生年金に一元化されました。

国民年金と厚生年金の違い|対象者や老後に受け取れる年金の種類・条件が異なる

同じ公的年金である国民年金と厚生年金にはどのような違いがあるのでしょうか。

国民年金は「日本国内に住所がある、20歳以上60歳未満のすべての人」が加入するものです。

厚生年金は「会社員や公務員など、事業所に雇用される人」が国民年金(基礎年金)に上乗せで加入する年金です。厚生年金に加入する人は、自動的に国民年金にも加入することになります。なお、厚生年金の加入者が納付する保険料には、国民年金の保険料の分が含まれています。

老後になると、国民年金のみの加入者は、国民年金から支給される「老齢基礎年金」を、厚生年金に加入したことがある人は、「老齢基礎年金」に加えて厚生年金から支給される「老齢厚生年金」を受け取れます。この2つの年金を合わせて「老齢年金」と呼ぶこともあります。

老齢年金を受け取る条件は、国民年金(老齢基礎年金)の場合は「10年以上の受給資格期間」が、厚生年金の場合は「老齢基礎年金の受給資格期間があり、厚生年金の加入期間が1ヶ月以上」が必要です。

受給資格期間とは、「保険料を納めた期間(厚生年金や共済組合等の加入期間を含む)」「保険料を免除された期間」などを合算した期間をいいます。

どうしても受給資格期間が10年に満たない場合、60歳から70歳までの間に任意で国民年金に加入して、10年に達するまで保険料を納めて受給資格期間を満たすことが可能です。

<加入する人(被保険者)>

  • 国民年金:原則として20歳以上60歳未満のすべての人
    第1号被保険者(自営業者、自営業世帯の配偶者、学生、無職など)
    第2号被保険者(会社員、公務員など厚生年金加入者)
    第3号被保険者(第2号被保険者に扶養される配偶者)
  • 厚生年金:会社員や公務員など、事業所に雇用される70歳未満の人

<老後に受け取れる年金の種類>

  • 国民年金のみに加入していた人:老齢基礎年金
  • 厚生年金に加入したことがある人:老齢基礎年金+老齢厚生年金

<老後に年金を受け取る条件>

  • 国民年金:10年以上の受給資格期間が必要
  • 厚生年金:老齢基礎年金の10年以上の受給資格期間+厚生年金の加入期間が1ヶ月以上必要

国民年金と厚生年金の保険料・年金受給額の違いは?

国民年金と厚生年金とでは、納付する保険料や受け取れる年金の額にも違いがあります。具体的な事例を見ながらチェックしていきましょう。

種類 国民年金 厚生年金
保険料 月額1万6,610円(2021年度) 給与・賞与の9.15%(同額を勤務先が負担)
納付方法 個別に納付 給与・賞与から天引き
支払期間 原則、20歳から60歳の40年間 在職中 *1
年金受給額 満額で78万900円/年(2021年度) 男性 約206万円
女性 約131万円
(65歳以上の平均額) *2

*1...20歳未満・60歳以上も該当、最長70歳まで

*2...厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」/令和元年度

国民年金と厚生年金で納付する保険料はいくら違う?

国民年金の保険料は年度によって異なり、物価や賃金の伸びにあわせて毎年4月分からの額が改定されます。国民年金保険料の額は一律で、2021年度は月額1万6,610円です。

国民年金保険料を支払うのは自営業者や学生などの第1号被保険者です。保険料の納付は個別に銀行引き落としやクレジットカードなどで行います。

厚生年金の保険料は、勤務先と被保険者(従業員)の両者が折半して納付します。保険料額は月給・賞与の18.3%で、その半分の9.15%が被保険者の負担額です。対象となるのは会社員や公務員など、厚生年金の被保険者の保険料は給与・賞与から天引きされ、勤務先が納付します。

国民年金と厚生年金の保険料納付期間に違いはある?

国民年金の保険料は、20歳から60歳に達するまでの40年間支払うのが原則です。

所得が少ない場合や学生など保険料を納めるのが困難な場合は、手続きを行えば保険料の免除制度や納付猶予制度を利用できます。免除や納付猶予が承認された期間は、受給資格期間に算入されます。

厚生年金の場合は国民年金と異なり、20歳未満や60歳以上(最長70歳まで)の方も在職中であれば保険料を納付する必要があります。

国民年金と厚生年金で老後に受け取れる年金受給額は違う?

