投資信託
投資信託の計算はどうやる?利益のシミュレーション方法を詳しく解説
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投資信託の利益や利回りの計算方法と、必要な積立期間や金額をシミュレーション

投資信託にコツコツと積立投資する場合、どのくらいの金額をどのくらいの期間積立すれば、目標金額に到達するか気になる方は多いでしょう。

そこでこの記事では、投資信託の利益や利回りの計算方法を簡単に説明した上で、500万円や1,000万円を作るのに必要な積立期間や金額をシミュレーションします。

投資信託の積立投資に興味がある方に役立つ内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。

投資信託の利益は「売却益+分配金」で計算する

投資信託の利益は「売却益+分配金」で計算する

投資信託の利益は売却益+分配金で計算できます。計算式は以下のとおりです。

投資信託の利益=売却益+分配金

売却益・分配金とはそれぞれ何を指すのかについて、詳しく解説していきます。

売却益

売却益は、投資信託を売却したときに得られる利益のことです。売却益から購入額を引くことで求められます。

たとえば、100万円で購入した投資信託を1年後に120万円で解約した場合、売却益は以下のとおりです。

120万円(売却益) – 100万円(購入額)=20万円(利益)

もしも運用中に購入時よりも投資信託の基準価額が下がってしまった場合、売却益がマイナスになる場合もあります。

分配金

分配金は、運用によって得られた収益を投資家に分配されるお金のことです。半年間や1年間など、一定期間の運用成績に応じて、運用会社から投資家に支払われます。

受け取れる頻度は年1回・年2回・年4回など、その投資信託によって異なります。また、投資信託によっては分配金がない場合もあります。

支払われた分配金は、銘柄によって現金として受け取る場合と、自動的に再投資される場合があります。

実際にはコストや税金が発生する

投資信託の運用時には、実際にはコストや税金がかかります。必ず発生するコストは以下の3種類です。

コストの種類目安
購入時手数料0〜5.0%
信託報酬(運用管理費用)0.5〜2.5%
税金20.315%

購入時手数料は購入する金融機関や投資信託により異なります。一般にネット証券はこれらのコストが低く設定されている一方、銀行では高めの設定になる場合が多いです。

信託報酬は投資信託の管理費用で、証券会社のホームページには年率で表示されていますが、実際には日割り計算され、運用中の資産から毎日自動で差し引かれます。信託報酬が高いと資産が増えにくくなるため注意が必要です。

税金は投資信託の運用によって得られた利益に対して発生し、利益金額にかかわらず一律で20.315%です。投資信託による年間の利益が20万円以下であれば税金は発生しませんが、それ以外の場合は原則として利益の約1/5を納める必要があります。

NISA口座を活用すれば投資信託の利益が非課税になる

通常、投資信託の利益の約1/5は税金として納める必要があり、資産形成をする際に大きな負担となる恐れがあります。

そこで役立つのがNISA口座です。NISA口座を利用すれば利益が非課税となり、利益の全額を受け取れます。

また、運用中に分配金を再投資する場合、通常は分配金を受け取るたびに税金が発生しますが、NISA口座であればこの税金も発生しません。

2024年現在、NISA口座を活用すると、年間で最大360万円まで投資信託を購入でき、NISA口座で購入した投資信託から発生した利益は全額非課税となります。

資産運用の際にNISA口座を使うと非常に有利になるので、ぜひ有効活用するようにしてください

利回りの計算方法

利回りの計算方法

投資信託の利回りを計算するには、以下の計算式を用います。

利回り(%)=(譲渡損益+分配金)÷運用年数÷投資金額×100

一例として、元本200万円を投資し、5年間で10万円の分配金を受け取り、230万円で売却した場合を考えます。

このときの投資信託の利回りの計算方法は以下のとおりです。

(譲渡損益30万円+分配金10万円)÷運用年数5年 ÷投資金額200万円×100=4%

このように利回りを求められます。実際には自分で計算しなくても、証券会社のデータを見ると載っている場合が多いので、データを確認するほうが早いです。

ただし、データが確認できないときのために、平均利回りの計算方法を覚えておくとよいでしょう。

積立額から投資信託のリターンをシミュレーション

積立額から投資信託のリターンをシミュレーション

投資信託で資産形成を目指す場合、毎月少額をコツコツと積立し元本を増やしながら複利運用する場合がほとんどです。

一度にまとまった金額を投資しなくても、毎月コツコツと少額を長期間積み立てることで、大きな資産を形成できます。

そこでここからは、以下の条件で毎月3000円、5000円、1万円を積み立てた場合のリターンを計算しシミュレーションしてみましょう。

  • 積立期間:10年~30年
  • 利回り:5%
  • 税金:考慮しない

税金については、NISA口座を活用したものと考え、0%としてシミュレーションします。

毎月3000円を積み立てた場合

毎月3000円を投資信託に積立投資した場合、資産額の推移及びリターンのシミュレーションは以下のとおりです。

積立金額資産額リターン
10年後36万円465,847円約10万6千円
20年後72万円1,233,101円約51万3千円
30年後108万円2,496,776円約142万円

