介護保険の基礎知識|利用できる年齢とサービスの種類、保険料の納付方法
更新日:23.01.10
高齢になって介護が必要になったときに、自治体から必要な支援を受けられる「介護保険制度」は、2000年にスタートしました。高齢者世帯にとっては、いまやなくてはならない制度となっています。
一方、若い世帯にとっては、まだ直接的な関わりの少ない制度だと感じている人も多いのではないでしょうか。また介護保険制度は、たびたび改正が行われてきた経緯があり、わかりにくいものとなっています。
しかし、誰でもいずれはお世話になる可能性がある制度なので、前もって知っておくと安心です。この記事では、介護保険の基礎知識について解説します。
目次
介護保険とは?使える年齢は何歳?

介護保険制度とは
- 要支援(1~2区分)や要介護(1~5区分)の認定を受けた人が利用できるサービス
必要に応じて、介護保険施設に入所したり、訪問介護や通所介護などの介護サービスを受けたりすることが可能です。また、自宅に手すりやスロープを設置するときに発生する費用や、車椅子などの介護用具を購入・レンタルするときにかかる費用についても、補助金が支給されます。
介護保険制度を支える財政の半分は公費(税金)ですが、もう半分は保険料で賄われています。運営母体は市区町村であり、ある程度の自由裁量が認められているため、地域差がみられます。
介護認定区分によってサービスの利用限度額に上限があり、一般的に要介護1の場合なら166,920円までとなっています(2018年時点)。自己負担額が1割の人なら、16,692円でサービスを受けられることになります。
こうした介護保険制度を利用できるのは、原則として65歳から。介護保険料をきちんと納めていれば、65歳になるタイミングで、自宅に「介護保険 被保険者証」が郵送されてきます。
ただし、これは「介護保険制度が利用できるようになったこと」を示すものなので、このままではサービスを受けることはできません。
実際にサービスを利用するためには、介護認定審査を受ける必要があり、役所か地域包括支援センターで申請できます。審査が終了すると、自宅に認定結果通知書が郵送されてきます。
これに基づき、ケアマネージャーによってケアプランが作成され、必要なサービスが利用できるようになるのです。
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65歳未満は介護保険制度を使えないのか
介護保険制度は原則として65歳からの利用となりますが、例外があります。それは、16の特定疾病に該当する場合。
16の特定疾病とは
- 「筋萎縮性側索硬化症」や「後縦靱帯骨化症」、「脊柱管狭窄症」などの疾病(その他は以下で解説)
また65歳未満の若い世代にも関係ある特定疾病としては「末期がん」があります。
余命6カ月程度の治る見込みがないケースに限られますが、末期がんは本人や家族の負担が非常に重くなることが予想されるため、介護保険が利用できると大きな支えになるでしょう。
「糖尿病性腎症」や「骨粗鬆症による骨折」、「変形性関節症」や「脳血管疾患」などは、65歳未満であっても発症するリスクが低くありません。これらの疾病で介護保険が使えると知っておくと、いざというときに役立ちます。
若い時期にも発症する「アルツハイマー病」や「レビー小体病」などの認知症(初老期における認知症)も介護保険の対象です。ただし、アルコール性の認知症は対象外なので注意が必要です。
介護保険の負担割合はどれくらい?
自己負担の割合には、3割負担、2割負担、1割負担の3種類があります。自分が「どの割合に該当するのか」は、所得金額によって決まってきます。
第一号被保険者とは
- 介護保険サービスを利用できる65歳以上の人
第二号被保険者
- 保険料の徴収が始まる40歳から65歳未満の人、特定の病気(特定疾病)に該当する場合に限って、介護保険サービスを利用することが可能
2018年まで、自己負担割合には、1割負担と2割負担の2種類しかありませんでした。
65歳以上の「第一号被保険者」のうち、市区町村税(住民税)が非課税であるか、生活保護を受給している場合、および特定疾病に該当する場合は、1割負担となります。市区町村税の課税対象者であっても、本人の合計所得金額が160万円未満の場合は、同様に1割負担です。
「第一号被保険者」のうち、本人の合計所得金額が160万円以上の場合は、原則的に2割負担です。
ただし、例外があります。年金収入とその他の収入を合わせた合計所得金額が、単身世帯で280万円未満である場合、および「第一号被保険者」が2人以上いる世帯で346万円未満の場合は、1割負担に該当します。
介護保険改正で何が変わった?