国民年金の加入者が受け取れる「老齢基礎年金」は、2021年度の価格であれば満額で年78万900円です。

年金受給額は保険料納付済期間や免除期間などによって異なります。老齢基礎年金の満額を受け取れるのは、保険料を20歳から60歳になるまで40年納付した場合です。

厚生年金に加入したことがある人が受け取れるのは、「老齢基礎年金+老齢厚生年金」です。会社員の場合、受給平均額は65歳以上の男性で約206万円、女性で約131万円(厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」/令和元年度)となっています。

ただし、この金額は20年以上厚生年金に加入がある年金受給者の平均として厚生労働省が公表しているものであり、実際には加入期間や在職中の平均収入額・賞与額によって個人差があります。

【ケース別】国民年金・厚生年金の年金受給額

では、これから挙げるケースだと年金受給額はいくらになるのでしょうか? 具体的な事例をもとに年金受給額の目安を見てみましょう。

なおいずれのケースも、単身者で、かつ厚生年金加入期間はすべて平成15(2003)年4月以降、会社員としての月給(賞与含む)平均は35万円、定年退職は60歳、年金の受取開始年齢は65歳からとして計算します。

22歳から会社員として働き、厚生年金にずっと加入していた人

22歳から60歳まで会社員として勤めたとすると、厚生年金の加入期間は38年です。20~21歳までは国民年金のみ加入として計算します。このケースで受け取れる年金受給額の目安は月額約13.8万円、年額約165万円です。

会社員として厚生年金に20年、自営業者として国民年金に20年加入した人

厚生年金に20年、国民年金に20年加入していた場合、受け取れる年金受給額の目安は月額約10.3万円、年額約124万円です。

20歳から自営業者として国民年金にずっと加入していた人

厚生年金に加入した経歴がなく、20歳から60歳まで40年ずっと国民年金に加入していた場合、受け取れる年金受給額の目安は月額約6.5万円、年額約78万円です。

国民年金と厚生年金で年金の受給開始時期は違う?

国民年金・厚生年金ともに、年金の受給開始年齢は原則として65歳からと定められています。

また、65歳より前から年金を受け取る「繰上げ受給」や、66歳以降に受け取る「繰下げ受給」も可能です。

「繰上げ受給」をすると65歳より早く年金を受け取れますが、本来の年金受給額から請求をした時点に応じて減額され、その減額率は65歳を超えてもその後変わらないというデメリットがあるため注意が必要です。

老齢基礎年金の繰上げ受給による減額率

請求時の年齢 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳
0ヶ月 30.0% 24.0% 18.0% 12.0% 6.0%
1ヶ月 29.5% 23.5% 17.5% 11.5% 5.5%
2ヶ月 29.0% 23.0% 17.0% 11.0% 5.0%
3ヶ月 28.5% 22.5% 16.5% 10.5% 4.5%
4ヶ月 28.0% 22.0% 16.0% 10.0% 4.0%
5ヶ月 27.5% 21.5% 15.5% 9.5% 3.5%
6ヶ月 27.0% 21.0% 15.0% 9.0% 3.0%
7ヶ月 26.5% 20.5% 14.5% 8.5% 2.5%
8ヶ月 26.0% 20.0% 14.0% 8.0% 2.0%
9ヶ月 25.5% 19.5% 13.5% 7.5% 1.5%
10ヶ月 25.0% 19.0% 13.0% 7.0% 1.0%
11ヶ月 24.5% 18.5% 12.5% 6.5% 0.5%

*令和4(2022)年4月から、昭和37(1962)年4月2日以後生まれの人を対象に減額率が緩和される予定です。

反対に、65歳から受給せず66歳以降に年金の受給を遅らせる「繰下げ受給」を行うと、本来の受給額よりも加算された年金を受け取ることができます。

老齢基礎年金の繰下げ受給の増額率

請求時の年齢 66歳0ヶ月~
66歳11ヶ月
67歳0ヶ月~
67歳11ヶ月
68歳0ヶ月~
68歳11ヶ月
69歳0ヶ月~
69歳11ヶ月
70歳0ヶ月~
増額率 8.4%~16.1% 16.8%~24.5% 25.2%~32.9% 33.6%~41.3% 42.0%

