養老保険の満期金と税金の関係は?税金対策のポイントを紹介
更新日:23.01.10
貯蓄タイプの保険として知られている養老保険。 養老保険とは、生命保険でありながら、貯蓄性もある保険のことです。とくに、掛け捨ての保険に抵抗感のある人に、人気の高い商品となっています。
契約期間が満了すると満期金が支払われ、これが養老保険の楽しみの一つでもありますが、この満期金に税金がかかってくることがあります。
また、誰が受取人なのかによって、その税金の種類が違います。場合によっては、高い税金を支払う事態になることもあるため、契約のしかたには注意しなければなりません。
そこで今回は、養老保険のメリットとデメリットについて詳しく解説し、養老保険と税金の関係や、税金対策のポイントについても見ていきます。
養老保険の3つのメリット
h3【メリット1】死亡保障を受けられる
養老保険は貯蓄タイプの保険ではありますが、万が一保険料の支払い途中で死亡したときに支払われる死亡保障もついています。 そのため、お金を積み立てながら、死亡したときのリスクにも対応できるものです。

なお、死亡保険金は満期保険金と同額が受け取れることになります。 したがって、保険料の支払い途中で死亡した場合、保険料と同等もしくはそれ以上の死亡保険金が支払われます。
養老保険は、個人契約で加入するだけでなく法人の福利厚生プランとして法人契約でも加入が多くなっています。
従業員を被保険者にして、死亡退職金や退職金を準備するために活用します。従業員が死亡したとき、もしくは定年まで働いたときに必要なお金を準備できるため、大きな企業ほどその必要性が高くなっています。
h3【メリット2】満期時には必ず支払われる
養老保険は満期になれば保険金が必ず支払われるというメリットもあります。 満期が来ると死亡保障はなくなるものの、満期保険金が支払われることになるので貯蓄性が高い商品です。
貯蓄性だけを見ると、数多くある貯蓄タイプの保険の中で最も高いものになります。 その理由は、積み立てる金額を満期保険金として設定して保険料を算出しているからです。
養老保険と同様に死亡保障と貯蓄性を兼ね備えた終身保険は、積立金の設定をするのではなく死亡保険金を設定して保険料を計算します。 そのため、同じ条件であれば養老保険の方がお金が貯まることになるのです。
h3【メリット3】金額と期間の設定が自由にできる
養老保険は自由度の高い保険でもあります。なぜなら、貯めたい金額や貯蓄を続ける期間を自分の好きなように設定できるからです。
たとえば、満期保険金を100万円~1000万円、保険期間を10年~50年のように自由に選ぶことができます。
商品によっては、保険期間を1年刻みで設定することも可能ですから、ライフスタイルに合わせて設計しやすい保険でもあります。
銀行の定期保険と似たような仕組みではありますが、貯蓄できる額や死亡保障がついているなどメリットが多いです。
養老保険の5つのデメリット
h3【デメリット1】保険料が高額
養老保険はメリットだけでなくデメリットもあります。
まず挙げられるのは保険料が高額だということです。 同じ貯蓄タイプの終身保険を同じ条件で比較すると、どうしても保険料が高くなります。
そのため、必要以上に高い条件の養老保険に加入すると生活に影響を及ぼす可能性があります。無理のない保険料に設定することが養老保険に加入するコツです。
h3【デメリット2】一生涯保障ではない
また、養老保険は一生涯保障ではないところもデメリットになります。 人の死はいつになるのか予想できません。もしかしたら明日死ぬかもしれませんし、100歳まで生きる可能性もあります。
養老保険は満期が到来すれば満期保険金が支払われ、保険契約が完了します。このお金をすべて使ってしまえば、お金を残すことはできません。そのため、死んだときにお金を残したいという人には向いていない保険といえるでしょう。
h3【デメリット3】金利が低い
さらに、金利が低いというのも気をつけなければなりません。 一昔前の養老保険は、年5%を超える予定利率のものがありました。しかし、現在は約1%前後と昔ほど旨味のない保険になりつつあります。
