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2022/04/08
家族信託と不動産

成年後見制度の抱える問題を解決する家族信託

 

家族信託は数々のテレビ番組でも取り上げられるようになり、一気にその知名度が向上しました。
制度としては、実は2007年9月30日の新信託法の施行の時から存在していました。

しかし、当時は詳しい専門家が少なく、また家族信託の活用に必須となる銀行の対応が追いついていなかったため、日の目を見ないまま約15年という月日が経過してしまったのでした。

ご存知のように、この15年で日本社会の高齢化はさらに進みました(令和3年度の65歳以上の人口割合は29.1%・総務省調べ)。また、銀行等金融機関のコンプライアンスの強化に伴い、預金出金時の本人確認が厳しくなり、高齢で認知症にり患した親の介護費を子供が親の口座から降ろすことが難しくなりました。

どうしても認知症の親の口座から介護費を引き出したい場合には、後見制度を利用するしかありませんが、後見制度は裁判所の監督や見ず知らずの専門家の関与があるうえ、本人の財産の利用方法の制限がされてしまうために、本人の親族からすると非常に使いづらい制度でした。

また、後見制度は専門家の関与による専門家報酬の負担も発生するため、経済的にも利用者を圧迫する構造がありました。

認知症によって法的なサポートを必要する高齢者の増加、成年後見制度の制度上の問題の露呈。このような背景から、昨今その存在が見直され始めたのが家族信託の制度です。家族信託は、その名の通り、家族に財産の管理を任せる制度です。

制度といってもその構造は当事者間の契約行為に過ぎず、財産を任せる側(高齢の親)と任される側(子)が信託の契約をするだけで簡単に効力を発生させることが可能です。
また、契約の内容は原則自由ですので、成年後見制度のように財産の利用方法に制限が加えられてしまうようなこともありません。

当然、裁判所の監督もなければ見ず知らずの専門家の関与もありません。

高齢者の法的サポートという、従来成年後見制度の利用の目的とされていた部分を、裁判所の関与、専門家の関与、財産の利用制限という成年後見制度において問題とされていた部分を排除した形で実現できるのが家族信託なのです。

後見制度の問題を解決する手段として潜在的なニーズがあった家族信託が、TVの特集などによってその認知度を高めたため、一気に利用者数が増加した、というのが現状です。

 

家族信託利用の環境が整い、誰でも利用できるように

 

また、家族信託の利用が増加した大きな要因はもう一つあります。
それは、家族信託を支える社会インフラ、すなわち銀行等の金融機関と、法務・税務の専門家である税理士・司法書士の家族信託に対する対応がここ5~6年でようやく追いついてきた、という点です。

家族信託を活用するには、その契約締結時に法律面、税金面でリスクがないかチェックできる専門家の関与が必須となります。

今まで、家族信託に対応できる専門家はごく一部でしたが、TVなどにより家族信託の情報を仕入れた顧客側からの要望によって、家族信託を取り扱う専門家は徐々に増えて来ました(まだまだ少ないですが)。また、家族信託開始後は、財産を任された側は自分の個人的な財産とは別の口座を開設して信託財産を管理しなければなりません。

その際には、その口座名には「受託者(信託をされている人の呼び方)」という名義が入っている口座の開設が必要となりますが、そのような名義の口座開設に銀行が対応し始めたのはここ数年の話です。このように、この5~6年での急激に家族信託の知名度の向上の結果、家族信託を活用する環境が整ってきました。

 

家族信託の意義

 

家族信託を利用する理由として最も多いのは委託者の認知症対策です。認知症を患い、物事を判断することができなくなってしまうと、その方は法律的な行為が一切できなくなってしまいます。

例えば、不動産の売買契約や賃貸借契約などが不可能となります。また、銀行口座からのお金の出金なども、認知症が進み、自ら意思表示ができなくなった時点で、後見制度を利用しなければできなくなってしまいます。

しかし、後見制度を利用すると、裁判所の監督や見ず知らずの専門家の関与、専門家に対する報酬の支払いの発生、本人の財産の利用方法の制限など、余計なおまけがたくさんついてきてしまいます。

さらに、後見は一度開始してしまうと本人が死亡するまでやめることができません。後見人報酬は安くても月額2~3万円といわれていますので、本人がなくなるまでこの支払いが続くとすれば、支払いの合計金額は相当高額になってしまうことも考えられます。それを回避するために利用されているのが家族信託です。

家族信託によって、親から子へ不動産の名義や預金を移動しておけば、親が認知症になってしまったとしても、受託者である子の意思で不動産の売却や賃貸ができます。また銀行の手続も、元気な受託者であれば何の問題もなく行うことが可能です。

家族信託であれば、裁判所や第三者である専門家の関与はなく、後見人報酬が発生してしまうこともありません。後見制度が抱える問題を一掃できると言っても過言ではないのが家族信託です。

以上、家族信託の利用者数が急激に増加している理由がご理解いただけたのではないでしょうか?

このような背景もあり、4/23(土)司法書士法人トリニティグループの司法書士田村先生をお招きし、家族信託に関するセミナーを開催します。

セミナーはこちら  >>

是非ご参加ください。

 

本記事の執筆者:
R&C株式会社 不動産コンサルティング準備室
江原貴史

外資系保険会社においてセミナー事業に立上げより参画し、お客様向けセミナーやパートナー先のパーソナルファイナンス推進事業に従事。この実績を評価され、不動産会社においてもお客様向けセミナー事業を立上げ、年間120回ほどのセミナー開催から130億円ほどの売上に貢献する。保険、不動産に共通したテーマである相続対策に課題を感じ、相続人(受ける側)向け相続相談サイト「相続ぽると」を開設し、各種専門家との連携により、「相続を明るくする」の実現に奮闘中。
日本FP協会会員、宅地建物取引士、金融知力普及協会認定インストラクター