*令和4(2022)年4月から、昭和27(1952)年4月2日以後生まれの人を対象に、10年(75歳まで)繰下げが可能となる予定です。

ちなみに、性別や生年月日などによっては、65歳前から厚生年金部分を先行して受けられる場合があります(「特別支給の老齢厚生年金」)。

公的年金を切り替える際の手続きと注意点

職業等を変えることによって、年金の切り替えが必要になることがあります。たとえば、会社員から自営業者になった場合は、厚生年金の加入者から国民年金の加入者に切り替える手続きをしなければなりません。

ここでは、公的年金を切り替える際の手続きや注意点について解説します。

厚生年金から国民年金に切り替える場合の手続き

会社員を辞めて個人事業主になる場合や、しばらく次の勤務先に所属しない場合、厚生年金から国民年金第1号被保険者への切り替えが必要です。

手続きは退職の翌日から14日以内に、住んでいる市区町村の役所・役場の国民年金担当窓口で行います。これを「種別変更」といいます。

厚生年金の被保険者資格は退職日の翌日に喪失し、厚生年金の保険料は資格喪失日が属する月の前月分まで納めます。それ以降は国民年金の保険料を自身で納めます。

会社員や公務員など第2号被保険者である配偶者の被扶養者になる場合は、配偶者の勤務先を通して書類を提出し、第3号被保険者になるための手続きが必要です。

国民年金から厚生年金の切り替える場合の手続き

就職して会社で厚生年金に加入する場合、手続きを行うのは勤務先の企業です。厚生年金への加入手続きは勤務先が年金事務所へ届け出ることで、自動的に行われます。

変更後の国民年金の保険料については厚生年金の保険料に含まれ、給料から天引きされますので、自身で国民年金の保険料を納付する必要はありません。

保険料を前もって納めていた場合は、納付する保険料に重複が生じます。このとき、還付の案内が後日届くので、それに従って手続きをすれば重複している分の保険料が戻ります。

公的年金に加入していると、老後の年金だけではなく「別の年金」も支給される

公的年金の加入者が受け取れるのは、老後に受け取る「老齢年金」だけではありません。

主に「遺族年金」と「障害年金」の2種類の年金が、一定の条件に該当すると支給されます。その条件や支給額について詳しく見ていきましょう。

公的年金加入者に万が一のときに遺族に支払われる「遺族年金」

「遺族年金」とは、国民年金または厚生年金の加入者・受給者が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた一定の遺族に支給される年金です。

亡くなった方の年金の加入状況や遺族の状況によって「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の一方、または両方の年金が支給されます。

遺族基礎年金

遺族基礎年金は、国民年金の加入者が亡くなった際に、亡くなった方によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取れる年金です。

この場合の「子」とは、18歳到達年度の末日(3月31日)まで(障害がある場合は20歳未満)の未婚の子をいいます。

遺族基礎年金の支給の対象となるのは、次の要件に当てはまる場合です。

遺族基礎年金の支給の対象

  • 国民年金の被保険者が死亡したとき
  • 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、かつ日本国内に住所がある方が死亡したとき
  • 老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき *
  • 老齢基礎年金の受給資格期間を満たした人が死亡したとき *

*保険料納付済期間・保険料免除期間・合算対象期間の合計が25年以上ある場合に限る

また、上の囲み内の「国民年金の被保険者が死亡したとき」と「国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、かつ日本国内に住所がある方が死亡したとき」の条件に該当して遺族基礎年金を受ける場合、支給には亡くなった人が保険料納付要件を満たしている必要があります。

現在は死亡日に65歳未満の場合、死亡日の前々月から直近1年間に保険料を滞納していなければ遺族基礎年金の支給が受けられるようになっています。

保険料の納付要件

  • 死亡日の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上、保険料が納付または免除されていること
  • 死亡日において65歳未満であり、その前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

年金額は78万900円+子の加算額です。子の加算額は第1子・第2子がそれぞれ22万4,700円、第3子以降は7万4,900円となっています。子が受け取る場合、加算額は第2子から加えられます。

支給される遺族基礎年金の額

  • 子どもが1人いる妻の場合:年額100万5,600円
  • 子どもが2人いる妻の場合:年額123万300円
  • 子どもが3人いる妻の場合:年額130万5,200円
  • 1人の子どもが受け取る場合:年額78万900円
  • 2人の子どもが受け取る場合:年額100万5,600円(子ども1人あたり50万2,800円)