このように年利5%で積み立てていくと、月々わずか3,000円の投資金額であっても、30年間で142万円ものリターンを得られることが分かります。

少額の積立投資であっても、時間をかけてコツコツと行えば、将来的な資産形成が可能となるのです。

毎月5000円を積み立てた場合

続いて毎月5,000円を積立投資した場合の資産額とリターンをシミュレーションしてみます。

10年後20年後30年後
積立金額60万円120万円180万円
資産額約77万円約205万円約416万円
リターン約17万円約85万円約236万円

月々5,000円を積立投資すると、30年間では236万円ものリターンを得られることが分かりました。

投資金額が月々3,000円の時と比べ、30年後のリターンには94万円もの差があることが分かります。

毎月1万円を積み立てた場合

最後に月々1万円を積立投資した場合についても、シミュレーションしていきましょう。

10年後20年後30年後
積立金額120万円240万円360万円
資産額約1552,823円約411万円832万円
リターン約35万円約171万円約472万円

このように、30年間積立投資するとリターンが472万円もの金額になります。

月々の積立金額が5,000円の時と比べ、236万円もの差が生じることが分かりました。

それぞれの資産額とリターン額を比較

ここまでのシミュレーション結果から、年利5%で月々1,000円・5,000円・1万円を積立投資し運用したときのリターンはそれぞれ以下のとおりです。

月々の投資資金3,000円5,000円1万円
10年後のリターン約10万6千円約51万約142万円
20年後のリターン約17万円約85万円約236万円
30年後のリターン約35万円約171万円約472万円

実際に計算してみると、毎月の積立金額が数千円変わるだけで、20年後、30年後のリターンは大きく変わります。

そのため、投資可能額に余裕がある場合は、より多くの積立額を設定して運用することで、資産形成のスピードを上げられます。

もちろん、生活に支障がない範囲で投資するのが必要ですが、余裕がある場合は積立金額を増やしてみるのもおすすめです。

また、投資信託の利回りは相場により毎年変動します。今回のシミュレーション結果は、あくまでも利率が固定であると仮定して計算した金額なので、この点を理解した上で資産運用しましょう。

参照:資産運用シミュレーション : 金融庁

目標金額から運用期間を計算する方法

目標金額から運用期間を計算する方法

以下の条件で、目標金額を達成するために必要な期間を計算し、シミュレーションしてみます。

  • 利回り: 5% (一定と仮定)
  • 初期投資金額: 0円
  • 積立額(毎月): 3,000円・5,000円・10,000円 の3パターン

この条件で積立投資を行い、資産額500万円、1,000万円に到達するために必要な運用期間をシミュレーションしていきます。

資産額500万円を達成するための期間を計算

まずは500万円を達成するために、必要な期間をシミュレーションしていきましょう。

月々3,000円・5,000円・10,000円の3通りを積立投資した場合に、500万円を貯めるために必要な期間は以下のとおりです。

積立額(毎月)必要な期間
3,000円42年1か月
5,000円34年1か月
10,000円23年1か月

30年~40年の時間をかければ、月々3,000円~5,000円の投資額でも、500万円を達成できる可能性があることが分かりました。

月々数千円程度の積立であっても、時間をかけて運用すればまとまった資産を作れる可能性が十分にあるので、毎月数千円程度でも積立投資をスタートするのも良いでしょう。

資産額1000万円を達成するための期間を計算

次に、資産金額1000万円を達成するために、必要な期間をシミュレーションしてみます。

この場合、月々3,000円・5,000円・10,000円の3通りを投資した場合に、1,000万円を貯めるために必要な期間は以下のとおりです。

積立額(毎月)必要な期間
3,000円55年1か月
5,000円46年1か月
10,000円34年1か月

参照:積立計算(複利毎課税)

投資信託による資産運用で1,000万円を作るためには、月々3,000円の場合は約55年、5,000円の場合には約46年、月々1万円だと約34年かかることが分かりました。

