終身保険とは?掛け捨て保険との違いやメリット・デメリットを解説

そもそも終身保険って何?定期保険との違いは?
終身保険のメリット・デメリットを教えて!
生命保険には数多くの種類があり、人の命を保障の対象とした保険だけでも、終身保険・定期保険・収入保障保険・養老保険などがあります。

これらの中で主要な生命保険の一つとして「終身保険」は時代とともに進化し、多くの商品が登場しています。

終身保険とはどのような生命保険なのか、メリット・デメリットについて詳しく解説していきましょう。

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終身保険とは?定期保険との違いは?わかりやすく解説

終身保険も定期保険も、被保険者(保険の対象となる人)が亡くなってしまった(または保険会社所定の高度障害状態になってしまった)ときに、保険金受取人が保険金を受け取れる生命保険です。

ただ保険の名前の通り、保険期間が「終身」(=一生涯)と「定期」(=一定期間)で違いますが、他にも違いがあります。順に解説していきましょう。

終身保険と定期保険の違いは?

終身保険と定期保険を図で表すと、下記のようなイメージになります。

定期保険と終身保年の保険期間の違い

定期保険は、保険期間が年満了(10年間・20年間など)または歳満了(60歳まで・70歳までなど)で設定してあり、保険期間中に万が一のことがあれば保険金が支払われて、保険契約は終了となります。

なお定期保険は、保険期間が満了まで万が一のことがなかったときは、保険金は支払われることなく、保険契約は終了となります。

一方、終身保険は、保険期間が終身なので、被保険者の死亡・高度障害状態により保険金が支払われるまで死亡保障は続きます。つまり、被保険者が生存していれば死亡保障は継続していきます。

終身保険と定期保険の主な違いを下の表にまとめてみました。

終身保険 定期保険
保険期間 一生涯 一定期間(10年間・20年間、60歳まで・70歳までなど)
保険料払込期間 保険期間と同様、終身払いだけでなく、有期払い(60歳まで・65歳までなど)も可 多くは保険期間と同じで、一部短期払いも可
保険料の水準 定期保険より割高 終身保険より割安で、保険期間が短いほどさらに割安になる
貯蓄性 あり(設定によって異なる) 基本的になし(保険期間が短いほど小さくなる)

「貯蓄性」があるので解約返戻金を受け取れる

終身保険においては、保険会社が将来の保険金支払いに備えて保険料の一部を積み立ていきますが、保険を解約するとなると、貯まった積立金が不要になるので、「解約返戻金」として保険契約者へ戻ってきます。

解約返戻金がどのくらい戻ってくるかは、保険料払込期間や解約の時期によって異なりますが、加入してから早期に解約するとわずかな額しか戻ってきません。

定期保険でも、保険期間が超長期になると解約返戻金は貯まります。しかし、どんなに長くても保険期間が満了すると解約返戻金はゼロになります。

一方、終身保険は保険期間の満了がないので解約返戻金がゼロになることはなく、長生きすると解約返戻金と保険金額がほぼ同じになります。

ただし解約返戻金というのは保険を解約して受け取るものです。一生涯の死亡保障を確保できる終身保険であっても、解約をしてしまったら以後の死亡保障がなくなる点には注意が必要です。

保険期間は一生涯だが、保険料払込期間を選択できる

保険期間と保険料払込期間というのは、同じでも同じでなくてもかまいません。

終身保険の場合、保険期間は必ず終身ですが、保険料払込期間は終身払いのほか、10年払いや60歳払い、65歳払いといった選択肢が用意されています。

なお、払い込んだ保険料の総額は、保険料払込期間が短いほど少なくて済みます。その代わり、1回あたりに払い込む保険料の額は多くなるので、無理なく払っていける保険料払込期間を設定することが大事になります。