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、厚生年金の加入者が亡くなった際に、遺族が受け取れる年金です。

対象者は遺族基礎年金よりも幅広く、死亡した方によって生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母が対象です。

ただし、子のいない30歳未満の妻は、5年間の有期給付となります。

子や孫は18歳到達年度の末日(3月31日)まで(障害がある場合は20歳未満)の未婚の子・孫をいいます。

夫・父母・祖父母は亡くなった人の死亡当時55歳以上だった場合のみ対象となり、受給開始は60歳からとなります。

遺族厚生年金の支給の対象となるのは、次の要件に当てはまる場合です。

遺族厚生年金の支給の対象

  • 厚生年金の被保険者である間に死亡したとき
  • 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがで、初診日から5年以内に死亡したとき
  • 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
  • 老齢厚生年金の受給権者が死亡したとき *
  • 老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人が死亡したとき *

*保険料納付済期間・保険料免除期間・合算対象期間の合計が25年以上ある場合に限る

上の囲み内の「厚生年金の被保険者である間に死亡したとき」と「厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがで、初診日から5年以内に死亡したとき」の条件に該当して遺族厚生年金を受ける場合、遺族基礎年金と同じく、支給には亡くなった人が保険料納付要件を満たしている必要があります。

現在は死亡日に65歳未満の場合、死亡日の前々月から直近1年間に保険料を滞納していなければ、遺族厚生年金の支給が受けられるようになっています。

保険料の納付要件

  • 死亡日の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上、保険料が納付または免除されていること
  • 死亡日において65歳未満であり、その前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

遺族厚生年金は、年金加入者の生前の平均給与や厚生年金の加入期間によって受け取れる額が異なります。

会社員として厚生年金に加入している夫が亡くなった場合、子どものいる妻には遺族厚生年金+遺族基礎年金が支給されます。その合計金額の目安は次の通りです。

<会社員の夫が死亡した場合>

  • 子どもが1人いる妻の場合:年額約151万9,000円
  • 子どもが2人いる妻の場合:年額約174万4,000円
  • 子どもが3人いる妻の場合:年額約181万9,000円

*夫の平均年収:500万円(平均標準報酬額41万6,667円)、厚生年金の加入期間:25年(2003年4月以降のみ加入)として計算

遺族年金の支給開始タイミングや支給額についてははこちらの記事で詳しく解説しています。

遺族年金とは?支給開始タイミングやいくら支給されるかわかりやすく解説

公的年金加入者が障害を負った状態になったときに支払われる「障害年金」

「障害年金」とは、病気やけがで生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取れる年金です。

年金の納付状況や障害等級によって「障害基礎年金」「障害厚生年金」「障害手当金」が支給されます。

障害等級の認定基準は国(厚生労働省)によって定められており、医師の診断書が必要です。

障害等級は1級から3級まであり、障害年金の対象となるのは「障害基礎年金」が1級から2級まで、「障害厚生年金」が1級から3級までとなっています。3級未満は一時金として「障害手当金」が支給される場合があります。

<障害等級の例>

1級 ・両上肢の機能に著しい障害を有するもの
・両下肢の機能に著しい障害を有するもの
・両眼の視力の和が0.04以下のもの(原則として矯正視力)
・両耳の聴力レベルが100デシベル以上のもの
など
2級 ・一上肢の機能に著しい障害を有するもの
・一下肢の機能に著しい障害を有するもの
・両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの(原則として矯正視力)
・両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの
など
3級 両眼の視力が0.1以下に減じたもの(原則として矯正視力)など
3級に達しないもの(障害手当金の対象) ・両眼の視力が0.6以下に減じたもの(原則として矯正視力)
・一眼の視力が0.1以下に減じたもの(原則として矯正視力)
・両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
・一耳の聴力が、耳殻に接しなければ大声による話を解することができない程度に減じたもの
・そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの
・鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
・脊柱の機能に障害を残すもの
など

障害基礎年金

「障害基礎年金」を受け取れるのは、国民年金(厚生年金や共済組合加入期間含む)に加入している間に障害の原因となった病気やけがについての初診日があり、一定以上の障害の状態にある人です。国民年金の対象とならない20歳未満で障害を負った方も対象とされています。

