超入門!初めてでもわかる法人税の決算・税金対策・確定申告
更新日:23.01.10
雇用不安のせいもあり、起業して自分で会社を作る人も多い昨今。 初めての決算・確定申告を迎えて、頭を抱えている方もいるのでは?
立ちはだかるのが、素人には難解な「法人税法」です。 そこで、法人税の入門となる知識を分かりやすくご紹介。 「法人税」の全体像がつかめると、税金対策のテクニックもぐっと理解しやすくなります。
目次
そもそも法人税とはどんなもの?
脱サラして会社を設立、努力の甲斐もあって少しずつ軌道に乗り業績も好調。そこで気になってくるのが税金です。
できる限り税金対策もしたいと思うのは当然ですが、それには法人税の仕組みを知らなければなりません。まず「法人税」とはどんな税金か、そのあたりから始めてみましょう。
「法人税」とは、株式会社などの法人が1年間に稼いだ所得に対して課税される国税です。 個人が「所得税」を納めるのに対して、会社が納めるのは「法人税」ということ。
所得税の場合は1月1日~12月31日までの所得を基に税額を計算します。 「法人税」は、1年間という点は同じですが、4~3月、10~9月、1~12月など、それぞれの会社が決めた「事業年度」がベースになります。ひとつの事業年度が終わると、会社は「決算」を行います。
この決算に基づいて確定申告書を作成し、事業年度終了日の翌日から2か月以内に、 会社の本店または中心的な事務所がある地域の所轄の税務署に申告しなければなりません。法人税の納付も同じ2か月以内と義務づけられています。
期限までに適正な申告や納税が行われなかった場合は、「加算税」や「延滞税」が課せられますので、期限は厳守です。
会社は法人税以外にも、「法人事業税」や「法人住民税」も支払う必要があります。法人税の税額は、簡単には「課税所得×法人税率」で算出した数値から各種控除を引いて求めます。課税所得とは、その事業年度の「益金」から「損金」を引いた額になります。
法人税法には「青色申告制度」が設けられています。青色申告では、毎日の取引を正確に帳簿に記録する必要があります。 これは法人税の申告納税を正しく行うためだけでなく、経営者が会社の財政状態を把握するためにも意味があります。 青色申告を行う法人には、各種の特典があります。
「損金算入」と「益金不算入」この2つが法人税のキーポイント
法人税率は、資本金額や課税所得金額によって差があり、普通法人の場合は、このようになります。
- 資本金1億円超の法人→ 課税所得×23.4%※1
- 資本金1億円以下の法人→ 課税所得の800万円超の部分×23.4% ※1 → 課税所得の800万円以下の部分×19% ※2
※1 平成28年4月1日以後に開始する事業年度の税率です。平成30年度4月1日以後開始の事業年度は23.2%。
※2 19%は「中小企業者等の法人税率の特例」が適用された軽減税率です。ただし、平成29年3月31までの間に開始する事業年度については15%が適用されます。
日本の法人税は世界的に見ても高いとされています。 となると、会社の規模に関わらず、税金対策は会社にとって死活問題ともいえるのです。
ここからは、法人税のポイントです。 少しややこしいのですが、これを知ると、本やウエブサイトの記事を読むときも、 理解が容易になるので、ちょっと我慢して読んでください。
先ほど収益は「益金」、費用は「損金」と呼ぶと言いましたが、これには理由があります。 会社の会計上では「収益」や「費用」になる項目が、税法上では認められない場合があり、 会計上の所得計算と税額上の所得計算は分けて考える必要があるためです。
申告の際の税務調整には益金と損金の扱いについて次の4パターンがあります。
- 損金算入・・・会社の会計で費用としなくても、税法では損金となり、損金に算入されるもの。
- 益金不算入・・・会社の会計で収益としても、税法で益金としないもの。
- 損金不算入・・・会社の会計で費用としても、税法では損金としないもの。
- 益金算入・・・会社の会計で収益としなくても、税法では益金となり、益金に算入されるもの。
決算・申告の際は、損金算入と益金不算入は利益から減算し、損金不算入と益金算入は利益に加算することになります。つまり、会社にとっては「損金算入と益金不算入が多いほど、所得が減り、税金も安くなる」ということ。これが法人税を税金対策するための要です。
税金対策の第一歩は、損金算入を増やすこと
資本金が1億円以下の中小法人の場合、課税所得800万円を超えるか超えないかで法人税率は大きく変わります。