終身保険にはさまざまな種類がある

終身保険は貯蓄性のある保険なので、世の中の金利水準の影響を受けます。

昨今は超低金利時代が続いていることから運用が難しく、少しでも魅力ある終身保険にするために、保険会社は知恵を絞ってさまざまな保険商品を開発しています。

これから一つずつ、主だった種類の終身保険について紹介していきます。

低解約返戻金型終身保険

保険料払込期間中に解約した場合の解約返戻金を一般的な終身保険より低く抑えることで、一般的な終身保険より保険料を割安にしている終身保険です。

保険料払込期間が終われば通常に戻るので、保険料総額が減った分だけ、結果的に「返戻率」(=解約返戻金÷支払った保険料総額×100)が上がります。

保険料払込期間中に解約すると低く抑えられた解約返戻金しか戻ってこないので、解約する時期には注意が必要です。

積立利率変動型終身保険

保険会社が将来の保険金支払いに備えて積み立てをする際の利率が変動する終身保険です。

利率は定期的に見直され、利率が上がって運用益が増えれば、保険金や解約返戻金が増額することもあります。

利率が下がると逆の状況になりますが、多くの場合、利率や保険金額に最低保証を付けてリスクを限定的にしてあります。

変額保険(終身型)

将来の保険金支払いに備える積立金を、国内外の株式や債券を用いて運用していく保険です。

名前の通り、保険金や解約返戻金は運用実績によって金額が変動します。運用実績が良ければ保険金や解約返戻金は増えますが、運用実績が悪ければ保険金や解約返戻金は減ります。

しかし変額保険の場合、死亡保険金(高度障害保険金)は基本保険金が最低保証されているので、基本保険金額を下回ることはありません。

\他にもどんな保険商品があるか知りたい/

終身保険に欠かせない!解約返戻金とは?

終身保険は、生命保険の中では比較的お金が貯まりやすい保険であり、解約したときに戻ってくる解約返戻金があるのも魅力の一つです。

一般的な終身保険の仕組みを図で表すと下記のようになります。

下の図は保険金額500万円、保険料払込期間20年間のケースです。

終身保険の返礼金推移

※監修者作成

加入からの経過とともに払込保険料累計が増え、解約返戻金も同じように増えています。

払込保険料累計は払い込みが終わるともう増えませんが、解約返戻金はその後も増え続けます。

しかし、加入してからしばらくの間は、常に解約返戻金が払込保険料累計を下回っています。

返戻率とは?

先ほど少し触れましたが、支払った保険料の総額に対する解約返戻金の割合を「返戻率」といいます。

上の図では、40年経過くらいまでは解約返戻金が支払った保険料の総額を下回っているので、返戻率は100%未満の状態です。加入から約40年経過すると返戻率が100%を超えていきます。

一例として低解約返戻金型終身保険の仕組みを図で見てみましょう。

下の図は保険金額500万円、保険料払込期間20年間のケースです。

低解約返戻金型終身保険の返戻金推移

※監修者作成

保険料払込期間中の返戻率を低く抑えているため、一般的な終身保険よりも払込保険料累計と解約返戻金に差があります。

保険料払込期間が終わると通常の解約返戻金に戻り、払込保険料累計と解約返戻金に大きな差はなくなります。

低解約返戻金型終身保険の場合、保険料が割安な分だけ一般的な終身保険よりも早期に返戻率が100%を超えてきます。

解約返戻金に税金はかかる?

保険契約を解約して解約返戻金を受け取った場合、支払った保険料の総額よりも増えて戻ってくれば課税の対象になります。

一方で、支払った保険料の総額より解約返戻金が減って戻ってくれば税金はかかりません。

一般的な金融商品と同様に、収益があれば課税され、収益がなければ課税されないということです。

解約返戻金を一時金として受け取った場合

保険料を負担した人が解約返戻金を受け取ると、一時所得の扱いになり、下記の計算式で求められた額に所得税が課税されます。

{解約返戻金-支払った保険料の総額-50万円(特別控除額)}×1/2

保険料を負担していない人が受け取る場合は、贈与税の対象になります。

また、加入から5年以内に解約して収益がある場合は源泉分離課税が適用され、20.315%の源泉徴収がなされます。

解約返戻金を年金として受け取った場合

解約返戻金を年金(複数年にわたって分割)で受け取った場合は、公的年金等以外の雑所得の扱いになり、所得税が課税されます。

雑所得の金額は、その年に受け取った年金額から、その年金を受け取るために払った保険料を差し引いた額になります。

終身保険のメリット・デメリットは?