障害基礎年金を受ける人は、その障害の原因となった病気やけがの初診日の前日において、次のいずれかの保険料納付要件を満たしている必要があります。

ただし、公的年金制度に加入していない20歳以前に初診日がある場合は、納付要件はありません。

<保険料の納付要件>

  • 初診日の前々月までの加入期間の3分の2以上、保険料が納付または免除されていること
  • 初診日において65歳未満であり、その前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

受け取れる年金額は障害等級によって異なり、その計算式は次の通りです。

<障害基礎年金の金額>

  • 障害等級1級の場合:78万900円×1.25+子の加算*
  • 障害等級2級の場合:78万900円+子の加算
  • 障害等級3級の場合:なし

*子の加算については以下の通りで加算
第1子・第2子:各22万4,700円
第3子以降:7万4,900円

障害厚生年金

「障害厚生年金」を受け取れるのは、厚生年金に加入している間に障害の原因となった病気やけがについての初診日があり、一定以上の障害の状態にある人です。

その初診日の前日において、障害基礎年金と同様に次のいずれかの保険料納付要件を満たしている必要があります。

<保険料の納付要件>

  • 初診日の前々月までの公的年金の加入期間の3分の2以上、保険料が納付または免除されていること
  • 初診日において65歳未満であり、その前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

受け取れる年金額は障害等級と平均の給与、厚生年金の加入期間によって異なります。

詳しい計算式は割愛しますが、障害等級1級の場合は金額が1.25倍となる点は障害基礎年金と共通です。

また、1級、2級の場合は原則として障害基礎年金と同時に受けることができ、一定の条件を満たせば配偶者の加算がつく場合もあります(「加給年金」)。

3級の場合は最低保障額58万5,700円が設定されています。

また、障害の程度が軽い場合(障害等級3級未満)、一時金として「障害手当金」を受け取ることができます。初診日から5年以内に病気やけがが治ったうえで、一定の障害の状態があるかが判断基準となります。

国民年金と厚生年金以外で老後資金を備える方法

金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」による試算では、「老後の30年で約2,000万円が不足する」という結果が示されています。この「老後2000万円問題」でも議論されているように、公的年金だけで老後の生活資金を賄うのは難しいのが現状です。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年度)」によれば、夫婦2人の老後の生活費としては最低でも月平均22.1万円、ゆとりある生活を送るには平均36.1万円が必要と考えられています。

公的年金の支給額だけでは十分とはいえず、老後資金は自身で備えておく必要があります。

では、どのようにして老後に備えればよいのでしょうか。具体的な解決策を紹介します。

「年金の2階建てだけでなく3階建て」(私的年金)の上乗せを検討

老後の備えとしてまず検討したいのは、何といっても働けるだけ働いて勤労収入を得ることです。

現在は65歳まで勤務する人が増えており、70歳定年時代を見据えて、さらなる勤務延長も視野に入れている人も少なくありません。厚生年金に加入できれば年金受給額も多少なりとも増額されるので一石二鳥です。

また、繰下げ受給や国民年金の任意加入により公的年金を充実させることも検討しましょう。

これ以外には1つの方法として、公的年金の2階建てだけでなく、私的年金を上乗せして3階建てにすることも検討するとよいでしょう。

私的年金には、たとえば国民年金基金や企業型確定拠出年金、iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)、確定給付企業年金、個人年金保険などがあります。