月々の積立金額が3,000円や5,000円だと、必要な年数が非常に長くなるため、現実的とは言えない可能性があります。

しかし、月1万円を積立投資できる場合は34年程度の運用期間で達成できそうなので、若い時期から投資信託への積立投資を始めれば、1,000万円の資産を達成できる可能性があるでしょう。

より早く1,000万円の資産形成を達成したい場合には、月々の投資金額を増やすことも検討したほうがよさそうです。

分配金があるからといって利益が出ているとは限らないので注意

分配金があるからといって利益が出ているとは限らないので注意

分配金が定期的に支払われていると、投資信託の運用によって順調に利益が出ていると思いがちです。

しかし、実際には分配金が支払われていても、利益が出ているとは限らないため注意が必要です。

ここではその理由を解説します。

投資信託の分配金は銀行の利息とは仕組みが違う

投資信託の分配金を、預貯金の利息と同じように捉えがちですが、実はこれらが支払われる仕組みは全く異なります。

銀行の利息は、預かった預金を貸し出すことで得られる利息による収益から支払われます。

一方で、投資信託の分配金は、ファンドの純資産から支払われます。

銀行の預貯金の場合、利息を受け取っても元本が減ることはありませんが、投資信託の分配金は受け取れるとファンドの純資産が減少し、基準価額が下がります。

このように、預貯金の利息と投資信託の分配金は、支払いの原資が全く異なるので、理解しておく必要があります。

分配金が定期的に支払われていても運用が順調とは限らない

分配金がある投資信託の場合、分配金が定期的に支払われていれば、運用が順調に行われており利益が出ていると思いがちです。

しかし、実はそうとは言い切れません。投資信託の分配金は元本の一部から支払われるため、運用が順調ではなくても受け取れるからです。

この場合、投資した元本の一部分が払い戻されているだけであり、資産運用がうまくいっているとは言えない状況です。分配金にはこういった事情が潜んでいる場合があります。

そのため、分配金を受け取ったときには、その原資がどこから来ているのかを確認する必要があります。

もし投資元本を取り崩している場合は、ファンドの純資産が減少しているので、気づかないうちに投資した資金が目減りしてしまっているかもしれません。

分配金が支払われているからと安心することなく、基準価額の推移や運用実績も定期的にチェックしたほうが良いでしょう。

分配金ありの投資信託は長期の資産形成には不利な可能性がある 

分配金のある投資信託は、分配金が支払われる際に純資産額が減少するため、基準価額が定期的に下がります。

そのため、分配金なしの商品と比べると、同じ上昇率であっても元本の増加速度がやや鈍くなる特徴があります。

積立投資で投資信託を運用する場合、運用益を再投資することで徐々に資産を大きくできます。

しかし、分配金ありの投資信託では定期的に元本が減少するため、長期運用した際に利回りが低くなり、複利の効果が薄れてしまう面があります。

そのため、長期的な資産形成を最優先するのであれば、分配金の再投資を行うなどして基準価額の下落の影響を和らげる必要があります。

もしくは、はじめから分配金なしの投資信託を選ぶ方が、資産形成の観点では有利となる可能性があります。

分配金を毎月受け取れると安心感があるかもしれませんが、長期的な資産運用では不利になる可能性が高いので、この点を理解しておくとよいでしょう。

記事まとめ

記事まとめ

投資信託の利益を計算する際には、売却益と分配金の合計を計算した上で、信託報酬や税金を考慮して計算する必要があります。

信託報酬については低めの投資信託を選び、税金についてはNISA口座を活用し非課税にすることで、コストを抑えた運用が可能になります。

投資信託の積立投資では、月々数千円~1万円程度の少額であっても、コツコツと積み立てることで500万円や1,000万円といった金額を作れる可能性があります。

まとまった資金がなくても、時間をかけることで資産形成できる可能性があります。将来に向けた準備のために、この機会に投資信託への積立投資を始めてみるのもよいでしょう。

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監修者プロフィール
小林裕
小林裕
一般社団法人証券相続普及協会 代表理事
大学卒業後、東証一部上場の証券会社に入社。
個人向けの資産運用コンサルティングを中心に活動し、新人賞、社長優秀賞などを数多く受賞。
退職後、資産運用だけでは本当の解決ができないという思いから、2020年に一般社団法人証券相続普及協会を設立、代表理事に就任。
終活カウンセラー1級や上級相続診断士の資格も取得し、現在はお客様の大切な資産を「ふやす、まもる、つなぐ」をモットーに活動している。
【代表著書】
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