その結果、設定満期金額によっては支払い保険料が満期保険金を超えるということもあるのです。しかも、インフレリスクにも対応しにくい保険でもあります。
現在の養老保険、特に円建て商品は予定利率に期待が低いため、大きな増額が期待できません。しかも、満期になればすべて支払われることになります。
極端な例ですが、支払い満期日の物価が保険開始日の10倍になっていた場合、額面上は1000万円支払われたとしても満期金の価値は100万円相当にしかならないということです。
終身保険は、保険契約が一生涯ですので支払い期間が終っても解約せずに残しておけば解約返戻金が増えていきます。長期的な運用を目指すのであれば、養老保険は対応させづらい保険だといえるでしょう。
h3【デメリット4】途中解約にもリスクがある
解約リスクにも注意が必要です。
解約返戻金が高いとはいえ、途中解約は支払い保険料よりもマイナスになる可能性が高いです。
また、医療保障などの特約を付けてしまうと、その分お金がかかることになるのでさらにマイナスになります。
途中解約をする可能性がないか、無駄な特約をつけていないかなど保険設計時にしっかりと確認しておくようにしましょう。
h3【デメリット5】相続税対策には向かない
養老保険は、相続税対策には向かないといわれています。
その理由は、満期金や返戻金が支払われた時点で、そのお金はただの現金として扱われる、という点にあります。
契約期間中に被保険者が死亡したときに支払われる死亡保険金は、受取人固有の財産です。 つまり、死亡した被保険者が生前持っていた財産ではないにしても、相続でもらったものとみなされるため(みなし財産)、相続税の対象になるのです。
そのため、当然ながら遺産分割協議の対象外となります。ここで重要なのは、みなし財産に非課税枠があることです。その額は相続人の数×500万円となっています。死亡保険金がこの範囲におさまっていれば、税金がかかりません。
ところが、満期金や返戻金は、それが支払われた時点でただの現金として扱われ、遺産分割協議の対象となります。
そのため、養老保険は相続税対策として活用するのが難しいのです。養老保険を利用するときには、このような場合も考慮して対策を講じておくことが重要です。
養老保険は保険金の受取人によって税金が異なる
養老保険では、契約期間中に被保険者(保険の対象となる人)が死亡した場合、満期金と同額の死亡保険金が支払われます。この死亡保険金を誰が受け取るのかによって、かかってくる税金の種類が違います。
保険料を支払う契約者本人が被保険者だという場合、死亡保険金は相続人が受け取ることになるので「相続税」がかかってきます。
一方、契約者が被保険者ではなく、かつ受取人でもある場合には、受取人に「所得税」がかかります。夫を被保険者として妻が保険をかけていて受取人にもなっている場合などがこれにあたります。 このようなケースで夫が死亡したら、妻に所得税を納める義務が発生します。
また、被保険者と契約者、受取人が別々であれば、受取人に「贈与税」がかかってきます。妻が夫に保険をかけていて、子が受取人になるケースなどが考えられます。 贈与税は受け取った側が支払うものなので、子に支払い義務が生じます。
それでは、契約期間が満了して満期金を受け取った場合はどうなるのでしょうか。保険料を支払う人と受取人が同じ場合は、「所得税」がかかってきます。しかし、受取人が違うなら、その受取人に「贈与税」が発生します。

養老保険の満期金を一度に受け取る場合の税金
満期金の受け取り方には、一括で受け取る方法と、年金のように分割して受け取る方法があります。
受取方法 | 扱い | 控除額 |
---|---|---|
一括 | 一時所得 | 50万円まで |
分割 | 雑所得 | 控除なし |
大学入学に備える学資保険のなかには、大学4年間に毎年保険金を受け取れるプランがありますが、分割して受け取ると「雑所得」扱いになる可能性があることに注意しましょう。