種類 国民年金基金 企業型確定拠出年金 iDeCo
(イデコ/個人型確定拠出年金)
確定給付企業年金 個人年金保険
特徴 ・第1号被保険者や60歳以上65歳未満の方、海外居住で国民年金に任意加入している人が加入できる
・少ない掛け金で始められ、増減も可能
・掛け金は全額が所得控除される
・終身年金が基本
・企業が従業員の年金口座に掛け金を積み立て、従業員自ら年金資産の運用を行う仕組み
・従業員が自動的に加入する場合と、選択できる場合がある
・定年退職を迎える60歳以降に、一時金(退職金)もしくは年金形式で受け取る
・従業員が掛け金を上乗せする「マッチング拠出」ができる企業もある
・受取時は、退職所得控除や公的年金等控除の対象になる
・運用益は非課税
・自分で掛け金額や運用商品を選択して資産形成を進め、老後に年金を受け取る仕組み
・掛け金額は年に1回見直し・変更が可能
・掛け金は全額が所得控除される
・運用益は非課税
・企業が掛け金を拠出し、運用会社への委託や企業年金基金の管理によって資産運用・給付を行う
・従業員への給付を行うために実施する
・労使の合意があれば、比較的柔軟な制度設計が可能
・一定の年齢(60歳や65歳)まで保険料を積み立て、その積立金をもとに個人年金をもらう生命保険商品
・主に「確定年金」「有期年金」「終身年金」の3種類がある
・運用方法によって「定額年金」「変額年金」に分類される
・個人年金保険料控除の適用を受けられる
注意点 ・第2号・第3号被保険者は加入できない
・公的年金保険料の免除や納付猶予を受けていると加入できない
・任意で脱退できない
・制度がある企業の従業員だけが利用できる
・原則、60歳まで引き出せない
・掛け金の上限金額が決まっている
・掛け金は企業負担だが、運用の結果は従業員の自己責任
・原則、60歳まで引き出せない
・職業等に応じて掛け金の上限金額が決まっている
・運用商品次第では元本割れのリスクがある
・受け取り方法によっては課税されることも
・制度がある企業の従業員だけが利用できる
・年金資産の運用や企業の業績が著しく悪化すると、給付減額の可能性がある
・定額年金の場合、物価が上がっても受け取れる年金額は変わらない
・途中解約した場合、払い込んだ保険料の総額に対して戻ってくる解約返戻金が少ない場合がある

加入できる条件が限られているものや、元本割れのリスクを持ったものもあるので、自身に合った私的年金を選んで老後に備えてみてはいかがでしょうか。

老後問題が気になるなら専門家に相談してみよう

老後の生活費に関する不安がある場合は、FPや銀行、証券会社、保険会社、保険代理店などの専門家に相談して、アドバイスをもらうのもよいでしょう。

専門家 特徴 注意点
FP(ファイナンシャル・プランナー) ・ライフプランや家族の状況に合わせて、最適な貯蓄・運用方法を提案してもらえる
・必要な老後資金の目安をシミュレーションできる
・老後のリスクと対策についてもアドバイスがもらえる
・幅広い商品の提案を受けられる
・相談料がかかる場合がある
・商品の見積もりや申し込み手続きは自身で行う必要がある
銀行・証券会社 ・資産運用の方法について相談できる
・すでに口座を持っている銀行なら、なじみがあって相談しやすい
・資産運用の専門部署を設けているところもある
・投資信託商品の品ぞろえが豊富
自社の系列会社の商品を勧められることが多く、商品が比較しづらい
保険会社 ・保険商品の中から、必要な保障を見極めてアドバイスがもらえる
・老後の備えだけでなく、病気・死亡など万が一のときの保障についても相談できる
他社商品との比較ができない
保険代理店 ・複数の保険会社の商品を比較しながら選べる
・手続きの窓口を一本化できる
保険代理店のみで取り扱っている保険商品からしか選べない

いずれにしても、「60歳までに2000万円貯めたい」「90歳まで資金が底をつかないように資産運用がしたい」といったように、具体的な目的を持って相談に行くとよいでしょう。

具体的な目的を伝えれば専門家もアドバイスがしやすくなり、老後に備える方法を深く理解できるようになります。

この記事のまとめ

公的年金は老後の生活を支えてくれるものです。職業等によって加入する年金が変わり、老後に受け取れる年金受給額にも違いが出てきます。

また、万が一の際には遺族年金や障害年金なども受け取ることができます。

公的年金だけでは老後の生活費に不安があるという方は、私的年金で備えておくのも一つの方法です。

まずは自分がいくら公的年金を受け取れるのかを知り、老後に生活費が不足して困ることのないよう、なるべく早いうちから老後の備えをしておきましょう。

監修者 監修者

綱川 揚佐

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

綱川 揚佐

地域金融機関に勤務した後、社会保険労務士、年金アドバイザーなどの資格を取得し、年金記録確認第三者委員会に勤務。その後社会保険労務士事務所を開業し、法人向けの労働相談、就業規則作成などの業務に携わる傍ら、年金事務所や地方銀行の年金相談員として活動し、多数の年金相談を受けている。

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