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2022/06/17
生前贈与はお早めに!

2021年度税制改正大綱に「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」との一文が入り、話題になりました。これにより相続税対策としての生前贈与にストップがかかり、相続税がさらに増税されるのではとの懸念が広がりました。

2022年度税制改正大綱でその具体策が示されると思いきや、何も触れられず見送りとなりました。

岸田政権誕生直後に「金融所得課税を増やす」という話が出ましたが、多くの批判を受けて取り下げになったこともあり、今回の件も反発を受けるのではとの見通しから見送られたとも言われています。

とはいえ、将来何らかの改正があるだろうとも言われており、生前贈与加算の対象期間が延長(3年→5年~10年)されるのではとの予測もあります。このことからも生前贈与を検討しているのであれば、できるうちにしておくべきというのが、大方の見方となっています。

生前贈与5つのルール

 

1 暦年贈与
2 相続時精算課税制度
3 住宅取得等資金の贈与
4 教育資金の一括贈与
5 結婚・子育て資金の一括贈与


 
 

暦年贈与

贈与税の基礎控除枠110万円を利用して、毎年子どもや孫に贈与する方法です。一般に生前贈与といわれるのはこの制度のことです。税制改正の焦点もここにあり、この制度を縮小、廃止するという案が先送りされました。
親や祖父母の口座から子どもや孫の口座に送金する場合、子どもや孫が日常的に使っている口座に送金することと、贈与の都度、贈与契約書を作成することがポイントです


 
 

相続時精算課税制度

生前贈与の2,500万円までが特別控除で贈与税が非課税となり、それを超えると一律20%課税されます。相続発生時にはそれまでの贈与額を相続財産に加算して相続税を計算します。まさに相続時に精算する仕組みとなっています。この制度は利用実績も少ないことから、税制改正では本制度に一本化すべしという案でした。 

一方で相続発生時、贈与時の金額で精算されるため、将来値上がりが期待できるような資産を贈与することで、節税効果も期待できるという一面もあります。
一度、相続時精算課税制度を利用すると暦年贈与ができなくなるのもポイントです。


 
 

住宅取得等資金の贈与

子どもや孫がマイホームを建てる場合(一定の条件あり)、親や祖父母からの贈与が1,000万円まで非課税となる制度です。この制度は2021年12月31日が適用期限でしたが、2年間延長されました。しかし、延長前は非課税枠が1,500万円でしたが、減額されました。

この制度は相続時の生前贈与加算の対象とはならないことがポイントです。

 
 

教育資金の一括贈与

30歳未満の子どもや孫(前年の所得が1,000万円以下)の将来の学費や塾代を親や祖父母が贈与する場合、1,500万円まで非課税となる制度です。

適用期限は2023年3月31日となっていますが、2021年度の税制改正において、子どもや孫が原則30歳までに贈与者が死亡した場合、使用していない残額は相続税の課税対象となりました。この場合、孫やひ孫だと相続税は2割加算になりますので、注意が必要です。

そもそも扶養義務者からの生活費や教育費には贈与税はかかりませんので、本制度を利用するのは祖父母からの贈与が多いようです。

 
 

結婚・子育て資金の一括贈与

20歳以上50歳未満の子どもや孫が結婚や子育てに必要な資金を親や祖父母が贈与する場合、1,000万円まで非課税となる制度です。適用期限は2023年3月31日までとなっており、教育資金同様、途中で贈与者が死亡した場合、残額は相続税の課税対象となります。

本制度は使い勝手が悪いことから、利用実績も極端に少ないようです。2021年度税制改正では次の適用期限到来時に廃止も含め、改めて検討とされたようです。利用を検討されている方は急ぎましょう

 

~番外編~

 

その生前贈与、名義預金になっていませんか?
生前贈与の落とし穴で、名義預金というのをご存じでしょうか?

「ウチは昔から子どもそれぞれの銀行口座を作ってあり、そこに定期的に贈与してるよ。ただ、将来使ってほしいと思っているので、通帳は親である私が管理してます。」なんて方、多いのではないでしょうか?このように形式的な贈与をして、実態は渡していない場合の預金を名義預金といいます。贈与とはあげる側が「あげました」という認識、もらう側が「もらいました」という認識がある場合のみ成立する契約です。したがって名義預金は贈与にはなりません。

では名義預金を贈与にするにはどうしたら良いのでしょうか?答えは簡単です。やり直すしかありません。

上記の5つの仕組みを使い分けて、効率的に贈与しましょう。

 

~まとめ~

 

“駆け込み”によって、少ない情報量の中で決断し、後に違う方法を選ぶべきだったと後悔する方も多いかもしれません。そのようなことにならないよう、多くの情報を収集し、自分と自分の家族にとってふさわしいと思える生前贈与をしたいものです。日本の相続税制は「3代続けば、財産がなくなる」と言われるくらい税率が高いです。だからこそ、事前の対策が必要ですね。大切な家族の資産を守る資産保全として取り組んでみてはいかがでしょうか?

 

本記事の執筆者:
R&C株式会社 不動産コンサルティング準備室
江原貴史

外資系保険会社においてセミナー事業に立上げより参画し、お客様向けセミナーやパートナー先のパーソナルファイナンス推進事業に従事。この実績を評価され、不動産会社においてもお客様向けセミナー事業を立上げ、年間120回ほどのセミナー開催から130億円ほどの売上に貢献する。保険、不動産に共通したテーマである相続対策に課題を感じ、相続人(受ける側)向け相続相談サイト「相続ぽると」を開設し、各種専門家との連携により、「相続を明るくする」の実現に奮闘中。
日本FP協会会員、宅地建物取引士、金融知力普及協会認定インストラクター