がん保険にだけ免責期間があるのはなぜ?その理由と注意点を解説
更新日:23.01.10
いざというときのため、加入しておくと安心ながん保険。しかし、加入していても診断の確定時期によっては保障が受けられない期間があることはあまり知られていません。
特に「最近調子が悪いから念のためがん保険に加入しようか迷っている」という場合などは、タイミングや保険選びに注意が必要です。加入からすぐにがんが発覚してしまった場合は保障されない可能性があるため、その期間を含めて契約内容を確認するようにしましょう。
がん保険の免責期間とは
がん保険は契約した後で対象となる事由に該当したとしても、すぐに保障が受けられるというわけではありません。加入後は一定期間保障が受けられない「免責期間」があります。一般的にがん保険の「免責期間」は、加入から90日または3カ月。
この期間中にがんの診断が確定しても保険金・給付金を受けることができません。「免責期間」は、保険会社によっては「支払い猶予期間」や「待機期間」「不担保期間」とも呼ばれます。
生命保険や医療保険に加入することを考えたとき、手術給付金や入院給付金などがどの程度支払われるかなど、保障内容に注目することは多いでしょう。
また、家計の負担を考えると毎月の保険料が気になるという人もいるはずです。ただ、がん保険に関してはそれだけでなく、加入前に約款などで免責期間をしっかり確認しておく必要があります。
なぜがん保険には免責期間が設けられているの?
がん保険に免責期間が設けられている理由は、その病気の特徴にあります。進行がんを別にすると、がん細胞が身体の中でできていても、健診で見つかるまでには数年という長い時間がかかることも珍しくありません。
また、発病したとしても初期のころは自覚症状がないケースも少なくないのです。 つまり、がん保険に加入するときにはがんという診断を受けておらず、がんに侵されていたとしても本人は知らなかったという場合もあり得ます。
また、もしかしたら自分ががんになっているかもしれないと不安になり、検査を受ける前に先にがん保険に入っておこうと考える人もいる可能性があります。
そのため、がんという病気の特性に配慮して、契約の公平性を維持するために免責期間を設けることが必要だと考えられているのです。
がん保険の免責期間はどれくらい?
一般的な生命保険や医療保険などは、加入の申し込みをして健康状態の告知または診査を受け、1回目の保険料の払い込みが済めば責任開始となります。
しかし、がん保険の場合は、それだけでは責任開始とはならず、一般的に申し込みから90日間または3カ月という免責期間が設定されています。つまり、その期間は申し込み時にすでにがんになっていなかったかどうかの様子見ということなのです。

そのため、がん保険に入ったからこれで安心とはいきません。 一部のがん保険では免責期間なしで契約時からすぐ保障が開始するがん保険も存在します。
ただ、がんと診断されたときに一時金として受け取ることができる診断給付金がない、特約で付加しないと入院給付金がないなど、保障範囲が限られることもあるため、加入を検討するときは注意が必要です。
免責期間中も保険料は支払うの?
免責期間中はがんの診断が確定しても保障は受けられませんが、その間も加入者には保険料の支払い義務があります。この期間に支払った保険料も決して無駄ではなく、将来的に受け取る給付金の原資となるものです。
保険会社は自社の利益のためではなく、免責期間中に支払われた保険料も準備金として計算しています。しおり・約款などで契約内容を把握するだけでなく、1回目の払い込み日も忘れずチェックし契約通りに払い込みをしましょう。
免責期間中を含め、もし支払いを滞納してしまったら契約が失効してしまいます。「せっかく契約が完了したのに未入金が原因で保障が受けられない」というトラブルがないように気をつけましょう。
免責期間なしですぐに保障が開始するがん保険もある
基本的にがん保険は免責期間を設けているケースがほとんどですが、気になるのは先述した「免責期間なしで契約時からすぐ保障が開始するがん保険」の存在なのではないでしょうか。
契約後すぐにがんと診断されても、免責期間なしで保障が受けられるのは安心です。ただし、100万円を超えるような一時金の給付はなく、通院保障もないといったデメリットは知っておかなければなりません。
例えば、次のような商品があります。
▼免責期間なしのがん保険の一例
治療内容 | 保障 |
---|---|
手術 | 1回につき20万円 |
放射線治療 | 1回につき20万円 |
科学療法(抗がん剤治療) | 1回につき10万円 |
緩和ケア(緩和療養) | 1回につき10万円 |
比較的少額の給付金に限定されるのが、「免責期間なし」というがん保険の特徴です。
がん保険に入る前に知っておきたい注意点
がん保険の加入を検討する際に、免責期間のことも含めて、いくつか注意しておきたいことがあります。
免責期間中にがん診断されたら、保険金・給付金が出ないリスクあり
免責期間が設定されているがん保険の場合、保険加入後すぐ、免責期間内にがん検診や健康診断を受けて異常が見つかり、がんだと診断されても保険金・給付金が支払われないリスクがあります。
また、実は保険契約前にがんを発症していたことがわかった場合も、保険金・給付金が支払われない可能性があるでしょう。
保険を見直す場合は古いがん保険をすぐに解約しない
すでにがん保険に加入している人が保険の見直しを検討している場合にも、注意しておくポイントがあります。新しいがん保険に入ったからといって、古いがん保険をすぐに解約してしまってはいけません。
新しい保険の免責期間にがんだと診断されると、どちらのがん保険の保険金・給付金も受け取れなくなってしまうからです。がん保険に加入することを考えているならば、保障内容や保険料の負担だけではなく、免責期間についても考慮して検討することをお勧めします。
申し込み時に嘘の告知はしてはいけない
申し込み時に嘘の告知はしてはいけません。告知義務違反となり保険金・給付金を受け取ることができない可能性があります。
もちろん、保険加入前に本人の自覚症状が全くなく、免責期間が過ぎたあとにがんであることがわかった場合は契約前に発症していたとは判断されないため、保険金・給付金は支払われるはずです。
ただ、保険加入前に健診を受けて再検査が必要だと言われていたり、何らかの異常を感じて診察を受けていたりすることを告知していないと、保険金・給付金を受け取ることができない可能性があります。
免責期間を考慮したがん保険の加入が必要
日本人の死因の第1位ががん(悪性新生物)という現代社会では、いつ誰ががんになってしまうかはわかりません。自分だけは大丈夫と安心しているわけにもいかないのです。
特に働き盛りの世代なら、人生はまだまだこれからです。一家の大黒柱として養う家族がいる人も多いでしょう。幼い子どもがいるママや専業主婦も、がんになってしまうと家族の日常生活が崩れてしまいます。
初期の段階では自覚症状がないことも多いがんだからこそ、がんがわかってからでは遅いのです。 また、がん保険に加入したから大丈夫だと安心していると、本当にがんになってしまったとき、免責期間内であれば保険金・給付金を受け取ることができません。
そのため、免責期間のことも考慮に入れたうえで保険に加入することが大切です。健康に問題がない人ならば、がん保険に加入することは難しくないはずですから、健康なうちに入っておく方がいいでしょう。
この記事のまとめ
この記事で説明したがん保険の免責期間について、事前に知っておきたい注意点は次のとおりです。
- 一般的に申し込みから90日間または3カ月は免責期間として保障が受けられない
- 免責期間中も保険料を支払う必要がある
- 保険加入前の健診結果など健康状態について、嘘の告知をすると給付金などの保障が受けられない可能性がある
さらに「免責期間のない商品」が選択肢の一つにあることも覚えておく必要があります。比較的少額の給付金に限定されるデメリットもあるため、自分がどちらの条件に合っているのか、メリット・デメリットを踏まえ比較検討してみてください。