800万円を少し超えてしまう場合は、損金や益金を見直すことで、800万円以下にすることが可能かもしれません。もちろん大企業であっても、損金算入を増やして、所得が減れば税額も低くなり、結果的に税金対策となるといえるでしょう。
損金算入ができ、決算直前でも比較的負担なくできる税金対策には、次のようなものがあります。
開業費を損金にする
会社を創立・開業するためにかかった「創立費」「開業費」、製品の開発にかかった「開発費」などを「繰延資産」といいます。
こうした費用は、創立や開業した後の年度にも渡って支出の効果が出るものです。そのため支出した年度だけでなく、何年かにわたって損金に算入できます。
ただし支出した費用が20万円未満の場合には、一度に損金に算入できます。損金に算入されるものは法令で決まっていて、「創立費」、「開業費」、「開発費」のほか、「株式交付費」、「社債発行費」の5種類が「繰延資産」と認められます。
減価償却費は全額損金にすることも可能
建物、機械、船、自動車、工具、車両運搬具、器具など、会社が長期に渡って事業に使用する資産は、時間の経過や使用状況によって、劣化したり、性能が落ちて、徐々に資産価値が低下します。こうした資産を「減価償却資産」といいます。
「減価償却資産」を購入した場合、代金の全額をその年の損金に算入することは基本的にできませんが、何年かに分けて費用として損金に算入することができます。これが「減価償却費」です。
「減価償却資産」は、法定耐用年数で割った金額が、毎年「減価償却費」として費用計上できます。例えば、500万円のものを耐用年数10年で償却すると、1年で費用となる償却費は50万円(500万円×定額法の償却率0.1)です。同じ500万円でも耐用年数が5年のものは1年の償却費は100万円(500万円×定額法の償却率0.2)です。
このように償却年数が短いほど損金の額は大きくなるので、裏技として、最初から新品でなく、償却年数の短い型落ちの中古製品を買うという手もあります。なお使用期限が1年未満のもの、取得金額が10万円未満のものは、取得金額の全額が損金に加算できます。
さらに青色申告をしている中小法人が、30万円未満の「減価償却資産」を購入した場合、特例として「少額減価償却資産」と扱い、合計額が1事業年度あたり300万円まで、全額、損金算入が認められます。※
※平成18年4月1日から令和4年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。研究や改良の費用は税額控除対象
新製品や新技術の開発や、すでにある製品や技術の改良にかかる費用=「試験研究費」は、税額控除対象になっています。
「試験研究費」と聞くと、大企業の研究所が行う研究を想像しますが、そうした大規模なものから、町工場で行うような加工技術のちょっとした改良まで、幅広く網羅しています。対象費用は、材料費 ・人件費・経費・委託研究費など。
資本金1億円以下の中小法人では、限度額はありますが、その年度の試験研究費の8~12%(平成29年度税制改正法案では12~17%に見直し) が控除金額になります。
何でも交際費になるわけではない
「交際費」は事業に関係のある人への接待、慰安、贈答のために支出する費用のこと。具体的には、得意先との食事代、接待ゴルフの費用、中元やお歳暮代、葬儀の際のお香典など。
交際費は私的な支出が紛れやすいので、損金算入には制限があります。大企業は「交際費」のうち接待飲食費の50%、資本金1億円以下の中小法人は「交際費」のうち接待飲食費の50%あるいは、交際費等のうち年間800万円を「定額控除限度額」として損金算入できます。(適用期限は平成30年3月31日まで)
1人あたり5,000円以下の飲食費は、「交際費」にはなりませんが、「会議費」など別の費用として処理すれば、損金に算入できます。
間違えやすいのですが、下記は「交際費」に該当しません。
- 従業員の社員旅行や運動会は「福利厚生費」
- 会議でお菓子や弁当を出した時は「会議費」
- 広告宣伝のためのカレンダーや手帳の作成費用は「広告宣伝費」
- 従業員に対して一定基準で支給する香典や結婚祝いは「福利厚生費」
「交際費」については、税制上の扱いがときどき見直されるので、注意が必要です。
自宅兼事務所の家賃も損金になる
起業したばかりで、自宅を事務所として使うことも多いと思います。賃貸住宅なら、家賃の一部を損金として計上したいもの。