他の保険でも同じことがいえますが、終身保険にはメリットもあればデメリットもあります。

では実際にどのようなメリットやデメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。

終身保険の3つのメリット

終身保険のメリットといえば、以下の3点が挙げられます。

  • 死亡保障が一生涯続く
  • 貯蓄性がある
  • 相続・相続税対策に有効

一つずつ、順に解説していきます。

死亡保障が一生涯続く

終身保険の契約が終わるのは、被保険者が死亡・高度障害状態になったとき、または解約(失効)をしたときです。

保険料払込期間中は保険料を払っていれば死亡保障が続き、保険料払込期間が終わった後はもう保険料を払うことなく何歳までも死亡保障が続きます。

貯蓄性がある(保険料を払い込むたび解約返戻金が増えていく)

終身保険は払込保険料累計に連動して解約返戻金も増加していきます。

低解約返戻金型終身保険にすると返戻率の上昇が早まり、保険料払込期間を短くするとさらに返戻率の上昇が早まります。

この特性を活かして学資保険と同程度の返戻率を実現することも不可能ではないため、教育資金の積立としての適性もあります。

相続・相続税対策に有効

終身保険は一生涯の死亡保障を確保できることから相続対策としても有効です。

終身保険をはじめ生命保険は死亡保険金の受取人を指定できるので、遺したい人に確実に遺すことができます。

また、相続税がかかりそうな場合では、生命保険には法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があるため、税金対策も可能です。

終身保険のデメリット

これまで終身保険のメリットを解説してきましたが、デメリットもあります。

  • 保険料が割高
  • 保険の解約がしづらい
  • 資産運用の方法としては利回りは低め

ただ、メリットもデメリットも人によって感じ方は違うので、終身保険の特徴を十分に理解した上で、加入するかどうかを検討しましょう。

保険料が割高

終身保険は定期保険と比較して、支払う保険料は割高です。

保険会社の立場で考えると、終身保険はいつか必ず保険金を支払いますが、定期保険は払わないこともあるので、保険金を支払う確率が全然違います。

それが保険料の差に表れており、定期保険の方が安い保険料の設定になっているのです。

保険の解約がしづらい

保険の解約は手続きを行えばいつでもできます。

しかし終身保険の場合、貯蓄性も期待して加入しているでしょうから、早期に解約すると返戻率が低くもったいない結果になってしまいます。

そのため終身保険はいつでも解約をするというわけにはいかない保険といえそうです。

資産運用の方法としては利回りは低め

終身保険に加入する目的は万が一のときの死亡保障が第一です。

終身保険の保険料には保障のコストがかかっているので、株式や投資信託といった金融商品と比較すると期待できるリターンは低めになります。

ただ、終身保険では超長期の契約が可能なため、老後の生活資金や教育資金をコツコツと確実に貯める目的で利用する人もいます。

終身保険のデメリットを補う対処法は?

これまで終身保険のデメリットとして取り上げた、以下のデメリットについても、マネープランニング次第で改善することは可能です。
  • 割高な保険料
  • 解約のしづらさ
  • 低めの利回り

終身保険のデメリットをカバーする対処法をご紹介しましょう。

一時払いの終身保険に加入する

終身保険の中には、保険の申し込み時に保険料の全額を一度で支払ってしまう「一時払いの終身保険」もあります。

一般的な終身保険よりも返戻率の上昇が前倒しできるので、加入してから短期間で返戻率が100%を超えることも可能です。返戻率が早期に高くなれば、解約のしづらさも和らぎます。

変額保険(終身型)を利用する

株式や債券などを使って運用する終身型の変額保険に加入するのも選択肢の一つといえます。

運用がうまくいけば利回りを高められ、受け取れる保険金額や解約返戻金額を増やすことができます。

ただ、運用が必ずうまくいく保証はありません。場合によっては利回りが低くなり、保険金額や解約返戻金額が減り、払込保険料総額より低くなる可能性もあります。

終身保険はどんな人に向いている?