そもそも、契約を解除したときに受け取れる「返戻金」や満期金に税金がかかるのは、利益が出た場合のみです。支払った保険料に税金がかかるわけではありません。支払った保険金より、受け取れる返戻金や満期金の額が少なく利益が出ていなければ、税金はかからないのです。また、利益が出ていたとしても少額の場合は、非課税となることがあります。
課税対象額の計算式
- (満期金-支払った保険料の合計-50万円)×1/2
たとえば、満期金1000万円で、契約期間20年、毎月の保険料が3.8万円だった場合を考えてみましょう。
課税対象額の計算例
- (1000万円-3.8万円×12カ月×20年間-50万円)×1/2=19万円
一般的なサラリーマンの所得税率を10%と仮定すると、19万円×10%=1.9万円の所得税が発生します。
ところが、同じ条件で毎月の保険料が4万円だった場合はどうでしょうか。
保険料4万円の場合の課税対象額
- (1000万円-4万円×12カ月×20年間-50万円)×1/2=-10万円×1/2
このように税金がかかりません。つまり、受け取れる満期金と払い込んだ保険料の総額の差が50万円以下なら、所得税が発生しないのです。
しかし、保険料を払った人と受取人が別であれば、所得税より税率の高い贈与税がかかってきます。
贈与税には1年あたり110万円の控除があります。
贈与税の計算式
- (満期金-110万円)×贈与税率-控除額
先の例で考えると、1000万円の税率は40%で控除額は125万円なので
贈与税の計算例
- (1000万円-110万円)×40%-125万円=231万円
つまり贈与税が発生することになります。
良かれと思って安易に受取人を別人にしてしまうと、余計な税金がかかってくるおそれがあるのです。
控除を受けて税金対策するという方法も
養老保険は生命保険の一種なので、所得税や住民税の金額を安くするための「生命保険控除」の対象です。
サラリーマンであれば年末調整で会社から渡される「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」に、必要事項を記入すれば、控除が受けられます。
年末調整ができない場合や間に合わない場合にも、確定申告を行えば同様に控除されます。
「生命保険控除」は、平成22年に改正されたため、契約時期がこれより前と後で記入の方法に違いがあります。
平成22年以降の契約なら、「一般の生命保険料」「介護医療保険」「個人年金保険」の3つの保険が控除の対象となり、それぞれ4万円ずつ合計12万円の所得税控除が受けられます。
住民税については、それぞれ2.8万円ずつ合計8.4万円の控除となります。
一定額の所得税と住民税を取り戻せる控除が受けられるので、保険会社から郵送されてくる「生命保険料控除証明書」を大切に保管しておきましょう。
・当サイトは、各保険の概要についてご紹介したものです。取扱商品、各保険の名称や補償(保障)内容等は引受保険会社によって異なりますので、ご契約にあたっては、必ず各引受保険会社の「重要事項説明書」をよくご確認ください。ご不明な点等がある場合には、代理店までお問い合わせください。
・このご案内には保険商品内容のすべてが記載されているわけではありませんので、あくまで参考情報としてご利用ください。また、必ず各引受保険会社の「契約概要」やパンフレット等で保険商品全般についてご確認ください。
・お引受内容により保険料が異なる場合がありますので、実際に適用される保険料については代理店または引受保険会社にお問い合わせください。
この記事のまとめ
養老保険は、生命保険と貯蓄の両面を兼ね備えた保険ですが、一般に保険料が割高で、途中で解約すると返戻金が元本を割り込むことも珍しくありません。
また、受け取れる満期金があらかじめ決まっているため、インフレに弱いのもネックです。
30代や40代といった若い世帯は、一般的に住宅ローンなどの大きな借金をする時期と重なります。 ところが、怪我や事故などのアクシデントに見舞われると、住宅ローンの返済に手いっぱいになるなどして、養老保険を解約せざるを得ない事態に陥る可能性もあります。
養老保険を考えているなら、その特徴を理解して、支払いに無理のないプランを利用することがポイントとなるでしょう。