個人事業主の方などは、事務所として使用している床面積の割合を計算して、経費部分を出すケースが多いようです。法人の場合は、この方法のほかに、住居の契約を法人契約に変えて「社宅」として会社で借りる手もあります。こうすると、家賃の50%を損金にできる可能性があります。
さらに、その物件の土地及び建物の「固定資産評価証明書」を取得して、 手続きをすれば、80%以上を損金にできることもあります
決算期末に残った在庫は処分する
仕入れた商品が売れ残った場合、それは会社の資産となり、その金額に税金がかかってきます。益金算入を減らすために、在庫はできる限り減らすことを心がけてください。
決算期末前に大量に売れ残った在庫は、決算処分やワゴンセール、福袋などで原価より安く売れば、原価との差額分を損失として計上できます。どうにも売れる見込みがないときは、廃棄することで「廃棄損」を計上できます。
その場合、「廃棄証明書」など廃棄を確実に証明できるものを入手しておくこと。確定申告の際、必ず必要となります。
「貸倒引当金」は事前に損金として計算に入れておく
取引先の倒産などで、売掛金や受取手形が回収不能になることを「貸倒れ」といいます。こうした場合には「貸倒損失」として損金に算入できます。
ただ「貸倒れ」は一定の確率で発生するので、あらかじめ損益の計算に入れておくのが一般的。会社の会計では一定の方法で計算した額を「貸倒引当金」として準備しておきます。これにより損金が増え、税金対策になります。
中小法人については、法人税法では限度額範囲内での貸倒引当金を損失に算入できるようになっています。
赤字の年の損失は前後の年度の黒字で相殺
損金額が益金額を上回って、所得がマイナスになってしまった場合、その金額について「欠損金」として、その前後の年度に黒字分があれば、そこから差し引くことが認められています。これを「欠損金の繰越控除・繰戻し還付」といいます。
繰越控除
その年の赤字分(欠損金)を次年度の黒字分から差し引けます。次年度の課税所得を減らし、結果として法人税が安くなります。資本金の額や設立時期によって限度額が設けられていますが、資本金1億円以下の中小法人は全額控除が可能。
繰戻し還付
その年の赤字分(欠損金)を前年度の黒字分から差し引けます。前年度の法人税が安くなることになり、一定割合の還付を受けられます。これについては資本金が1億円以下の中小法人が対象。
※繰越控除・繰戻し還付ともに青色申告法人であることが条件です。
注:法人税法では、役員(取締役、監査役、会長、相談役、顧問)の給与、法人税と法人住民税は原則的に損金不算入。寄付金(慈善団体への寄付、政治団体への献金など)は、一定額までしか損金に算入できません。
お金を使う税金対策。効果は大きいけれど注意が必要
ふだんから税金対策を心がけることは、会社経営をする上でとても大切なことです。ただし、なかにはお金を使って税金対策するという方法もあります。
損金を増やすためとはいえ、本来事業に使うべき資金を、必要でもない支出計画に回すのは本末転倒。資金が潤沢でない場合は命取りになりかねません。
これからお話する税金対策は主にお金が必要なもの。経営・財務状態を考慮した上で取り入れるようにしてください。
未払金・未払費用をチェック
「未払金」や「未払費用」は、すでにサービスを受けたが、まだ支払いが済んでいないものをいい、ともに損金算入できます。
具体例としては
未払金
固定資産や消耗品等を後払いで購入した場合。クレジットカードで書籍、事務用品、パソコンなどを買ったとき、あるいは資産を取得して支払いが未払いのとき。
未払費用
未払で支払期日が到来していないもの。固定資産税、水道光熱費、新聞代、事務所家賃(後払いの場合)、電話代、プロバイダ代、支払利息、給与、リース料、賃借料、保険料など。本来は決算日までに支払いが終わっていないものは経費・損金にはできませんが、未払費用・未払金として計上することで、債務が確定しているものとみなされ、損金にできるわけです。
しかし通常なら来年に損金とするつもりの支払いを、今期に先取りして未払費用・未払金として計上するので、いうなれば、税金の支払いの「先延ばし」に過ぎません。
つまり今年の税金は減りますが、来年の税金は増えるかもしれないということです。ただ所得が多く税率が高いときの税金の支払いを先延ばしにして、所得が少なく税率が低いときに税金を払うように調整することができるので、税金対策としては有効です。
短期前払費用を年度内に損金として計上