終身保険の魅力である「一生涯の保障」と「貯蓄性」を生命保険に強く期待しているのであれば、終身保険はおすすめの保険といえます。

では終身保険がおすすめなのはどのような人なのか、解説しましょう。

自分がなくなった後に確実に家族へお金を遺したい人

終身保険は途中でやめない限り、受取人が保険金を必ず受け取れます。お金を確実に遺したいなら定期保険よりも終身保険が適しています。

また、遺された家族に迷惑をかけないためにも、自分の葬式代くらいは遺しておきたい人にも適しています。この場合、死亡保険金額を300~500万円程度で設定するのが一般的です。

保険料の掛け捨てはイヤ、お金を長期的に貯めたい人

加入する生命保険を選ぶ際、お金が戻ってこない「掛け捨て」を嫌がる人はいます。

終身保険だと保険料をなるべく早期に払い終え、なるべく長期間継続していけば、返戻率が高まっていきます。

お金を貯める手段は他にたくさんありますが、終身保険は数十年もの期間を活用して貯めていくのが特徴的です。高い利回りはあまり期待できませんが、保有期間中にすることはほとんどないので、気軽に長期間貯めたい人には適した金融商品といえます。

終身保険で知っておきたいQ&A

終身保険でよくある質問について回答をQ&A形式でまとめました。

終身保険を賢く活用するための豆知識としてご参考にしてください。

Q:分割払いと一時払いでは、終身保険の保険料はどう違う?

A:保険料は保険会社が将来の保険金支払いに必要な設定になっています。支払う時期は数十年先のことが多いので、それまでの期間、保険金を支払うために運用することができます。

一時払いだと運用期間を長く確保できるので、その分保険料を割安に設定できます。一方で分割払いだと、一時払いよりも保険料が割高に設定されます。

Q:60歳払込満了払いと終身払い、終身保険の保険料はどう違う?

A:終身払いよりも、60歳で保険料の払い込みを満了するほうが、多くの保険料を長期間運用できるので、保険料を割安に設定できます。

なお割安になるのは払い込む保険料の合計のことで、払い込む回数が少なければ、1回あたりに払い込む保険料額は多くなります。

Q:ドル建て終身保険のメリット・デメリットは?

A:ドル建て終身保険は保険料を米ドルで払い、保険金や解約返戻金を米ドルで受け取る終身保険の一種です。

一般的には「円換算特約」という特約を付加することで、ドル建て終身保険の保険料の支払いや保険金の受け取りは円で換算して行われます。

ドル建て終身保険は円と米ドルの為替レートの影響を受けます。ざっくりいえば、円高のときに「円→米ドル」、円安のときに「米ドル→円」に替えられると為替差益を得られますが、反対の場合は為替差損が生じます。

また、ドル建て終身保険には、円より金利の高い米ドルを使うことによって、割安な保険料や貯蓄性の良さを得られるメリットもあります。

Q:終身保険に満期はあるのですか?

A:終身保険に満期はありません。

Q:終身保険の保険金受取人は誰を指定すればよいですか?

A:配偶者や子どもを指定する場合が多いですが、保険金を遺したい人を受取人にするのがよいでしょう。

ただ、第三者を受取人にする場合はさまざまな制限があります。詳細は保険会社へ問い合わせて確認してみましょう。

Q:終身保険の保険料払込満了後、保障内容に変化はありますか? 

A:終身保険は保険料の払い込みが終わった後も死亡保障が続きます。保障内容に変化はありません。

ただし、保険料の払い込みがなくなることによって、終身保険の存在を忘れがちになることがあり得ますので、十分に気をつけてください。

まとめ

終身保険は、個人保険の中で最も保有契約件数の多い中心的な生命保険です。

個人保険の種類別保有契約件数

*出典:生命保険協会「2020年版生命保険の動向」

生命保険協会の業界統計資料によると、個人保険の保有契約件数1億8748万件のうち、終身保険で5048万件(終身保険・利率変動型積立終身保険・定期付終身保険の合計)にもなります。

個人保険全体の4分の1を超えており、さらに変額保険にも終身保険は含まれていることから、多くの加入者にとって使い勝手が良く、必要とされている生命保険といえます。

さまざまな終身保険の中から自分に合った商品を見つけ、自分や家族にとって安心できる生活を送れるよう、賢く活用してみてはいかがでしょうか。

監修者 監修者

松浦 建二

CFP®認定者 1級ファイナンシャル・プランニング技能士

松浦 建二

青山学院大学卒、ミサワホームで戸建てやアパートの営業を経験後、アイエヌジー(現エヌエヌ)生命保険会社へ転職し生命保険と投資信託の営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプランや生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っているほか、FPに関する執筆や講演も多数行っている。青山学院大学非常勤講師。

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