2018年8月の改正では、2割負担だった一部の人が3割負担になりました。
3割負担になるのは、年金収入とその他の収入を合わせた合計所得金額が、単身世帯では340万円以上ある場合、および「第一号被保険者」が2人以上いる世帯で合計所得金額が463万円以上ある場合です。
また、収入が年金のみの場合は、単身で344万円以上の人も同様に3割負担となります。
負担割合以外にもある改正ポイント
団塊の世代が一気に介護保険利用者となったことなどが原因となり、介護保険制度を支える財源がひっ迫しています。
これに対処するため、政府は2015年の介護保険法改正で「地域包括ケアシステム」の構築を、より積極的に推進する方針を打ち出しました。
これにより、要支援1~2の介護予防サービスについては、一部市区町村の事業に移行することになりました。また、一般人が低料金で利用できる介護保険施設「特別養護老人ホーム」の入所条件が、原則として要介護3以上に変更になったことも大きなポイントです。
介護度の低い人は、自宅や通所介護、入居サービスなどを利用しながら、地域でケアを受けるのが基本となったのです。
それだけではありません。「高額介護費サービス制度」についても改正が行われています。高額の医療費がかかったとき、上限を超えた部分について還付を受けられる「高額療養費制度」は広く知られていますが、介護保険制度にも同様の仕組みがあります。それが、「高額介護費サービス制度」です。
高額介護費サービス制度
- 所得金額に応じて設定された自己負担の上限金額を超えて介護サービスを利用したとき、還付金を受け取れる仕組み
所得の多い人ほど上限金額が高くなり、自己負担額が多くなります。2015年までは、生活保護受給者の上限は15,000円、世帯の誰かが市区町村税を納めている一般的な世帯なら37,200円、というように段階的に設定されていました。
ただし、市区町村が運営する制度なので、地域差がみられることがあります。
2015年の改正では、「現役並みの所得者がいる場合は上限を44,400円とする」という、新しい区分けが設置されました。
さらに、2018年の改正では一般世帯の上限を44,400円に引き上げました。ただし、世帯に含まれる「第一号被保険者」の負担割合が全員1割だった場合は、事実上37,200円のままに据え置かれます(2020年7月まで)。
高額介護費サービス制度を利用するには
自ら申請するひと手間があることも影響して、「高額介護費サービス制度」を知らない人も少なくなく、上限を超えて自己負担で支払いをしているケースもみられます。
介護保険制度は3年に一度見直しが行われるため、今後の改正で自己負担割合が変更されることも充分予測できます。自己負担割合や「高額介護費サービス制度」の上限額がどのように変わっていくのか、動向をしっかり把握しておく必要がありそうです。
年齢別の介護保険料の納め方
ここまで、保険制度を「利用する場合」について解説してきましたが、最後に「保険料を納付する方法」についてもしっかり把握しておきましょう。
前述のとおり、介護保険制度の被保険者には2種類あり、65歳以上の「第一号被保険者」と、40歳以上65歳未満で健康保険に加入している「第二号被保険者」に分けられます。
「第一号被保険者」の場合、保険料は基本的に年金から天引きされるため、自ら納付する必要はありません。ただし、年金額が月額1万5000円未満の場合は、自宅に納付書が郵送されてくるので、金融機関の窓口などに出向いて納めます。
「第二号被保険者」の場合は、40歳になる誕生日の「前日」が含まれる月から、自動的に介護保険料の徴収がスタートします。
原則として40歳以上の人は介護保険料を納める義務があり、介護保険料の納付には終了期限がなく、被保険者が死亡するまで納めることになります。
納付方法は加入している健康保険によって異なり、サラリーマンなどの健康保険加入者は、医療保険料とともに給与から天引きされます。
一方、国民健康保険加入者の場合は、郵送されてくる納付書によって自ら納めなくてはなりません。
介護保険料の額は市区町村によって違いがありますが、月額5,000円前後と考えればよいでしょう。所得に応じて納付額を段階的に設定している地域が多く、納付が難しい場合には減免措置があるのが普通です。
若い世代にとっては、介護保険が縁遠いものに感じられるため、保険料の納付に前向きになれないこともあるでしょう。しかし介護保険料を滞納すると、いざ利用するときに自己負担額が増えるなどの不都合が生じます。
そのときになって後悔しないように、きちんと納付しておくことが重要です。もしも支払いが難しい場合には、市区町村に相談しましょう。
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・お引受内容により保険料が異なる場合がありますので、実際に適用される保険料については代理店または引受保険会社にお問い合わせください。