「前払費用」とは、これから受けるサービスの代金を前払いするものです。
例えば、事務所の賃料や保険料などの前払いです。前払費用は、今年度の時点ではまだサービスを受けていないので、次の年度以降、サービスの提供を受けた時に損金に算入することになっています。
ただし例外として「短期前払費用」というものがあります。これは、支払った日から1年以内にサービスを受けるものをいいます。支払った月が9月末の場合、次年度の9月までに受けるサービスの前払いは「短期前払費用」となります。
短期前払費用では、支払った日の事業年度において損金に算入できます。例えば、これまで「月払い」だった場合は、相手方との合意の上、契約書で「年払い」と指定して、決算までの間に次の年度の分までを一括して払えば、 その年度の損金に「次年度までの1年分の全額」を算入することも可能ということです。
なお「短期前払費用」が認められるには、相手方との間に、 毎年継続して「年払い」で支払う契約が結ばれている必要があります。
役員給与は毎月一定額にする
役員に対する給与は、原則は損金不算入ですが、その事業年度内で、毎月一定の額であれば、損金に算入することができます。 これを「定期同額給与」といいます。単にそのように決めて支給すればOKなので、手続きは比較的簡単です。
従業員への還元も税金対策になる
決算期末に従業員に支給した「決算賞与」も損金に算入することができます。
損金算入できる条件としては、決算期末までに従業員全員に支給額を通知し、決算期末から1か月以内(次年度の最初の1か月以内)に支給する必要があります。
また適度に利用した「社員旅行費」も損金算入ができます。税務調査に備え、年月日・参加人数・利用場所・費用など詳細を記録した書類を必ず作成しておくこと。
決算賞与も社員旅行も、税金対策のためだけでなく、従業員の士気を高める効果も期待できます。
経営セーフティ共済への加入を検討
「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」とは、事業を1年以上継続している中小企業が加入できる共済制度です。
もし、大口の取引き先が倒産した場合、そのあおりで自分の会社まで倒産してしまうこともあり得ます。そうした「連鎖倒産」の危機に備えられるのが「経営セーフティ共済」です。
メリットは多く、 *取引先の倒産で売掛金債権などの回収が困難となった場合に、掛金総額の10倍の共済金(50万円~8,000万円)の貸付けが受けられます。返済期限は5年。利息はありませんが、それまでの掛金総額から、貸付を受けた金額の10%が差し引かれます。例えば、それまでに掛金を合計500万円支払っていて、5,000万円を借りた場合、掛金500万円全額が取り上げられることになります。
*急に資金が必要になった際には、年利0.9%という低利率、しかも無担保で貸付が受けられます(返済は1年以内)。
*掛金が安く、月5,000円~20万円(年間6万円~240万円)。掛金合計が800万円に達すれば、その後は掛金を支払う必要はありません。
*税制上の配慮がされていて、掛金は全額が損金に算入できます。
*12か月以上加入していれば、解約時には加入期間に応じた割合で「解約手当金」を受け取ることができます。40か月以上ならば返戻率100%、「経営セーフティ共済」は連鎖倒産だけでなく、資金繰りのリスクにも対応、かつ税金対策にもなるので、中小企業にとって、頼りになる存在といえるでしょう。
税金対策に有効といわれる「法人保険」そのメリット・デメリット
よく耳にする「法人保険」という言葉。実は「法人保険」という名の保険はなく、契約者を法人(会社)にして加入する保険のことを総称して「法人保険」といいます。
会社の事業保障目的や、従業員の福利厚生目的としても有意義な保険です。ただし加入を考える際には、メリット・デメリットはしっかり押さえておきましょう。
法人保険のメリット
*経営者にもしものことがあっても会社の経営を守れる
保険というからには、まずその基本は保障です。経営者や役員に万一のことがあった場合、業績が低迷し、取引先からの信用も落ち、下手をすれば融資が止められるなど、経営危機に陥ることも考えられます。
そんなリスクに備えられるのが「法人保険」というわけ。個人契約と違い、保険金の受取人が会社になっているので、例えば、死亡保険金が1億円あれば、経営を立て直すこともでき、会社が被るダメージを抑えることができます。
*従業員の福利厚生に役立つ
「法人保険」には、役員・従業員の福利厚生を目的とした商品もあります。
総合福祉団体定期保険は基本的に社員全員加入となります。
また保険料は会社負担で、従業員の保障や退職金を貯めていくことができる商品もあります。
*保険料が損金になる
会社が支払う保険料は、その全額から100%や50%を損金にできます。(ただし、商品によって損金にできる割合が違います)
会社として加入する法人保険は保険料自体が高いので、それに従い損金額も大きく、これが税金対策として、「法人保険」は非常に有効といわれる所以です。総合福祉団体的保険や定期保険の保険料は損金となります。長期平準定期保険や逓増定期保険は保険期間の経過や被保険者の年齢によって損金算入する割合が変わります。福利厚生目的の養老保険 は、要件を満たせば保険料の50%が損金となります。
*資金が貯められる
会社経営では、急に資金が必要になることがあります。定期保険は掛け捨てと呼ばれ、満期保険金はなく、解約返戻金はあってもわずかです。
しかし長期平準定期保険と逓増定期保険は、保険期間が長かったり、保険金額が増えていくため、保険料の前払い分が多く、 そのため途中解約したときに保険料に対する返戻率が高くなります。
つまり長期平準定期保険と逓増定期保険は保険料を損金算入しながら解約返戻金が期待できる保険なので、急にまとまったお金が必要になった場合に解約してすぐに現金が用意でき、会社にとっては心強い資金となります。 また契約者貸付を利用できることもあります。
ただし一定期間が過ぎると基本的に解約返戻金は徐々に減り、満期時にはゼロになります。
*保障を持ちながら退職金を貯められる
法人保険には解約返戻金が貯まっていく商品も多く、保険商品にもよりますが、そのお金は経営者または従業員の退職金とすることができますし、大規模な設備投資の資金に充てることもできます。
契約内容に応じた保障を持ちながら、同時に退職金や資金を準備できるというわけです。
法人保険のデメリット
*法人税の「先延ばし」という側面も
保険料は損金に算入できるので、保険料の支払いの時点では一時的に税金を安くできますが、後で保険金や解約返戻金を受け取れば、それはそのまま益金となり、法人税が課されます。
つまり法人保険は、法人税の支払いの先延ばしにしかならないともいえます。
税金対策のためには、解約返戻金を受け取るのと同じ年度に、経営者の退職金を支払う、大きな設備投資の資金に充てるなどで、損金に算入する必要があります。
*高い保険料が会社の財務状態を脅かす場合も
法人保険に加入すると当然毎年保険料が発生します。
年払保険料が1000万円の場合、毎年1000万円、会社の現金が減るわけです。
いざ新規事業の立ち上げや人員拡充をするというときに、現金が足りないという致命的状況も招く恐れもあります。
そのため、加入する際に解約返戻金の推移や契約者貸付の制度を事前に確認する事が大切です。
*解約のタイミングによっては損をする
前述のように法人保険は解約すると、解約返戻金を受け取れます。
しかし返戻率は解約のタイミングで大きな差があります。商品によっても違いますが、2年や3年の早期解約では40~80%程度しか戻りません。返戻率が最もピークのときに解約できればベストですが、急に資金繰りが悪化して解約せざるを得ないこともあり、思わぬ損失を被る場合もあるので要注意。
また解約返戻金は損金の割合によって益金算入されます。
メリットも多いのですが、デメリットもある「法人保険」。選ぶときには、それぞれの商品が会社の事業戦略や財務状況に合っているか、会計上・税法上の扱いはどうなのかを確認。できるだけ複数社の商品を比較してみてください。
会社の身の丈に合った、効果的な税金対策を
法人税を節約するには「損金を増やす」ことに尽きますが、そのために多額のお金を使うのはNG。会社を興したばかりの場合はなおさら危険です。
あなたが築いた会社です。「大きく育てていきたい」「社会に貢献できる会社にしたい」「従業員を守っていきたい」など将来の理想や夢の実現にしっかりした財政基盤は欠かせません。
まずは事業計画や資金計画を練り、会社の財務状況を把握しましょう。その上で負担の少ない税金対策から始めてみてください。
今回ご紹介したほかにもいろいろな税金対策方法がありますが、法人税法は大変込み入っていて、毎年改正もあり、確実な税金対策には専門的知識も必要になってきます。ノウハウの蓄積を持った信頼できる税理士にも相談し、現実的かつ効果的に税金対策をするとよいでしょう。